役所広司“映語”で融合!中国、カナダ、ネパール人らと表情だけで打ち解けた…主演映画「オーバー・エベレスト―」15日公開

「アジアから世界に通用する映画ができた」と胸を張る役所広司(カメラ・関口 俊明)
「アジアから世界に通用する映画ができた」と胸を張る役所広司(カメラ・関口 俊明)
ワールドプレミアでブルーカーペットを歩く(左から)ユー・フェイ監督、チャン・ジンチュー、役所、リン・ボーホン、テレンス・チャン氏
ワールドプレミアでブルーカーペットを歩く(左から)ユー・フェイ監督、チャン・ジンチュー、役所、リン・ボーホン、テレンス・チャン氏
ヘリコプターから救助を試みる隊長役の役所
ヘリコプターから救助を試みる隊長役の役所

 俳優の役所広司(63)が日中合作の主演映画「オーバー・エベレスト 陰謀の氷壁」(ユー・フェイ監督、15日公開)でキャリア40年にして初めてワイヤアクションに挑戦した。エベレストで活動する救助隊を描いたサスペンスアクション。肉離れや打撲によるアザに悩まされながらも、雪山での格闘シーンや宙づり状態で27時間ぶっ続けの撮影も。「アジアから世界に通用する作品を」と強い決意で臨んだ撮影現場での奮闘ぶりを聞いた。

 日本を代表する名優が標高8848メートル、氷点下83度という極限状態で活動するエベレストの救助隊で「ヒマラヤの鬼」と呼ばれる隊長役を熱演した。62歳(撮影当時)にしてワイヤアクションに初挑戦した。

 「台本を読んで、日本映画ではこれほど大掛かりなワイヤアクションやCGを駆使したスケールの大きな作品は絶対にできないだろうと思ったんです。ワイヤもCGも、どうやって撮るんだろうって興味がありました」

 雪山のシーンはカナダで撮影。ふくらはぎに肉離れを負うなど過酷な環境だった。

 「新雪が降り積もった山を登るのは初めて。隊長役だから先頭を行かないといけないから苦労しましたね。2週間くらい合宿のように山にこもっての撮影。雪山を駆け上がるシーンで肉離れになったり、ヘリコプターからワイヤでぶら下がってアザだらけになったり、大変でした。それに撮影用に用意した雪は目や口に入っても溶けないから、前が見えなくなることもありましたね」

 撮影現場には日本人、中国人、カナダ人、ネパール人ら各国のキャスト、スタッフがいて、あらゆる言語が飛び交う状況。各自が持っている台本もそれぞれの言語で書かれていた。

 「キャスト同士のコミュニケーションは英語と中国語。やっていくうちに表情だけで打ち解けて、素晴らしいチームワークが生まれましたね。みんな『日本映画が好きだ』と言ってくれて親近感が湧いて“映画”という言語でつながっていきました」

 日本映画とは違う環境で苦労しながらも刺激を受けることもあった。

 「アジア人で協力し合って映画作りができればいいなって、ずっと思っていました。アジアからハリウッド映画にも負けないスケールの大きな映画があればいいなと。そういうチャンスが増えてきていると思うし、日本、中国、台湾、韓国が映画を通じて、もっと交流して仲良くなれたらいいなと思いますね。中国の映画産業は活気があるんです。若いスタッフが多くてスタジオも広くて立派」

 脚本も手掛けたユー・フェイ監督は今作がデビュー作。ゲーム業界で有名になった新進気鋭のクリエイターだ。その手腕は「フェイス/オフ」(98年)、「M:I―2」(00年)などを手掛けた大物プロデューサーのテレンス・チャン氏が太鼓判を押している。

 「僕はずっと古いタイプの監督とやってきたから、戸惑うこともありましたね。台本を見ながら現場で撮影するのが当たり前だと思っていましたけど、監督はタブレット端末で絵コンテを見ている。『バベル』のイニャリトゥ監督とも違うタイプ。登山家の経験を生かしてダウンジャケットを一からデザインしたり、細かいことにもこだわっていましたね。テレンス・チャンさんが見込んだ監督です。将来、大監督になる予感がします。中国を代表する監督になるでしょう」

 アクションでありながらサスペンス、人間ドラマの要素も含まれ、見応えのある作品に仕上がっている。

 「山頂付近で酸素濃度が3分の1程度しかない領域はデスゾーン(死の地帯)と言われているんです。そこを描いたシーンでは、美しい大自然に目を奪われます。氷の洞窟も出てくるんですが、ファンタジーのような世界。日本や中国のスタッフがアイデアを出し合って、力を合わせて新しいことに挑戦しました」

 仲代達矢(86)が主宰する「無名塾」出身で日本アカデミー賞主演男優賞の「Shall we ダンス?」(周防正行監督、96年)、カンヌ国際映画祭パルムドールの「うなぎ」(今村昌平監督、97年)などに出演。映画賞の常連で日本映画界の顔とも言える存在だ。

 「賞をもらって、うれしいのは、いろんな現場に散らばったスタッフが再び集まって表彰式で会えること。世話になったみんなで喜べることがうれしい。ありきたりなコメントになるから『スタッフのおかげです』ばかり言うな、と言われることもありますけど、それに尽きるんですよ。だから、僕は映画賞でスタッフ賞があるといいなと思うんです。それぞれの役割で頑張っているスタッフの努力が報われるといいなと思っています」

 今年はNHK大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺~」(日曜・後8時)で「日本柔道の父」と呼ばれ、日本にスポーツを根付かせる礎を築いた嘉納治五郎役を演じた。

 「視聴率は良くなかったですけど、宮藤官九郎さんの台本は本当に面白い。『いだてん』を見ながら五輪の歴史を知って、来年の東京五輪を迎えると競技を深く見られると思うんです。こんなに苦労して五輪に参加した人がいるということを知ると見方が変わります。それに嘉納治五郎さんが、こんなに偉い人だとは知りませんでしたね」

 1年間、嘉納治五郎を演じたことで、愛着を持って来年の東京五輪を迎える。

 「もともと、五輪は好きなんですけど、より興味を持つようになりました。来年はやっぱり柔道に注目しています。井上康生監督がしっかりと鍛えていると思います。あと、陸上の短距離とリレーにも注目ですね。スポーツも映画も演劇も同じですね。一緒に汗を流して、友情が芽生えて平和につながると思うんです」

(聞き手・有野 博幸)

 ◆ワールドプレミアでレッドならぬブルーカーペット

 「オーバー・エベレスト―」のワールドプレミアが3日、東京・六本木ヒルズを中心に開催された第32回東京国際映画祭で行われ、役所をはじめ、共演のチャン・ジンチュー、リン・ボーホン、ユー・フェイ監督、プロデューサーのテレンス・チャン氏が姿を見せた。

 レッドカーペットならぬエベレストの氷壁に見立てたブルーカーペットが敷かれた階段を下りて登場。ジンチューは役所との初共演について「役所さんの目はとてもすごい、すご過ぎる。その瞳の中には疑いだったり、絶望だったり、慈愛に満ちた笑顔も。その笑顔を見たら心が溶けそうになった。アザができても愚痴ひとつ言わない。その姿勢を尊敬しています」と感慨深げに振り返った。

 ボーホンは「英語で語り合う長回しのシーンでは、役所さんだけリハーサルの段階からセリフを完璧に覚えていて台本を開かない。僕にとって“神”だと思いました」とプロ意識に感服したという。大物プロデューサーのチャン氏も「役所さんは世界で最も素晴らしい役者の一人です。いつか一緒に仕事をしたいと思っていました」と賛辞を贈った。

 ◆「オーバー・エベレスト 陰謀の氷壁」 ヒマラヤ地域の平和を模索する国際会議直前、航空機がエベレスト南部、通称デスゾーンに墜落。その3日後、多額の報酬と引き換えに機密文書を探す依頼が入る。救助隊で「ヒマラヤの鬼」と呼ばれるジアン隊長(役所)を中心に、エベレストで遭難した恋人を捜すために入隊したシャオタイズ(チャン・ジンチュー)、若きパイロットのハン(リン・ボーホン)らが48時間の危険なミッションに臨む。世界最高峰の頂では世界規模の陰謀が絡まり、予想不能の事態が待ち受ける―。

 ◆役所 広司(やくしょ・こうじ)1956年1月1日、長崎県諫早市生まれ。63歳。高校卒業後に上京し、千代田区役所に勤務。78年に仲代達矢主宰の「無名塾」入塾。96年に「Shall we ダンス?」など、97年には「うなぎ」などで報知映画賞主演男優賞を2年連続受賞。2017年にも「三度目の殺人」で助演男優賞、18年に「孤狼の血」で主演男優賞を受賞して報知映画賞は最多タイの4度受賞。20年には「峠 最後のサムライ」の公開を控える。

「アジアから世界に通用する映画ができた」と胸を張る役所広司(カメラ・関口 俊明)
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