ソフトバンク・高橋礼の運命に導かれた新人王獲得 1年目規定上限の30イニングジャストは計算でなく偶然

セ・リーグ新人王に選出されたヤクルトの村上宗隆(左)とパ・リーグ新人王に選出されたソフトバンクの高橋礼(右)はがっちり握手
セ・リーグ新人王に選出されたヤクルトの村上宗隆(左)とパ・リーグ新人王に選出されたソフトバンクの高橋礼(右)はがっちり握手

 打者一人が運命を分けた。導かれるように、鷹のサブマリンはそうそうたるメンバーとともに壇上に立っていた。11月26日、東京都内で開かれた「NPB AWARDS 2019」。ソフトバンク・高橋礼投手(24)が新人王に選出された。今季は23試合で12勝6敗、防御率3・34の好成績。総得票数254票のうち206票を集めて2位以下を圧倒した。

 プロ2年目での栄冠だった。大きなポイントになったのは、ルーキーイヤーの投球回数。30回ジャストでペナントレースを終えていた。投手の最優秀新人(新人王)の有資格者は下記の通りだ。

 〈1〉海外のプロ野球リーグに参加した経験がないこと

 〈2〉支配下選手に初めて登録されてから5年以内

 〈3〉前年までの1軍での登板イニング数が30回以内

 つまり、高橋礼は規定の投球回ぎりぎりで2019年シーズンの新人王の挑戦権を持っていたというわけ。ときに球団が考慮して、来季に権利を残すケースもあるが、若武者の場合は違った。偶然の産物―。今季まで1軍投手コーチとして、マネジメント力を発揮したソフトバンク・倉野信次ファーム投手統括コーチ(45)が舞台裏を明かす。

 「正直、あのときは新人王の資格のことは気にしていませんでした。本当に偶然、たまたまが重なったんです。あの試合、球数が少しでも違っていたら、あと一人でも投げてたら…」

 岐路になった試合は10月3日のロッテ戦(ヤフオクD)。右腕は4回まで1安打無失点の完璧な投球内容の中、わずか56球で降板した。しかも、チームは4点リード。あと1イニングを投げていたら、プロ初勝利を手中に収めていた。

 「実は、クライマックスシリーズでの起用法を見据えてました。礼をポストシーズンで『第2先発、もしくは先発をしても、何十球か決めて準備させよう』ということになって、そのプランのために投げさせていた。だから、球数を設定していました。予定の投球数を超えたら、次の打者にいかない、と。本人にも『勝っていても代えるよ』と伝えていました。そこから、中2日でまた先発(結果は10月6日の西武戦で2回2失点。この試合も設定があった)させたかったので」

 優勝の行方はすでに決着した後の消化試合。当然のように高橋礼の周囲では「『なんで、投げさせてほしいと言わなかったの?』」との声が挙がったという。そんな話を聞いた倉野コーチは後日、当人に諭したそうだ。

 「『プロ野球選手である限り、いつでも勝ち投手にはなれる。消化試合で勝つより、シーズン大事な試合で勝った方が価値があるんじゃないのか』と。本人も『そうですよね』と笑って切り替えていました。でも、まさか今年、こういう成績を残すと思っていなかった。本当にすばらしいですよね」

 その言葉を体現するように背番号28は今年、開幕ローテの座をつかみ、初陣となった3月31日の西武戦(ヤフオクD)でプロ初勝利を挙げ、大躍進した。「1勝目を挙げてから自信を持って投球することができた」と振り返っていた。

 そう考えると、偶然は必然…運命的なものを感じてしまう。所属したチームが日本シリーズ連覇を狙う常勝軍団ではなかったら? 新人右腕が短期決戦で必要戦力になっていなかったら? 勝負の世界で縁、運も大成するには大事な要素。いろんな巡り合わせが新人王の資格につながった―。高橋礼は晴れの記者会見で無数のフラッシュを浴びながら、こうも口にしていた。

 「まだ1年しか活躍していない。まずは、しっかり開幕ローテに入って、規定投球回に到達するというところから始めたい。1、2年と積み重ねなていかなきゃいけない。今年だけで終わる選手になりたくない。ここから頑張りたい」

 戴冠(たいかん)したことでむしろ、気を引き締め、自分を戒めているように映った。無限の可能性を秘める男にとって、一生に一度のタイトルは野球の神様が与えたさらなる飛躍への“通過儀礼”だったのかもしれない。(記者コラム・小松 真也)

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