名城大の主将・塩崎葵(4年)は、ゴールテープを切った1年生アンカー・荒井優奈の頭を優しくなでて祝福した。27日に仙台で行われた全日本大学女子駅伝で史上3校目の3連覇を達成。笑顔で仲間と喜びを分かち合ったが、米田勝朗監督(51)と握手を交わすと、大粒の涙を流した。
この大会は塩崎の”人生初“の選手宣誓で幕を開けた。
「今の私たちにできることは駅伝を通じ、被災された方々を始め、多くの人々に感動や勇気、そして希望を届けることです。こうして、いま目標に向かって取り組めていることに感謝し、仲間とともにタスキに思いを込めて、最後まで全力で戦い抜くことをここに誓います」
途中、言葉が出ず約10秒間の沈黙。「緊張しすぎて、飛んでしまった。ヤバッて思いました」。その後は冷静に言葉をつなぎ、大役を果たした。
塩崎は主将だが、これまでも、そして今回も杜の都路は走っていない。
「一番はメンバーに入って、走りで引っ張りたかった。できない分、私たちは行動で引っ張る」
開会式での主将の言葉には、悔しさと共に大きな覚悟も感じた。
今年は4年生がエントリーメンバーに入ることができず、駅伝リーダーをエース・加世田梨花(3年)が務めた。塩崎は「加世田には負担をかけてしまったのですが、選手のことを思ってやってくれてる。成長しているし、すごく頼らせてもらっている」と話していた。その頼れるエースは最長区間5区(9・2キロ)を区間賞の走りで期待に応えた。
タスキをつないだ6人と監督は優勝会見に臨み、加世田は「富士山駅伝(全日本大学女子選抜駅伝、12月30日・静岡)では4年生ともタスキをつないで優勝したいです」と”最後“の戦いに向けて力強く語った。米田監督は「勝てない悔しさを知っている4年生の存在が不可欠」と最上級生を尊重する。試合後、応援に駆けつけた関係者には「4年生が1人でも走れるように、厳しく指導していきます」と宣言。指揮官や下級生の言葉から、名城大の強さの秘密が垣間見えた気がした。
3連覇を果たし、指揮官を前にあふれた主将の涙は連覇のプレッシャー、選手としての葛藤など様々な思いの象徴だろう。決して個人の実力だけではかれない、気持ちをつなぐスポーツ、駅伝。その妙味を知った初めての全日本取材だった。(竹内 夏紀)
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