今秋ドラフトの目玉で最速163キロを誇る大船渡・佐々木朗希投手(3年)が2日、岩手・大船渡市内で進路表明会見を行い、17日のドラフト会議へ向け、プロ志望届を提出したことを報告。国内プロ志望を表明し、12球団OKの姿勢を示した。会見に先立ち、1日に岩手県高野連にプロ志望届を提出。この日、日本高野連から提出者として公示された。これでプロ野球関係者との面談が解禁となり、“令和の怪物”争奪戦が本格的に幕を開ける。
学生服に身を包んだ佐々木は、緊張の面持ちで会見場に姿を見せた。報道30社、79人。15台のテレビカメラが待ち構える中、一礼し席に着いた。
「きょうの午前中にプロ志望届を受理していただきましたことをご報告申し上げます。高校野球をやる中で、レベルの高いところでやりたいと思いプロを志望しました。子供たちに夢と希望を与える選手になりたいです。12球団どこでも頑張りたいと思っています」
12球団OKを明言し、本格的な争奪戦がスタートする。志望届が受理されたことで、プロ球団との面談が解禁。大船渡高の千葉貢副校長は、3日に複数球団との面談が予定されていることを明かし、すでに約半分の球団がコンタクトを取ってきたことを認めた。面談には学校側から千葉副校長、国保監督らの誰かが同席するが、場合によっては母・陽子さんが同席する可能性も示唆した。それでも佐々木は「相談はしないで、自分の意思を尊重してくれるので自分の意思で決めました」と、進路に関して周囲には相談しなかったことも明かした。
海を渡る選択肢はなかった。メジャー挑戦の気持ちを聞かれると「考えていませんでした」とキッパリ。質問を重ねられると「今メジャーについてあまり考えられない、まずは日本で頑張りたい」と言い切った。憧れの選手は「いません」。目指す投手像については「プロに入ったらタイトルがあると思うんですけど、それを全て取れるようなピッチャーになりたい」。現時点ではメジャーは視野に入れず、まずは国内の完全制圧を目標に定めた。
真っすぐへのこだわりは、プロでも貫く。自身をここまで有名にしたのも、U―18代表候補合宿でマークした163キロ。「真っすぐは自分にとって一番自信があるボール。もっと磨いて、もっといい真っすぐを投げたいと思います。(163キロは)これから次のステージで野球をやる中で、超えていきたい数字。超えていけるように頑張っていきたい」と、まずは大谷が持つ165キロの“日本最速”更新を目指していく。
東日本大震災で大きな被害を受けた、岩手県沿岸部の期待も背負っていく覚悟だ。「(地域の応援は)とても励みになっている。これまでたくさんの方々に支えられて頑張ることができたので、これからは地元に恩返しできるようにプレーしていきたい」と語った“令和の怪物”。どこのユニホームを着ることになっても、圧倒的なピッチングで地元に笑顔を届け続ける。(山口 泰史)
◆佐々木朗希の今夏からこれまで主な経過
▼7月16日 夏初戦。岩手大会で遠野緑峰との2回戦に先発。MAX147キロをマークし、2回完全の投球。
▼同18日 日米13球団のスカウトが見守る中、一戸との3回戦で6回参考ながら公式戦では自身初のノーヒットノーランを達成。
▼同21日 4回戦で高校野球夏の公式戦史上最速タイの160キロを記録。
▼同24日 9回を2安打完封15奪三振の好投で、同校21年ぶりの決勝進出を決めた。
▼同25日 決勝で登板のないまま花巻東に敗れ、自身初の甲子園出場を逃す。
▼8月26日 U―18ワールドカップ壮行試合の大学日本代表戦に先発し、1回0封の全国デビューも右手中指にマメができ降板。
▼9月6日 U―18ワールドカップのスーパーラウンド第2戦で、宿敵に韓国戦に初先発。右手中指のマメが再発し、1回無失点に抑えた後に降板。
◆メジャー願望公言メモ エンゼルスの大谷はプロ入り前にメジャー挑戦を表明しながらも、日本ハムからドラフト1位指名され、その後入団を決意した。同じ花巻東の先輩・マリナーズの菊池もプロ入り前、卒業後すぐのメジャー挑戦を検討していたが直前で「国内OK」の姿勢を見せ西武への入団を決めた。日本ハム・清宮は将来のメジャー挑戦に向け、「より高いレベルでやりたい」と早実から早大進学ではなくプロを選択した。
◆巨人・原監督「3人取りたい」
巨人・原監督が今秋ドラフトの超目玉となっている大船渡・佐々木がこの日、プロ志望届を提出したことに言及。星稜・奥川、明大・森下の名も挙げて「一気に3人指名できるんだったら、3人取りたいね。それくらい3人とも素晴らしいね」といずれも甲乙つけがたい好投手であると評価した。巨人も上位指名は投手になることを示唆しつつ「それだけ3人ともずば抜けた素材であるということ。どこの球団もそう思っているだろうし、どこも迷っているんじゃないかな」と話した。