羽生善治九段×落合陽一氏、“天才とAI”が濃密トーク

六本木ヒルズでの公開トークセッションに臨んだ羽生善治九段(右)と落合陽一氏。43分間ノンストップの超スピードトークが展開された
六本木ヒルズでの公開トークセッションに臨んだ羽生善治九段(右)と落合陽一氏。43分間ノンストップの超スピードトークが展開された
羽生善治九段
羽生善治九段
落合陽一氏
落合陽一氏

 将棋の羽生善治九段(49)とメディアアーティストの落合陽一氏(32)が9月末、都内で開催されたイベント「イノフェス」で公開トークセッションを行った。現代日本の知性を代表すると言っていい2人が語り合ったテーマは「AIと人類の未来」。43分間、完全ノンストップで展開された超スピードトークの全貌を紹介する。「天才」の思考についていけるか―。(北野 新太)

 落合陽一氏(以下、落)「小さい頃、公文式(CMキャラクターを羽生が務めていた)をやってて…25年後の今、お会いしてドキドキしています」

 羽生善治九段(以下、羽)「たま~に『子供の頃…』と言われるんですけど、年を取ったなあと思います」

 落「当時から見た目が変わっていないのがすごいなと思います」

 羽「現役生活34年で40年勤続表彰も近づいてきましたけど…」

 落「今回はAIをテーマにお話しさせていただきます。電王戦(2011~17年に行われた棋士とコンピューターソフトの対局)でAIの棋譜を見ていた時、どのような気持ちだったのでしょう」

 羽「10年くらい前にブレイクスルーがあって、あっという間にプロレベルになりました。でも、ソフトはいびつな強さで、時系列も一貫性もないので人間から見ると違和感を覚えるものなんです」

 落「やはりAIを擬人化して捉えようとするものなのでしょうか」

 羽「人間の思考プロセスは3つから5つくらいの価値基準を持つものですが、ソフトは1万ものパラメーター(変数)を持っているのでそのまま参考にはならないですけど、いかに人間に理解できるように解釈、講釈をつけていくかだと思っています」

 落「(AI時代に)棋士が持つアトラクト性(魅力)はどんなところになるのでしょうか」

 羽「『AIは8分間に1曲のスピードでバッハ風の音楽を作れる』という話がバッハに対する冒涜(ぼうとく)だとする考えと似ていて、将棋でも、昔の名棋士の棋譜をAIに学習させて同じようなものを作れるか、と言われたら、技術的にはできます。人の心に訴えるものになるかという感情の部分は別ですけど、暮らしていく中でAIの作る芸術や情報に触れ続ければ人間の感受性そのものが変わっていく。人間は適応性が高いので知らず知らずのうちに慣れる方向になると思います」

 落「AIで練習をしていると、イノベーション(革新)のある手が出てくることはあるんでしょうか」

 羽「(将棋界は)もう、局面をソフトに解析させて戦術が決まっていることが多いです。便利なツールとして深掘りし、探索できるようになりました。人間だけでは思い込み、先入観、過去の歴史によって考え方が限定的になる側面があるんです。でも、絶対的評価ではなく暫定的で近似値を出していくものなので、どこを深掘りするかに人間のセンスが問われます。あとは、AIの評価値とかは気にせず『俺は俺の道を行く』で新しいイノベーションを生むかどちらかです。個性、独自性、オリジナルとは何かが問われています」

 落「例えば、ものすごく強い『スーパーひふみんロボット』が現れて表情や声も将棋エンジンもあって竜王戦に臨む、というシナリオはあり得るのでしょうか」

 羽「逆に落合さんに聞きたいのですが、ロボットと人間の見分けがつかなくなる時代は来るんですか? 来れば、棋士の存在がなくなってしまうかもしれないので」

 落「技術的には可能です。でも、伝統的な判断とビジネス的な判断との応酬はあると思います。『スーパーひふみんロボット』に人気が出れば、経済的な参入が動くはずで。羽生さんは、主権を持つ人間が伝統と革新のバランスをどう判断するか、という部分はどのようにお考えですか」

 羽「将棋は、着物を着て和室で対局するのは400年前も今もあまり変わっていませんが、盤上はテクノロジーの世界で、新しいものをどんどん取り入れている。今は、両方が交ざり合った壮大な実験のようなところがあると思います。あと興味を持っているのは、テクノロジーの進むスピードは、段階的に慣らすように続くのか、ある瞬間から180度変わるものなのか、を聞いてみたいです」

 落「せーの、ということはほぼないと思います。少しずつ出始めて、いかにフットワークを軽く先行者利益を取れるかどうかでしょうか。そのような中で、将棋のアトラクティビティーの中で羽生さんが美しいと思っている美学とは、どのようなものなのでしょう」

 羽「昔、戦争に行く前の兵士たちが将棋を指している絵を美術館で見たことがありました。食事や睡眠というような生活に必要なものではありませんが、人が暮らしていく営みの中で将棋は存在していくと思っています」

 落「いったい僕らは何文字しゃべったのでしょうか…」

 羽「けっこう早回しでしたね(笑い)」

 ◆羽生 善治(はぶ・よしはる)1970年9月27日、埼玉県所沢市生まれ、東京都八王子市育ち。49歳。6歳で将棋を始める。85年、史上3人目の中学生棋士に。96年、史上初の7冠独占。2017年、史上初の永世7冠達成。18年、将棋界初の国民栄誉賞受賞。近年はAIに関する探究を深めており、関連著書に「人工知能の核心」「人間の未来、AIの未来」(山中伸弥氏との共著)がある。

 ◆落合 陽一(おちあい・よういち)1987年9月16日、東京都生まれ。32歳。開成高―筑波大卒。東大大学院を飛び級で修了。独立行政法人情報処理推進機構の認定スーパークリエイター。2015年、ワールドテクノロジーアワードを受賞。父は国際ジャーナリストで作家の落合信彦氏(77)。日本テレビ系「news zero」に火曜日ゲストで出演中。著書に「日本再興戦略」「日本進化論」。

六本木ヒルズでの公開トークセッションに臨んだ羽生善治九段(右)と落合陽一氏。43分間ノンストップの超スピードトークが展開された
羽生善治九段
落合陽一氏
すべての写真を見る 3枚

芸能

宝塚歌劇特集
NEWS読売・報知 モバイルGIANTS ショップ報知 マガジン報知 個人向け写真販売 ボーイズリーグ写真販売 法人向け紙面・写真使用申請