片道100時間かけてでも…五輪の可能性ある限り早田ひなは戦う

早田ひな
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 卓球の20年東京五輪代表争いが終盤戦を迎えた。4月の世界選手権個人戦女子ダブルスで銀メダルに輝いた早田ひな(19)=日本生命=は苦しい立場にいる。直近のドイツ・オープン(OP)終了時点で、26位の世界ランクも五輪代表選考ポイントも6番手。厳しい状況に追い込まれているが、可能性を信じて世界を飛び回っている。

 選考レースも残り3か月となった9月中旬。早田は日本から約1万8000キロ離れたパラグアイにいた。今年から新設された国際大会「チャレンジプラス」パラグアイOPに参加するためだったが、その道のりは困難を極めた。直前までTリーグの試合に出場していた甲府から、電車で成田空港に向かったものの、台風15号の影響で交通機関は大きく乱れていた。東京駅からタクシーに飛び乗ったが、通行止めなどで到着まで11時間を要し、その間に予定していたフライトも欠航となっていた。

 この時点で、初戦に間に合うかも分からない状況だった。コンディションを考えればキャンセルするのも戦略の一つだろう。チャレンジプラスは優勝で獲得できる世界ランキングのポイントが1100。ワールドツアーで最も格付けの高いプラチナで4強、2番目のレギュラーで8強に相当する。大きなポイントではあるが、移動の負担やアジア選手権と日程がほぼ重なっていたことから、女子の上位5選手はエントリーしていなかった。

 だが、棄権は一切考えなかった。「行って間に合わなかったら仕方ない。できることは最善を尽くしてやろうと思った」。早田の思いに応えようと、石田大輔コーチら周囲も航空券や宿泊の手配に奔走した。到着したのは当初の予定よりも2日半遅れとなった試合前日の午後。甲府を出発してから、実に100時間近くが経過していた。それでも試合に間に合ったのは、周囲のサポートのおかげだった。

 時差やコンディション調整にあてる時間もなかったが、結果は見事に優勝を飾った。「これからもそういった状況があるかもしれない。環境が変わっても、いつも通りのパフォーマンスができるのが強い選手。それはアスリートとして大事なこと」。そうした意地とともに、疲労困憊(こんぱい)の体を突き動かしたのは感謝の思いだ。「本当にたくさんの方に助けてもらって、パラグアイに行くことができた。しっかり優勝して帰って来ることができて良かった」と振り返る。

 卓球の世界ランクは直近1年間の上位8大会の成績を基に決まる。1つの優勝で、大きく状況が変わるわけではない。帰路も1日半をかけて日本に戻ったが、早田は息つく暇もなく、わずか数日でドイツに向かった。その後に控えるワールドツアーのスウェーデンOP、ドイツOPへの時差調整と練習のため、ドイツのナショナルチームの練習に5日間参加した。

 万全の準備で臨んだ2大会はともに予選を勝ち上がったものの、本戦1回戦でスウェーデンは世界ランク9位の平野美宇(日本生命)、ドイツは13位で日本人選手に今季無敗の陳幸同(中国)と格上にフルゲームで競り負けた。「バランスのいい卓球ができるようになってきている」。内容は紙一重だと感じたが、代表選考が懸かる今は何よりも結果が欲しい時期だった。

 世界最強の中国選手とも互角に渡り合えるパワーを備え、実際に今年は2月のポルトガルOPで世界女王の劉詩ブン(中国)を破るなど、対中国選手に6勝5敗で勝ち越している。誰もが認める爆発力を秘めながら、結果が出ないことへのもどかしさ、そしてその要因も痛感している。

 「世界ランクが上の選手と対戦した時に(ゲームカウント)3―3の最後、勝ちきる力がまだ足りない。そこが私が世界ランク上位にいけない理由でもあると思うので、そこをしっかり勝ちきることがすごく大事になる。我慢だったり、あとちょっとのところがもやもやしてるかなって感じです。殻を破るまで、あと少しだと思うんですけど…」

 今年3月の世界選手権日本代表最終選考会。加藤美優(日本ペイントホールディングス)との準決勝の最終ゲーム、10―5とマッチポイントを握りながら逆転負けを喫した。シングルスでの代表入りを逃したことは、選考レースに大きく影響した。この2大会でも「あと1点」「あと一歩」に涙をのんだが、闘志は消えていない。

 大会後、ドイツからすぐにポーランドに飛んだ。チャレンジプラスよりも格付けの低いチャレンジ大会に出場し、今月末には同じ格付けのセルビアOPにもエントリーした。経験と成長を求めると同時に、優勝でも850ポイントと獲得ポイントは高くはないが、現在の世界ランクの底上げにはつながる。

 東京五輪のシングルス代表は20年1月の世界ランク上位2人が内定する。該当するポイントは伊藤、平野、石川佳純(全農)の3人が大きく抜け出している状況だ。団体戦要員の3人目は代表2人とのダブルスの相性などを考慮して強化本部で推薦されるが、五輪の団体戦のシード順に影響するシングルスの世界ランクで上位にいることは欠かせない条件となる。

 「この2大会もシングルスで1回戦負け。五輪は本当に厳しい。可能性は結構なくなってきてはいるんですけど、たくさんの方にサポートしていただいて、応援してもらっている。それに向けて、どんな結果であっても最後までしっかり頑張ろうと思ってます」

 早田は伊藤とのペアで17年世界選手権銅、19年銀メダルなどダブルスに定評があるが、シングルスの世界ランクは10月時点で26位だ。11月のW杯団体戦は代表を外れ、ポイントがボーナスで上積みできるT2ダイヤモンドの出場権も逃した。現状の立ち位置は極めて厳しいことは自覚しているが、諦めるつもりはない。片道100時間をかけてたどり着いたパラグアイで再確認した「感謝」と「諦めない心」を胸に19歳は最後まで戦い続ける。(五輪卓球担当・林 直史)

 ◆林 直史(はやし・なおふみ)1984年8月22日、名古屋市出身。明大から2007年入社。地方部、大阪本社、名古屋駐在(プロ野球・中日担当)を経て、14年からサッカー、17年から五輪競技を担当。18年平昌五輪を取材。今年の目標に断捨離を掲げるも、一向に成果が挙がらず。

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