国民的アニメですらサバイバルの時代…テレ朝トップがまっすぐ答えた「ドラえもん」&「しんちゃん」土曜への“お引っ越し”本当の理由

スポーツ報知
テレビ朝日1階に設置された「クレヨンしんちゃん」のキャラクター像。「野原家」の面々も土曜の夕方に“お引っ越し”する(C)テレビ朝日

 畏敬の思いを込めて「テレ朝のドン」とも呼ばれる放送界有数の実力者の口から、これほど詳細で、まっすぐな答えが返ってくるとは思わなかった―。質問したこちらさえも驚く、そんな一幕が24日、東京・六本木のテレビ朝日で行われた亀山慶二新社長(60)の定例会見で展開した。

 民放キー局2位の立場で6年連続視聴率三冠王を狙う常勝・日本テレビを激しく追い上げているテレ朝。10月クールも勢いはそのまま。2年ぶりに復活する米倉涼子(43)主演のメガヒットドラマ「ドクターX~外科医・大門未知子~」(木曜・後9時)、水谷豊(67)と反町隆史(45)のコンビ結成から5年目、放送開始20年目となる看板ドラマ「相棒season18」(水曜・後9時)、さらに2018年4月期に放送されるや社会現象になる人気ぶり。公開中の映画版も大ヒット中の「おっさんずラブ Season2(仮)」(土曜・後11時15分)も10月から放送される。

 そんな華々しいラインアップで勝負する10月改編直前の定例会見とあって、同局の“ドン”早河洋会長・CEO(最高経営責任者、75)も半年に1回の出席を果たした。私には、4月と10月の年2回のみの出席だが、常にどんな質問にも真っ正面から答えてくれる、この大物に、この場でどうしても聞きたいことがあった。

 12日の改編発表会見で放送40周年を迎えた同局の国民的アニメ「ドラえもん」の金曜午後7時から土曜午後5時へ、1992年スタートの「クレヨンしんちゃん」の金曜午後7時半から土曜午後4時半への放送枠移動が正式発表された。

 今回の改編の目玉が金曜日のゴールデン帯の改革だった。アニメ2作が陣取っていた金曜午後7時には長嶋一茂(53)、石原良純(57)、高嶋ちさ子(51)がMCを務める「ザワつく!金曜日」、午後8時からはマツコ・デラックス(46)と有吉弘行(45)の冠番組「マツコ&有吉 かりそめ天国」、午後9時からは午後8時放送から枠移動する「ミュージックステーション」が、それぞれセットされた。

 土曜の夕方に新設されたのが「アニメタイム」。午後4時半から「しんちゃん」、「ドラえもん」の順番で放送されることになった。その発表を聞いた瞬間、私の頭にはいくつかの疑問が浮かんだ。長年、この2作品を親子で見続けてきたファンの視聴習慣は今回の移行にあたって、十分考慮されたのだろうか。そもそも家族で出かけることも多く、外出率が高い土曜夕方への移行に勝算はあるのか。「家族での視聴」を狙うなら、金曜の夜の方が子供も、その親も在宅している確率はより高くないか―。

 改編会見で感じた様々な疑問をコラムとして、そのまま書いてみた。14日、報知WEBにアップした「『ドラえもん』&『しんちゃん』、大人の事情で金曜から土曜にお引っ越し…揺れる国民的アニメの未来」と題した記事には多くの読者が率直なコメントを書き込んでくれた。

 「人気アニメも商品に過ぎない。視聴率が不振ではしようがないのでは―」

 「金曜の夜に食事しながら子供と一緒に見るというこれまでの視聴習慣をどうしてくれるのか?」

 「『ドラえもん』や『しんちゃん』は視聴率に左右されるような存在ではないのでは? もっと国民的な存在では?」

 賛否渦巻く読者の熱い思いを自分が代表して聞こう―。そんな思いで早河会長に質問をぶつけてみた。

 「『ドラえもん』と『しんちゃん』の移行について、金曜夜という、これまでの視聴習慣は十分考慮されたのか? そもそも土曜夕方への移行で、この2番組の視聴率は上がるのか?」―

 いつも通り、じっと、こちらを見た早河会長は、まず「タイムテーブルの改革というのは日曜から月曜までの7曜日、それこそ、もぐら叩きのように悪いところがあれば直し、改善し、強化していくものです」と前置きした。

 その上で「テレビ朝日は正直、火曜と金曜がシングル(一ケタ視聴率)で―。日曜、月曜は改善していますが、金曜などの視聴率が大きく低下すると、週平均(視聴率)に影響してくる。特に金曜日、『ドラえもん』、『クレヨンしんちゃん』は(平均視聴率)6~7%まで落ち込んでいる。かつて『ドラえもん』は1981年から1681回放送して平均視聴率14・7%、『しんちゃん』も1992年から1088回(放送)で平均12・8%を獲っていた。いい時は20%獲っていました。この(現在の)6~7%はタイムテーブルへの影響というのは非常に大きなものがありまして…。なんとか、そこを脱却したいと、より見られる時間帯を探して、土曜日の夕方に移行するということにしました」と、細かい数字もすべて明かして経緯を説明した。

 さらに「長い間、支えていただいている広告会社、アドバタイザー(広告主)とか、あるいは権利者、関係者の皆様には我々の事情を説明して理解を得ました。視聴者もこれだけ長くやっていますから、移動することに違和感があるとは思いますが、その分、土曜日の放送以外にも映画、イベントなど今までやってきたものをさらに強化して新しい試みを作業中です。視聴者、特に子供たちの期待を裏切らないように務めていきたいと思っています」と決意表明までして見せた。

 その言葉の真剣な響きを聞いているうちに私にも「ドラえもん」「しんちゃん」という2番組が、どれほどのピンチに陥っているかが理解できた。そう、今回の“お引っ越し”には金曜に強力な番組を用意し、平均視聴率を上げようという狙い以上に国民的アニメ2作品に息を吹き返してもらおうという思いもまた確実にある。

 1週間の仕事が終わり、ゆったりリアルタイム視聴する金曜午後7時台に6~7%台の視聴率では話にならない―。それが「ドラえもん」と「しんちゃん」の置かれたシビアな現状だ。打ち切りさえ考慮されただろう改編の話し合いの中で「土曜の夕方で復活してもらおう」―。それがテレ朝サイドの正直な思いであることが早河会長の懇切丁寧な答えで理解できた。

 進む少子化と録画視聴の増加の中、リアルタイムでアニメ番組を楽しむ層は日々、減少している。子供が大人へと成長していくのにつれ、あれほどのめり込んで見ていた「ドラえもん」「しんちゃん」から“卒業”し、視聴者が入れ替わっていくのも、また現実だ。

 ビデオリサーチ社が日々調査する視聴率と、それを根拠にしたCM収入で民放テレビ局の経営が成り立っているのもまた現実。テレ朝にとって、鉄板ドラマをそろえて臨むこの10月クールこそが絶対王者・日テレを上回り、視聴率三冠王を狙うビッグチャンスだ。

 そのためには「神聖不可侵」にも見えてきた「ドラえもん」や「しんちゃん」にも枠移動してもらい、再起を図ってもらう。そこには「国民的アニメには触るべからず」なんてタブーは存在しない。すべては視聴率競争に勝ち抜き、営業利益を上げる―。シビアなキー局間の争いと弱肉強食の論理だけが、そこには横たわっている。(記者コラム・中村 健吾)

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