【巨人】引退決断、阿部の素顔は優しくて繊細とってもシャイ…番記者が見た

スポーツ報知
1回2死一、二塁、けん制球のサインを見逃した沢村拓一に激高、マウンド上で頭をたたき気合を入れる巨人・阿部慎之助(右)

 巨人・阿部慎之助が、現役引退を決断した。坂本勇らナインからは慕われ、兄貴的存在としてもチームを先導してきた。プロ19年間に数々の偉大な記録を達成した背番号10。本紙の「阿部番」だった尾形圭亮記者(15~19年)がコラム「見た」で素顔に迫る。

 阿部の素顔は、優しくて繊細で、とってもシャイ。ちょっと怖い雰囲気を醸し出しているけど、勇気を振り絞って懐に飛び込めば、ビックリするほど大切にしてくれる。

 阿部の担当について5年目。最初の頃は、あの独特の“人を寄せ付けないオーラ”にビビって話しかけるのにも苦労した。正直、12年日本シリーズの「沢村ポカリ事件」のイメージが頭から離れなかったのも少なからずある。おそらく、今の若手選手たちも、初めは似たような感覚を抱いていたのではないだろうか。

 今年の開幕前夜。1軍メンバーで作るLINEのグループに、阿部は「今年は“パワ原”してでも勝つ」とメッセージを送った。もちろん阿部なりのジョークなのだが、きっと若手は震え上がったことだろう。そして宣言通り?試合中に、鬼の形相の阿部が説教している姿が何度もテレビに映り込んだ。

 だが、1年間一緒に戦ってみて、若手は本気で勝つとはどういうことか分かったはずだ。そして、叱る側はいつだって真剣に見てくれていることも。阿部も若い頃はミスをするたびに首脳陣や先輩たちからきつく叱られてきたという。そうやって、巨人のあるべき姿は継承されてきたのだろう。

 常に勝つことに一生懸命だから、信頼は厚いに決まっている。坂本勇や岡本だけではない。助っ人勢も例外ではなく、マシソンらは調子が上がらない時に「一発ぶん殴って気合を入れてほしい」と頼みに来ることもあるそうだ。もちろん殴りはしないが…。

 数十年後には間違いなく歴史上の人物的な存在になっているであろうレジェンドの、最後の番記者になれて本当に幸せだった。ときにはこっぴどく叱られたこともあるけれど、記者など、いってみれば部外者。真剣に向き合ってくれたことがうれしかった。もっとずっと近くにいるのがナイン。一緒に戦える残りの時間を、どうか有意義に過ごしてほしい。(尾形 圭亮)

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