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【有森裕子コラム】五輪マラソンはランナーにとって札幌の方がうれしい

スポーツ報知
有森裕子さん

 東京五輪のマラソン、競歩の開催地が札幌市に変更されることが1日、国際オリンピック委員会(IOC)の調整委員会で決定しました。大会の9か月前の変更というのは極めて異例のこと。小池百合子東京都知事の「合意なき決定」という言葉は、苦渋の決断だったことをうかがわせました。

 世間でも、今回の決定には賛否両論出ています。その中で私が言っておきたいのは、「札幌で開催される」という事実と「IOC主導で札幌に決まった」という過程を、別ものとして考えるべきだということです。

 ランナーの立場でいえば、猛暑よりも涼しい中を走る方がいいのは当たり前のこと。「東京でMGC(マラソングランドチャンピオンシップ)をやって代表を決めたから」というのは、日本だけの問題です。「札幌でも猛暑の日がある」という意見も、確率を考えたら東京と比較して圧倒的に気温が低い日の方が多いでしょう。ランナーにとっては「(札幌の方が)うれしい」というのが率直な意見だと思います。

 その一方で、決定に至るまでのプロセスには疑問が残ります。IOCは理由に「アスリートの健康問題」を挙げていますが、それであるならば、なぜこの時期に大会を開催することを決めたのか?ということになってしまいます。東京都は、この騒動に直面した当事者として、今後の大会で同様のことが起きないように、IOCに問題提起を続けていく必要があるでしょう。

 また、「道路の遮熱舗装をした費用が無駄になった」という意見も出ていますが、これはおかしな話です。レースのための改修であるのは確かですが、当日のためだけに実施したわけではなく、あくまでも五輪はきっかけ。その後の生活環境を良くすることにつながる「レガシー」なのです。そういった発想が生まれていかなければいけないと思います。(女子マラソン五輪メダリスト)

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