71歳・タイガー戸口が「心房細動」で引退を覚悟、10月に米国で精密検査へ…金曜8時のプロレスコラム

キム・ドクことタイガー戸口(左はグレート小鹿)
キム・ドクことタイガー戸口(左はグレート小鹿)

 キム・ドクこと、プロレスラーのタイガー戸口(71)が、引退の覚悟を決めたことがわかった。戸口は10月に渡米して心臓の精密検査を受けることを明かし、その状況によっては今月19日に東京・新宿FACEで開催されたTCW(TOKYO CHAMPIONSHIP WRESTLING)のチャリティー興行での6人タッグマッチが事実上の引退試合ということになってしまう。

 渡米を前に戸口に話を聞いた。「これが日本での最後の試合になるかもしれないと覚悟を決めて試合しました」と認めた。「心臓の調子が良くなくてね」と医師から「心房細動」と診断されたことを明かした。戸口によると「血が濃すぎて心臓がポンプしきれないんです。このままだと血栓ができて、脳梗塞の原因になってしまう」という。そのため10月に渡米して、米オハイオ州クリーブランドの専門医で精密検査を受けるという。

 その検査によっては、ペースメーカーなどの手術の可能性もあり、そうなるとプロレスの試合どころではなくなる。そんな覚悟を決めて19日のTCW興行に出場していた。ほとんど報道されない興行だったが、戸口がここを舞台にしたのには意味があった。

 このTCWを主催したジミー鈴木プロデューサーは、心臓の手術を受けたばかりで、この大会は「ジミー鈴木心臓手術チャリティー興行」というサブタイトルがついていた。ここで戸口は、橋本友彦、HASHINOSUKEと組んで、加藤茂郎、千葉智招、レザーフェイス組と6人タッグマッチで対戦。この日デビュー戦となったHASHINOSUKE(山口橋之介)は、今年3月19日に脳梗塞のため60歳で亡くなったライター、レフェリー、マネージャーとして活躍したウォーリー山口さんの息子で、戸口がコーチしてきた。

 弟子のデビュー戦に不整脈を押して出場した戸口は、10分30秒、フライング・ネックブリーカーからの体固めでレザーフェイスにフォール勝ち。師匠の貫禄を見せた。リング上で、マイクをつかんで、検査渡米のため、年内の最終戦であることだけを伝えた。

 現役時代から変わらない193センチ、125キロという公称サイズは、今でも説得力がある存在感。8月30日に東京・後楽園ホールで開催された「PRO―WRESTLING MASTERS」でも、レジェンドたちの中で、ひときわ会場を沸かせてみせた。

 第3試合のスペシャルタッグマッチでグレート小鹿(77)と合計148歳タッグを結成し、藤原喜明(70)、大矢剛功(55)と対戦した。元全日本プロレスVS元新日本プロレスの昭和の意地のぶつかり合いは、令和にも持ち越されていた。

 試合は、小鹿が藤原の一本足頭突きで追い込まれ、戸口も脇固めで苦しむ劣勢を強いられたが、戸口がラリアットを大矢に見舞って反撃。一発目は大矢が当たる前に倒れてしまい失笑を買ったが、続けてラリアットを成功させて小拍手。そして走りながらラリアットの大迫力に館内は大歓声に包まれた(8分26秒、ジャンピングネックブリーカードロップ→体固め)。

 ここのところ2試合で、ジャンピングネックブリーカー、フライング・ネックブリーカーと公式記録では発表されているが、あの技は明らかに、ジャイアント馬場さんがNWA世界ヘビー級王座を奪取した時の必殺技、ランニングネックブリーカーだった。戸口に確認すると「そうですよ。馬場さんの技です。アメリカでは使ったことはありますが、日本では今回が初めてですよ」と答えてくれた。

 日本プロレスに入門し、米国武者修行で「ヒール」としてトップとなり、「週1万ドル」を稼ぐアメリカン・ドリームを実現した戸口。キム・ドクとして大木金太郎(キム・イル)との韓国師弟コンビで全日本プロレスのジャイアント馬場、ジャンボ鶴田の師弟コンビを撃破し、インタータッグ王者にも輝いた。その後、タイガー戸口として、馬場、鶴田に次ぐ第3の男として、全日本プロレス入りしたが、アントニオ猪木の新日本プロレスに電撃移籍。裏切り者として、馬場さんの存命中は、全日本のリングに上がることは許されなかった。

 今年2月19日の「ジャイアント馬場没20年追善興行~王者の魂~」(東京・両国国技館)では、悪役のキム・ドクとして、第1試合ジャイアント馬場メモリアルバトルロイヤルに出場を果たした。71歳まで現役を続けているからこそ、恩讐を超えたいろんな出番があるということに、感謝している。

 「PRO―WRESTLING MASTERS」をプロデュースする武藤敬司(56)からも継続参戦を求められており、来年2月の大会にも期待されている。「すべてを白紙にして、真っ白な気持ちで検査を受けてきますよ」達観したマスターのカムバックを願いたい。(酒井 隆之)

 ◆タイガー戸口(たいがー・とぐち) 本名・戸口正徳。1948年2月7日、東京都葛飾区生まれ。71歳。韓国出身の力士・龍錦を父に持つ在日韓国人2世。修徳高で柔道を始め、将来の五輪候補として期待されたが、卒業後の67年に日本プロレス入り。72年に渡米。大型ヒール「キム・ドク」として才能を開花させ、アメリカン・ドリームを手にする。ジャイアント馬場に招かれ、76年から全日本プロレスに参戦。ジャンボ鶴田に続くナンバー3として活躍。81年に、新日本プロレスに移籍。キラー・カーンとのタッグで1982年MSGタッグリーグ戦準優勝。長州力の維新軍団に加入も84年に離脱。再渡米して、WWF(現WWE)に参戦した。タイガー・チャン・リーとしてハルク・ホーガンと抗争し、現大統領のドナルド・トランプ氏ら交友関係を広げた。88年公開のアーノルド・シュワルツェネッガー主演映画「レッドブル」などにも出演。2018年2月16日の「PRO―WRESTLING MASTERS」後楽園ホール大会で本格復帰し、同年6月10日にはプロレスリングA‐TEAM北千住大会で70歳にしてWEWヘビー級王者となった。

コラムでHo!とは?
 スポーツ報知のwebサイト限定コラムです。最前線で取材する記者が、紙面では書き切れなかった裏話や、今話題となっている旬な出来事を深く掘り下げてお届けします。皆さんを「ほーっ!」とうならせるようなコラムを目指して日々配信しますので、どうぞお楽しみください。

格闘技

NEWS読売・報知 モバイルGIANTS ショップ報知 マガジン報知 個人向け写真販売 ボーイズリーグ写真販売 法人向け紙面・写真使用申請