合成麻薬MDMAを所持したとして、警視庁が16日、麻薬取締法違反の疑いで、女優の沢尻エリカ容疑者(33)を逮捕したことが捜査関係者への取材で分かった。取り調べに対して容疑を認めている。07年に“別に発言”でバッシングを受け、09年には当時の所属事務所を解雇されるトラブルもあった。だが、最近は洗練された演技で活躍の幅を広げ、来年放送のNHK大河ドラマ「麒麟(きりん)がくる」では織田信長の正妻・濃姫役を演じることが決まっていただけに、芸能界には衝撃が走った。
この日午後7時過ぎ、沢尻容疑者は取り調べを受けていた警視庁本部から女性の留置施設がある東京湾岸署に身柄を移送された。沢尻容疑者を乗せたとみられるワンボックス車の後部座席はカーテンで仕切られ、表情をうかがい知ることはできなかった。
逮捕容疑は、都内の自宅でカプセルに入ったMDMAを含む粉末約0・09グラムを所持した疑い。警視庁に「違法な薬物に関与している」などと情報提供があり、組織犯罪対策5課が捜査していた。
関係者によると、この日朝から捜査員が家宅捜索し、自室の棚に置いてあったアクセサリーケースの中から、ポリ袋に入ったカプセル2個を発見、押収した。以前から自宅にあったものとみられ継続的に使用していた可能性がある。
風邪薬などで使われるカプセルと同様のもので、白色だった。同課はうち1個を鑑定しMDMAと判明。午後1時31分に警視庁本部で緊急逮捕した。抵抗する様子はなく、取り調べに対して「私のものに間違いありません」と容疑を認めているという。自宅には同居していた母・リラさんもいた。残る1個と尿の鑑定を進めるとともに、自宅から押収した携帯電話を解析して入手経路を調べる。捜査関係者によると、沢尻容疑者は15日夜に渋谷のクラブへ行き、16日朝に帰宅した。
沢尻容疑者は今月13日、NHKにいた。6月3日にクランクインした「麒麟―」出演にあたり、マスコミ各社約80人の合同取材に応じた。役柄について「(明智)光秀に対してはツンデレなんですね。すごく私と似ているなと思います。理解できます。つい冷たくしちゃうところとかは理解できますね」など約40分にわたり、答えにくそうな質問にも相手の目をしっかり見て受け答えした。さわやかな笑顔にあふれた様子が印象的だったが、3日後に逮捕された。
かつては“お騒がせ女優”としても注目を集めた。07年に主演映画「クローズド・ノート」の舞台あいさつでは、司会者の質問に「別に」を連発。不機嫌な振る舞いでバッシングを受けた。09年にハイパーメディアクリエイターの高城剛氏との結婚(13年に離婚)も大きな話題となった。
デビュー当初から演技力は高く評価され、各映画賞で最優秀新人賞を総なめ。“別に騒動”から復帰作でフルヌードに挑戦した映画「ヘルタースケルター」(12年)では、くしくもドラッグが原因でトップモデルから転落した女性を演じ、日本アカデミー賞優秀主演女優賞に選ばれた。
最近は“格好いい女性”として好感度も高く、鮮やかな返り咲きを果たしていた。現在「Indeed」「P&G」の商品CMに出演。各方面への甚大な影響は避けられない。
今年3月の大河出演の発表会見では、涙ながらに「12歳で芸能界に入って、がむしゃらに生きてきた。たくさん失敗したし、挫折もして、ここまで来ることができた。沢尻エリカの集大成だと思っています」と語っていたが、すべては水の泡に。今まで経験した、どの挫折よりも大きな“傷”を負ってしまった。
◆沢尻 エリカ(さわじり・えりか)1986年4月8日、東京都生まれ。33歳。小学6年でモデルデビューし雑誌「ニコラ」の人気モデルに。2005年の映画「パッチギ!」で映画賞レースの新人賞を総なめにし、同年のフジ系連ドラ「1リットルの涙」でも注目を浴びる。09年にハイパーメディアクリエイターの高城剛氏と結婚、13年に離婚。今年はドラマ「白い巨塔」、映画「人間失格 太宰治と3人の女たち」などに出演。身長162センチ、血液型A。
◆MDMA 正式名称はメチレンジオキシメタンフェタミン。化学的に合成される麻薬の一種で、「エクスタシー」の通称でも知られる。興奮し、幻覚作用を起こす。使用から数週間経過後も、精神錯乱、抑うつ、妄想が見られることもある。錠剤、カプセルのほか吸入、注射、座薬で服用。心臓発作や脳卒中、けいれん発作などを起こすこともあり、服用しての死亡例もある。
◆自宅に報道陣30人
〇…目黒区内にある沢尻容疑者の自宅マンション前には、30人ほどの報道陣が駆けつけた。幹線道路から少し離れた閑静な住宅街。買い物帰りの主婦は人気女優の逮捕に「来年の大河ドラマを楽しみにしていたのに」と驚いた様子。近所に住んでいることは知らなかったという。