振りビシャッ投! 戸辺七段が棋士史上初の始球式で袴姿の快速球

スポーツ報知
始球式を行った戸辺誠七段の投球連続写真(カメラ・森田 俊弥)

 横浜市出身でベイスターズファンとして知られる戸辺誠七段(33)が14日、横浜スタジアムで行われたDeNA対ヤクルト戦で将棋棋士として史上初となる始球式を行った。羽織袴姿でマウンドに上がった若手振り飛車党の代表格。力強く腕を振り、見事な快速球でバットを振らせた。「一生残る一瞬になりました」とベイスターズのチームスローガンを口にして笑顔を見せた。

 美しい直線を描く白球は、盤上を移動する飛車を思わせた。3万2158人が見守る中、始球式を終えた戸辺は「I☆YOKOHAMA」と書かれた扇子をスタンドに向けて広げる。「鳥肌が立ちました。憧れの地、ハマスタのマウンドですから。ベイスターズの今のスローガンは『一生残る、一瞬のために』ですけど、本当に一生残る一瞬になりました」。少年のような笑顔を浮かべた。

 特注の羽織袴姿。「王将」「飛車」のみならず、どんな動き方をするのか興味深い駒「横浜」も描かれたベイスターズブルーの逸品。ちょっと投げにくそうにも見えたが、マウンドに上がるや推定110キロの快速球をヤクルトのトップバッター・太田の膝元へ。スタンドのハマっ子からは「おお~っ!」の声も上がった。

 もともとサウスポーの棋士だが、実は右も器用にこなせる。野球では対右打者で有利なために右投げに。打席ではスイッチヒッターになる。棋士らで構成される日本将棋連盟の野球部「KINGS」の中心メンバーとして活躍した。

 棋士代表とも言える大役を終え「着物姿で投げたことで、タイトル戦に出たい思いが強くなりました」と素直な思いを口にした。

 横浜生まれ。幼い頃から将棋のために人生を歩んできたため、当然ながら本格的な野球経験はない。「でも、98年の横浜高の甲子園春夏連覇、ベイスターズの日本一は忘れられません」。松坂大輔の輝き、マシンガン打線と大魔神・佐々木主浩の躍動を胸に刻み、同年末に奨励会入会。以降、同じ勝負の世界を生きてきた。ハマスタでの野球観戦は、束の間でも盤上の戦いを忘れられるひとときでもある。「今のチームでは、豪快な筒香選手と流れを変える梶谷選手が特に好きですね」

 チームスポンサーのJ:COMが主催した子供将棋大会への出演が縁になり、8月下旬にオファーを受けた。「ドッキリだと思いましたけど、マウンドに上がるからには棋士を代表するつもりで」。奨励会時代から仲の良い先輩でヤクルトファンの渡辺明3冠(35)がキャッチボールの相手を務めてくれた。「ヤクルトの1番は左の太田選手だから外角高めに渾身のストレートを投げてね」。助言をもらっていたが、前日早朝に「昨日、廣岡選手がすごいヒット打ったから、1番起用あるよ。対右も考えといた方がいいよ」と野球通らしい連絡も。「渡辺先生には本当に感謝しています。ちょっと悔しがってる気もしますけど…(笑)」

 スタンドからは家族も見守っていた。小3の長男・琥太郎(こうたろう)君はリトルリーグで外野手。前日、当日朝と息子が捕手役を買って出てくれた特訓の成果も発揮した。「たぶん『お父さん、肩が下がってたよ』とか専門的なことを言ってくると思います」。前日は9歳の誕生日。パパからの何よりのバースデープレゼントになっただろう。(北野新太)

 ◆戸辺 誠(とべ・まこと)1986年8月5日、横浜市生まれ。33歳。加瀬純一七段門下。98年、小学生名人戦で3位になり棋士養成機関「奨励会」入会。2006年、四段昇段。07年、竜王戦6組優勝。09年、全棋士2位の勝率・762を挙げて新人賞。10年、順位戦で連続昇級。若手振り飛車党の代表格で、攻撃的スタイルは「戸辺攻め」と称される。通算465戦280勝185敗、勝率・602。竜王戦4組、順位戦B級2組。家族は妻と2男1女。右投両打。

【里見も投げた】

 女流棋士では、里見香奈女流名人(27)=清麗、女流王座、女流王位、女流王将、倉敷藤花=が2007年5月15日、米子市民球場で行われた広島対阪神戦の始球式を務めている。

 当時15歳の高校1年生だった里見は、初々しい制服のブレザー姿で登場。見事なノーバウンドピッチングを披露した。自宅で父や兄と行った練習の成果を発揮し「緊張はしませんでした。思いっ切り投げられて楽しかったです」と強心臓ぶりをのぞかせた。

 「夢は女流名人になることです」と語った女子高生は3年後に女流名人を初獲得。以降、現在まで10連覇を継続している。

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