羽根田卓也の辞書に「挫折」の文字はない

羽根田卓也
羽根田卓也

 ぐうの音も出ない、とはまさにこのこと。

 先日、カヌー・スラロームの第一人者にして、リオ五輪の銅メダリスト、“ハネタク”こと羽根田卓也(ミキハウス)をインタビューした。

 彼の趣味のひとつはギター。拠点としていたスロバキアで、練習の合間に奏でるのがリラックス方法だった。ネットで動画を見たり、独学で習得した。

 ギタリストはやっぱり男子のあこがれ。私も一応挑戦してみたことがあるが、あまりのセンスのなさにほどなく熱が冷めた。「すぐ挫折しちゃって…」と口にすると、強烈なカウンターが飛んできた。

 「なんで挫折するか分からないんですよ! 挫折する人って、ただやる気がないだけだと思うんですよ。出来ないわけがないもん」

 反論できずにいると、さらに畳みかけられる。

 「挫折する人って、すぐ自分がジャンジャカできると思って、やり始めるんじゃないですか? 僕は出来ないのを知っていてやっているから。“今日は出来ないけど、明日には出来るだろう精神”でやっているから、地道に出来るのかな」

 ごもっとも。本当にごもっともです。ジミー・ペイジも布袋さんも、ギターを手にした日から華麗に弾けたわけではない。しかし、高校を卒業して単身スロバキアに留学、道なきカヌー道を切り開いてきた32歳が言うと、ズシンと響く。

 「ギターはカヌーと同じで、指の動きとリズムをいかに覚えさせるか。アートではあるけど、運動です。指がいかに正確に弦を押さえるか、という反復練習でしかない。カヌーも反復練習。必ず出来るようになるから、挫折はしない」

 この思考法が、彼を日本人で初めて五輪の表彰台へとたどり着かせたのだ、と内心深く納得した。最終的な目標はオリジナルのソロだという。

 「自動的にメロディーを奏でられるくらいになりたい。コピーじゃつまらない」

 最後に「今、挫折しそうなんですよね。出来ないんだよなあ…」とさわやかなスマイルでオチもつけてくれた。

 既に東京五輪出場を確実にし、18日からの代表最終選考会・NHK杯(東京・カヌー・スラロームセンター)に臨む。リオ五輪後は苦闘が続いているけど、「明日には出来るだろう精神」がある限り、再び花咲く日は来る。

 ◆太田 倫(おおた・りん)1977年10月6日、青森県生まれ。42歳。横浜市立大から2000年入社。プロ野球などを担当し、18年からは五輪取材班へ。主に競泳、スケートボードなどを担当。

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