【佐藤優コラム】北方領土の交渉、官邸主導が加速

 北方領土交渉でロシア側のキーマンの一人がパトルシェフ安全保障会議書記だ。同氏は、KGB(旧ソ連国家保安委員会)出身でプーチン大統領の信任が厚い。

 ところで、13日に前内閣情報官の北村滋氏が外交・安全保障政策の総合調整を担う国家安全保障局長に就任した。霞が関(官界)は嫉妬が渦巻く世界でもある。国家安全保障局長は、日本外交の司令塔としての役割を担う。前任の谷内正太郎氏は元外務事務次官で、このポストを警察庁出身の北村氏に奪われたことは、外務省の影響力低下を端的に示す出来事と言っていい。外務官僚は「警察庁出身で外交や安全保障の素人である北村氏に務まるはずがない」という情報をマスメディア関係者にオフレコで流しているが、それは実態を反映していない。

 北村氏の前職である内閣情報官は日本のインテリジェンス・コミュニティーのトップだ。CIA(米中央情報局)、モサド(イスラエル諜報特務局)、SVR(ロシア対外諜報庁)などの長官がカウンターパートとなる。表の外交で処理しにくい事柄については、インテリジェンス機関が処理する。北村氏は秘密外交の世界で鍛えられた外交と安全保障のプロでもある。

 北村氏の安全保障会議事務局長就任にクレムリン(ロシア大統領府)は強い関心を示し、パトルシェフ氏を日本に派遣し、17日に安倍晋三首相を表敬した後、北村氏と会談した。

 ロシア政府が事実上運営するウェブサイト「スプートニク」(日本語版)は、<パトルシェフ書記によると、露日双方は理解が足りない点について協議を続け、立場を調整し、それにより相互の信頼を高めていく意向だという。/会談の冒頭、パトルシェフ書記は北村局長の就任を祝福し、露日関係は全体的に安定かつダイナミックに発展していると述べた>と報じた。

 ロシアは北村氏のインテリジェンス・オフィサーとしてのプロフェッショナリズムを評価している。今後、官邸主導の北方領土交渉が加速することになろう。外務官僚が交渉をサボタージュしないように首相官邸が厳しく監視する必要がある。(作家、元外務省主任分析官)

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