【巨人】阿部、涙「最高でした！」…引退セレモニー

　こみ上げてくる感情を抑えきれなかった。スポットライトで照らされた阿部の頬は光っていた。坂本勇から花束を受け取ったが、涙を見せまいと、すぐに顔を背けた。現役最終戦となった日本シリーズから１か月。すでに２軍監督として再スタートを切っているが、怒とうのサプライズ攻勢に涙腺が耐えきれなかった。

　「最高の仲間、最高の指導者、最高の裏方さん、最高のファンのみなさん、そのおかげで１９年間プレーできました」

　ファンフェスタ直前には、裏方全員がお金を出し合って買ったという靴をプレゼントされた。スタッフを大事にしてきた阿部への感謝の気持ちだった。爆笑問題・田中が率いるチームとの特別試合では、０―０の３回（最終回）無死満塁で代打で登場。岡本監督の粋な計らいに、右越えのサヨナラ打で応えた。

　引退セレモニーでは、幼い頃から憧れた掛布雅之氏、理想の４番として背中を追い続けた松井秀喜氏、最も長く苦楽をともにした高橋由伸氏らのビデオメッセージが流れた。また、友人でもある歌手のｌｅｃｃａは、阿部をイメージして作った「少年」というオリジナル曲を熱唱してくれた。

　セレモニー後には、３人の子供たちと一緒に、応援歌が鳴り響く場内を一周した。最後は捕手のポジションに就き、小学２年生の長男が投げ込んだボールをがっちりとキャッチした。スピーチの締めくくりは「『最高！』でした！」。阿部に関わった全ての人たちの思いもきっと同じだろう。（尾形　圭亮）