巨人の石井琢朗新野手総合コーチ(49)が2日、ジャイアンツ球場での秋季練習で“本格指導”を開始した。初仕事となった1日のスーツ姿とは変わり、ユニホーム姿で登場。走塁の重要性を強調し、相手の隙を突いて「単打で一塁から3つ先の塁を狙う意識」の大切さを説いた。
打撃ケージ裏から二塁付近に移動した石井野手総合コーチに、一段と気合が入った。松原、村上らが走塁練習を行っている後ろで、逐一アドバイス。両手を広げるジェスチャーも交え、思いっきりいけ―と言わんばかりに大胆さを強調した。
野手総合コーチとして、走攻守全てを伝授する。中でも練習前の円陣で選手たちに強調したのは、走塁面だ。「隙あらば全員が走る姿勢。ホームランやヒットだけが得点じゃない。打走面を含めた中で1点を取りにいく」と、足を絡めた攻撃の大切さを力説した。
具体的に言うなら、3つ先の塁を狙え―だ。走者一塁から単打で三塁に行くのは「当たり前」。「外野がファンブルした、中継でもたついたという時に、ワンヒットで一塁からホームにかえってこられるか」。単打で一塁走者が生還する「伝説の走塁」を狙う意識を植えつけるつもりだ。
大事なのは、三塁でストップだと決めつけないこと。「何かあったら(本塁へ)行ってやろうという気持ちで全力で三塁ベースを回ると、ホームでのタイミング、アウトかセーフの間一髪っていうのが2、3歩(分)、変わってくる」。車の運転を引き合いに出し、「常に『(車や人が飛び出してくる)かもしれない運転』。相手はミスするかもしれない」と訴えた。
石井氏がかつてコーチを務めた広島は、ベテラン・若手問わず、内野フライでも常に一塁まで全力疾走していた。どんな時も相手がミスする可能性があるからだ。「(巨人は)勝つことを義務づけられているチームなので、勝つためにどういう打撃、走塁、守備をしないといけないか」と同コーチ。新たな風を吹き込む。(小林 圭太)
◆石井コーチに聞く「走塁が一番難しい」
―ユニホームでの初日を終えて。
「いろんなとこを見られるっていうのはやりがいがあります。コーチ陣でうまくいろいろ共有しながらやっていきたい」
―走塁指導も。
「走塁だけでも相手に意識させれば、それが打つ方に対する相乗効果も生まれてくる」
―というと。
「足を絡めて“動く”ことによって、打者のヒットゾーンが広がったりする。そういう意味でも走塁は、地味なんですけど、走攻守の中で一番難しい分野だと思う」
―ベテラン、若手とまんべんなく会話した。
「好かれようとは思わないですけど、お互いの意思疎通をしっかりしていかないといけない」
◆石井 琢朗(いしい・たくろう)1970年8月25日、栃木・佐野市生まれ。49歳。足利工2年時、夏の甲子園に投手として出場。88年のドラフト外で大洋(現DeNA)に入団。投手としては通算1勝4敗、91年オフから内野手転向。98年に最多安打と盗塁王でチームを38年ぶりの日本一に導いた。2009年から広島。12年に現役を引退し、広島、ヤクルトでコーチを務めた。174センチ、78キロ。右投左打。