サニブラウン「聞こえなかった」問題…「機器は正常」 記者が実際にレーンに立ち感じたこと

準決勝、10秒15で1組5着だったサニブラウン・ハキーム
準決勝、10秒15で1組5着だったサニブラウン・ハキーム
今大会で使用されているスターティングブロック
今大会で使用されているスターティングブロック

 今思い出しても、悔やまれる。開催中のドーハ世界陸上、サニブラウン・ハキームの男子100メートル準決勝。周囲に大きく出遅れ、10秒15で日本勢初の決勝進出を逃した。「お疲れっす」と言いながら取材エリアに顔を見せた20歳は「スタートで全然音が聞こえなくて、考えてしまうくらいだった」と告白した。

 号砲への反応を示す「リアクションタイム」は、組で最下位の0秒206。サニブラウンが走った9レーンの、スタート器具の不具合か―。日本陸連はレース翌日に、国際陸連へ質問を送ったが「機器は正常に作動しており、問題はなかった」との回答を得たという。集中を研ぎ澄ましたサニブラウンが聞き逃すとも考えにくく、それならばなぜか、という思いばかりが募った。

 一つの可能性に思い至ったのは、2日のこと。今大会の公式計時を担当するセイコーが主催するツアーでフィールド内に入り、100メートルで使用したスターティングブロックを実際に見ることができた。機器には合図のピストル音が鳴るスピーカーがついており、後方や前方にもスピーカーが複数個設置されていた。「100メートルの場合は、隣レーンのブロックから鳴る音も聞こえるはず」と関係者は付け加え、万全を期していることを強調した。

 そこで実際に9レーンに立つと、思いの外客席が近くにせり出してきていることに気づいた。アーチを描くような作りになっており、大外の9レーンだけは、ブロックから10メートルもないほどの位置に客席がある。今大会は、スタートの直前まで関係なく観客が盛り上がっているケースがあり、時折「シーッ!」と注意のアナウンスが入ることもあった。もちろん、実際のレース時、サニブラウンの耳にどれほど客席からの雑音が届いていたかは分からない。ただ、機器の問題でないとするならば、影響した可能性もありうるだろうと感じた。

 サニブラウンはレース後、ホロウェイコーチらとの話し合いの上、抗議を申し出ることはなかった。日本陸連の麻場一徳強化委員長は「彼の素晴らしいところは、泣きごとや恨み言を言わずに次へ向かっていること。競技者として素晴らしい態度だと思う」とたたえたが、本来はサニブラウンがこのような心持ちになるレースなど、起こらないことが一番に決まっている。来年は東京五輪。機器を万全に整えることは当然。観戦マナーも万全に、澄んだような静粛の中でしびれる100メートルの号砲を迎えたい。(記者コラム・細野 友司)

準決勝、10秒15で1組5着だったサニブラウン・ハキーム
今大会で使用されているスターティングブロック
すべての写真を見る 2枚

コラムでHo!とは?
 スポーツ報知のwebサイト限定コラムです。最前線で取材する記者が、紙面では書き切れなかった裏話や、今話題となっている旬な出来事を深く掘り下げてお届けします。皆さんを「ほーっ!」とうならせるようなコラムを目指して日々配信しますので、どうぞお楽しみください。

スポーツ

NEWS読売・報知 モバイルGIANTS ショップ報知 マガジン報知 個人向け写真販売 ボーイズリーグ写真販売 法人向け紙面・写真使用申請