「最初は大嫌いだった」周防正行監督が竹中直人を起用し続ける理由

台北金馬映画祭参加の際、台北最古の寺院でパワースポットとして人気の龍山寺を訪れた周防正行監督
台北金馬映画祭参加の際、台北最古の寺院でパワースポットとして人気の龍山寺を訪れた周防正行監督

 最新映画「カツベン!」の公開を12月13日に控える周防正行監督(63)が今月7~9日、台湾で行われた台北金馬映画祭に参加した。現地メディア向けのインタビュー、舞台あいさつ、サイン会などに応じる周防監督に密着取材させてもらった。

 「シコふんじゃった。」(92年)、「Shall we ダンス?」(96年)、「それでもボクはやってない」(07年)、「終の信託」(12年)などのヒット作を持つ周防監督の貴重なエピソードを聞くことができた。周防組の常連俳優・竹中直人(63)について語った愛のある言葉が特に印象に残っている。

 「なぜ、竹中さんを毎回、起用しているんですか?」と質問された監督は「大好きだから」と即答。続けて「でも最初は大嫌いだったんです。監督の意向を無視して、好き勝手に振る舞う俳優だと思っていたので」と明かした。初対面は86年放送のTBSドラマ「サラリーマン教室」だ。初めて仕事を共にすると、すぐに竹中直人という俳優の本質に気付いたという。

 「僕は誤解をしていました。竹中さんは監督の意向を尊重した上で、最大限に作品を面白くしようと努力する俳優だった」。それから最新作「カツベン!」まで竹中を重要な役どころで起用し続け、役名は敬愛する小津安二郎監督へのオマージュで、いつも「青木富夫」(子供のころに小津監督に目をかけられ、小津作品の常連となった俳優)だ。「カツベン!」では活動弁士たちが活躍する劇場「青木館」の主人を魅力たっぷりに演じている。現場でアドリブを連発する竹中の演技にウケて笑いが止まらなくなった周防監督は、離れた場所からモニターでチェックしてOKを出したという。

 「カツベン!」は無声映画の時代に独自のしゃべりで劇場を盛り上げた活動弁士を描いた物語。主演の成田凌(25)には、プロのしゃべりが求められた。オーディションで大役をゲットした成田は猛練習で周防監督が「これほどまで、しゃべりをレベルアップできるとは思わなかった」と脱帽するほどの成長を見せたが、それだけでは主演俳優として不十分だった。

 イケメン俳優・成田の演技には、どこか力が入り過ぎて余裕がなかった。それが竹中と共演することで「こんなに自由に演じていいものなのか」と開き直り、見違えるようなパフォーマンスを発揮するようになった。周防監督は「竹中さんが成田くんの魅力を引き出した」と、その影響力と存在価値に改めて気付かされたという。監督と俳優という関係を超越した盟友である竹中への信頼が一層、揺るぎないものになったのは言うまでもない。

 竹中とは対照的に「カツベン!」で周防組に初参加したのは竹野内豊(48)だ。竹野内が演じる刑事のキャラクターについて、周防監督は撮影前に「まずは自由に演じてみてください」と告げたという。すると「あのクールで寡黙なイメージの竹野内豊が、こんな芝居をするんだ! 驚がくしました」と驚くほどコミカルに演じたという。その瞬間に「OK。それでいきましょう!」とGOサイン。それによって作品全体の方向性も定まった。

 竹野内は10月に行われたイベントで「周防監督の作品に出ることが憧れだった。洋画全盛の時代に『Shall we ダンス?』を見て、ハリウッドに負けない日本映画があることに気付いて衝撃だった」と語っている。周防組常連の竹中、周防組初参加の竹野内、そして映画初主演の成田。3人の化学反応で「カツベン!」は魅力的な映画に仕上がっている。(記者コラム・有野 博幸)

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