ずっと待っていた絶対王者オカダ・カズチカの覚醒「ラグビーに負けないプロレスの底力を見せたい」

14日のメインイベントでIWGPヘビー級王座を防衛。黄金のテープに包まれるオカダ・カズチカ(カメラ・森田 俊弥)
14日のメインイベントでIWGPヘビー級王座を防衛。黄金のテープに包まれるオカダ・カズチカ(カメラ・森田 俊弥)
これがオカダ・カズチカしかできない超高角度のドロップキック(左はSANADA)
これがオカダ・カズチカしかできない超高角度のドロップキック(左はSANADA)

 身長191センチのボディーに50メートル5秒台の抜群の身体能力。日本プロレス界の宝と言われ、超人気団体・新日本プロレスを引っ張り続ける最強の男が、ついに本気になった瞬間を目撃した。

 14日、超満員9573人の大観衆で埋まった両国国技館のど真ん中で新日にカネの雨を降らせる「レインメーカー」オカダ・カズチカ(31)が叫んだ。「2020年の東京ドーム大会は俺が超満員にしま~す!」―。

 オカダは、この日のメインイベントで新日最高峰のベルト・IWGPヘビー級王座をかけて、SANADA(31)と対決。同い年のライバルが繰り出す技の数々に翻弄され、苦戦こそしたものの、危険過ぎる角度のツームストンパイルドライバーでマットにたたきつけると、最後は必殺のレインメーカーで仕留めてみせた。

 これで棚橋弘至(42)の持っていたIWGP王座の通算防衛記録を29回に更新した絶対王者はチャンピオンベルトを腰に汗に巻くと、汗まみれの体でマイクを持ち、「両国~!」と絶叫。「東京ドームのメインイベント? もう、これで決定だよね。出てこいよ~!」と新日最大の大会、来年1月4日の東京ドーム大会で王座をかけて激突することが決まった「ゴールデン☆スター」飯伏幸太(37)をリング上に呼び寄せた。

 ルックス、強さとも現在の日本プロレス界の双璧と言える2人の“競演”。笑顔で「オカダさん、おめでとうございます。今、僕はインターコンチ(ネンタルヘビー級王座)も狙っていますが、そのIWGPのベルトも、いつまでもあなたの腰にあると思ってほしくないんです。僕に渡してもらえますか?」と問いかけた飯伏。

 オカダが「ちょっと待て! 何が2冠だ。オカダ・カズチカもIWGPもそんな安く売ってないから」と叫ぶと、飯伏も「やりましょう。決定!」と返す。去って行くその背中を見ながら、オカダは「このIWGPヘビー級ベルトを守っていきたいと思います」と満員の観客に約束。さらに「1個だけ言い忘れてました。2020年の東京ドーム大会は俺が超満員にします」と大きな声で宣言した。

 記者が待ち受けたバックステージでもオカダはビッグマウスを全開にした。「今までドームを超満員にと言ってきましたけど、熱い戦いを見せていれば、いつか超満員になるなんて、そんな甘いもんじゃない」と切り出すと、「今、ラグビーが盛り上がってます。テレビでもネットでも散々やっている。ラグビーのルールを知らない人でもワーワー、どうなるんだろうと言っている。ラグビーにすごい刺激をもらっているし、プロレスだって、知らない人に盛り上がってもらいたい。僕たちも、今こそプロレスの底力をみせたい。ドームを必ず超満員にしてみせます。入れて見せます。ただの満員じゃなくて、超満員ですよ」と、いつも以上のテンションで語り続けた。

 最後には「こんなにお客さんを呼べるチャンピオンはいないと思うんで。新日も僕を有効活用してほしい」と、ふてぶてしく言い放った上で「プロレスはすごい力を持っているんです。マックスで東京ドーム行きたいし、プロレス、盛り上げるぞ~!」と絶叫。熱過ぎる会見を締めくくった。

 そう、私は常に会場を満杯にする超人気団体・新日を背負う大エース・オカダのこの一言を待っていた。

 2000年代、アントニオ猪木氏の残した“負の遺産”に苦しみ、破産寸前だった新日を支え続けたのが、オカダにとって大先輩にあたる「エース」棚橋だった。自ら「100年に1人の逸材」と名乗り、あらゆる遠征地に先乗り。地方局の番組にこまめに出演し続けるなど地道なプロモーション活動を続けたのが棚橋だった。

 そして、もう一人。大人気ユニット「ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン」の総帥として、ここ2年間、グッズ売り上げなどに大きく貢献してきた人気NO1の内藤哲也(37)。191センチの長身に50メートル5秒台の身体能力。誰もが日本プロレス界の宝と認めるオカダはこの2人の陰に隠れ、次男坊的な立場に甘えてきたように、私の目には映ってきた。

 しかし、バラエティー番組で人柄の良さ抜群の笑顔を披露し、“隣の兄ちゃん”的な良さも併せ持つ、この男が団体の人気のバロメーター・観客動員数のアップについて、どれほど真剣に考えてきたかも、私はまた知っている。

 それは2年前の8月のこと。当時も無敵のIWGP王者の座に君臨していたオカダに「スポーツ報知」の女性向けページ「L」に登場してもらった。タレント活動面でのマネージメントを手がける都内の大手芸能事務所で、72分間に渡って話を聞いた。

 初対面以来、東京・後楽園ホールで、両国国技館で、リングに上がる前にカーテンの陰からそっと観客席をのぞき、ファンの表情をうかがい続ける、その姿を常に見ていた私は聞いた。

 「オカダさんはいつも観客がどのくらい盛り上がっているかを、そっと観察していますよね?」―

 ニッコリと笑ったオカダは「僕にとって、チャンピオンとして記憶に残ることが一番大事なんです」と言うと、「いろいろな人に知ってもらいたいんです。プロレスを、オカダ・カズチカを。こうやって一生懸命戦っている中で見てもらえないと、戦っている意味もないですし―。一生懸命、60分戦っても地球上で10人しか見てなかったら、たまらないじゃないですか」。そう本音むき出しで続けた。

 そう、「プロレスって台本があるんでしょ?」「勝ち負けが決まっているんでしょ?」。そんな言葉でプロレスを揶揄(やゆ)する人ほど、現場に足を運んで彼らの戦いをじっくりと見てほしい。相手の技を全身で受けて、受け続けて、疲労困ぱいになった状態で自らの必殺技を繰り出し、勝利する―。その数十分の戦いのためにレスラーたちが、鍛え上げた身体を駆使して、どれほど命がけの戦いを展開しているか。一度見れば、すべてが分かると思う。

 そんな命がけの戦いをリング上で常に続けているオカダだからこそ「地球上で10人しか見てなかったら、たまらないじゃないですか」という言葉は本音中の本音として響いた。

 そして、時は来た。オカダが飯伏と戦うのは、新日の年間最大のイベント、来年1月4、5日の2日連続で開催される東京ドーム大会「WRESTLE KINGDOM14 in 東京ドーム」のメインイベントだ。

 14日の激闘の翌日、都内の新日本社で行われた1・4対戦カード発表会見でも長身をスタイリッシュなスーツで包んだオカダは言った。

 「プロレスが盛り上がっていると言われる中で(去年は)見渡すと、東京ドームは空いているところもあった。そこを埋めてこそプロレスは盛り上がっていると言えるんです。プロレスのすごさ、素晴らしさをファンの人が『最高だよ』と胸を張って言えるように僕らがしないといけない。1・4も1・5も超満員にすると言ってますんで、どちらもタイトルマッチをやりたいなと思います。2冠ではなく、IWGPの防衛戦をやりたいと思ってます」と決意表明した。

 隣に座った飯伏に「長くベルトを持ち過ぎです」と挑発されると、「長いことベルト持っていて、強くて、すみません」とニヤリ。最後にもう一度、「プロレスファンをハッピーにしたい。素晴らしいなというものを見せていきたいんです」と、オカダは新日トップの自覚をむき出しにして言った。

 待ち続けていた最強の男の覚醒。来年1月4日、超満員のプロレスファンが見つめる東京ドームのリングのど真ん中に立っているのは、この男しかいない。(記者コラム・中村 健吾)

 ◆オカダ・カズチカ 本名・岡田和睦。1987年11月8日、愛知・安城市生まれ。31歳。中学卒業後、陸上の特待生での高校進学を勧められるも闘龍門に入門。04年8月、メキシコでデビュー。07年8月に新日本プロレスに移籍。10年1月、米団体・TNAへの無期限武者修行に出発。11年12月に「レインメーカー」として凱旋帰国。12年2月、棚橋弘至の持つIWGPヘビー級王座に初挑戦。レインメーカーで勝利を飾り、中邑真輔に次ぐ史上2番目の若さとなる24歳3か月で王座についた。その後、陥落もあったが、現在、同王座を4度に渡って防衛中。12年、14年にはG1クライマックス優勝。今年4月、声優で女優の三森すずこと結婚した。191センチ、107キロ。

14日のメインイベントでIWGPヘビー級王座を防衛。黄金のテープに包まれるオカダ・カズチカ(カメラ・森田 俊弥)
これがオカダ・カズチカしかできない超高角度のドロップキック(左はSANADA)
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