7日に行われたワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)バンタム級決勝でWBAスーパー、IBF世界バンタム級王者・井上尚弥(26)=大橋=に判定負けを喫した元世界5階級制覇王者のノニト・ドネア(36)=フィリピン=が8日、都内のホテルで取材に応じた。
ドネアは試合後、病院に直行したため、公式会見に出られなかった。診察で特に異常は見られず、この日は黒のサングラスをかけていたが、目の周辺に大きな腫れはなかった。
12ラウンドまでもつれた死闘を「2人の戦士がリングの中ですべてを出し切る、本当に素晴らしい試合だった」と思い出深い一戦になると強調した。一瞬も目を離せないハードパンチャー同士の戦いに「自分が倒せると思ったし、勝てると思っていた。いいパンチが当たれば、ほとんどの選手は倒れてきたけど、井上のものすごく打たれ強かったよ」と井上のタフネスさに舌を巻いた。
ドネアも最も勝機が近づいたと感じた時が9ラウンド。右ストレートで相手の頬をとらえ、井上尚を大きくぐらつかせた瞬間だ。「9ラウンド、あの場面が自分の最大のミステイクだった。あそこで詰めて、もっとパンチを打ちこめていたら、もしかしたら倒せたかもしれない」と悔しげな表情を見せた。
その理由を「俺の狙いは、ダメージが残る井上が反撃してきたところでのカウンターだった」と明かした。とどめを刺すチャンスをはかっていたが、「カウンターが当たれば確実に倒せると思っていたからだ。でも井上はあまり来なくて、うまくいかなかった。セコンドからは『パンチを打て』と指示は出ていたんだけどね…。間違いだったよ」と話した。
一方で11ラウンドのダウンシーン。井上のボディーアッパーで左脇腹をえぐられ、苦しみながら両膝をついたが、「あのボディーはさすがに効いたよ。ただ、あのまま踏ん張り、もう一発食らっていたら、完全にKOされていただろう。だから自分からダウンしたんだ」と告白。最後まで勝利の可能性を探っていた。
フェザー級(57・1キロ以下)まで上げて5階級制覇を遂げたドネアは昨秋、WBSS出場のために7年ぶりにバンタム級(53・5キロ以下)に戻した。今月16日に37歳の誕生日を迎える。キャリアの最終盤の中、今後について「この試合で学んだことが大きかった。少し休んでから新しい感じたこと、覚えたことを次の試合に生かしたい」と第一線に踏みとどまるため、階級変更なども考えていくという。
日本のモンスターを最後まで苦しめたレジェンドは「井上は勝つべくして勝った。もし機会があれば、また戦おう」と笑顔で締めた。