国際オリンピック委員会(IOC)が、東京五輪の猛暑対策として陸上のマラソンと競歩を札幌で開催すると東京五輪・パラリンピック組織委員会と合意したことについて、6日に閉幕したドーハ世界陸上男子マラソン代表の川内優輝(32)=あいおいニッセイ同和損保=が複雑な心境を明かした。
「札幌は8月中旬にはなぜか毎年気温が下がるので、ほとんどのアスリートにとってはとてもいいアイデア。ただ、東京のままでもすでにスタート時間は6時まで繰り上がっている。私が優勝した12年北海道マラソンのような暑さ(気温29度、湿度63%=スタート時)になり、大きくは変わらない可能性もある」
五輪を約9か月後に控えるタイミングでの変更には首をひねった。
「スタート時間が繰り上がる前に、サマータイム議論があった。その時に札幌案が出ていれば良かったのに、と思います」
9月15日の東京五輪代表選考会MGCを辞退し、ドーハ世陸に出場。暑さが苦手だからこそ、暑熱対策には時間をかけていた。
「日本人選手やドーハ世陸男子50キロ競歩銅メダルのダンフィー選手(カナダ)のように東京五輪を意識して、準備と対策を何年もやってきた選手ほど、その費やしてきた時間が無駄になるというのは皮肉。私自身、真剣に取り組んできた高温多湿対策が無意味どころか逆効果に終わり、ひどくむなしさを感じた直後だけに余計にそう思います」
今後、あらゆる関係者が影響を受ける。
「五輪のマラソンや競歩はスタート時間やサマータイムなど、さまざまなことで振り回されてきた。ほとんどの参加選手が『プロアスリート』ですから決定されたことに対して、対策と準備をすると思います」
急展開にも動じない五輪アスリートの対応力を信じている。