「ドラえもん」&「しんちゃん」、大人の事情で金曜から土曜にお引っ越し…揺れる国民的アニメの未来

テレビ朝日1階に設置された「クレヨンしんちゃん」のキャラクター像。「野原家」の面々も土曜の夕方に“お引っ越し”する(C)テレビ朝日
テレビ朝日1階に設置された「クレヨンしんちゃん」のキャラクター像。「野原家」の面々も土曜の夕方に“お引っ越し”する(C)テレビ朝日
10月改編で「アニメタイム」の新設など週末のタイムテーブル強化を図ったテレビ朝日
10月改編で「アニメタイム」の新設など週末のタイムテーブル強化を図ったテレビ朝日

 テレビ朝日の誇る国民的アニメ「ドラえもん」と「クレヨンしんちゃん」の放送日がこの秋、変更される。

 12日、東京・六本木の同局で開かれた10月番組改編発表会見。榊原誠志総合編成部長の口から放送40周年を迎えた「ドラえもん」が金曜午後7時から土曜午後5時へ、1992年スタートの「クレヨンしんちゃん」も金曜午後7時半から土曜午後4時半への放送枠移動が正式発表された。

 6年連続視聴率三冠王を狙う日本テレビを激しく追い上げているテレ朝。10月クールも勢いはそのまま。2年ぶりに復活する米倉涼子(43)主演のメガヒットドラマ「ドクターX~外科医・大門未知子~」(木曜・後9時)、水谷豊(67)と反町隆史(45)のコンビ結成から5年目、放送開始20年目となる看板ドラマ「相棒season18」(水曜・後9時)、さらに2018年4月期に放送されるや社会現象になる人気ぶり。公開中の映画版も大ヒット中の「おっさんずラブ Season2(仮)」(土曜・後11時15分)も最短で10月から放送されることが発表された。

 そんな華々しいラインアップの裏で、どこかひっそりと発表されたのが、「ドラえもん」と「しんちゃん」の枠移動だった。

 ひな壇中央に座った西新総合編成局長は全日(午前6時~午前0時)9・3%、ゴールデン(午後7時~10時)26・6%、プライム(午後7時~11時)19・9%という改編率を発表した上で「この秋もタテの流れをしっかり意識して、特に週末の夜を変革していきたい」と宣言。開局60周年というメモリアルな年を強く意識した発言となった。

 10月改編で特に力を入れたのが、金曜日のゴールデン帯の改革だった。アニメ2作が陣取っていた金曜午後7時には長嶋一茂(53)、石原良純(57)、高嶋ちさ子(51)がMCを務める「ザワつく!金曜日」、午後8時からはマツコ・デラックス(46)と有吉弘行(45)の冠番組「マツコ&有吉 かりそめ天国」、午後9時からは午後8時放送から枠移動する「ミュージックステーション」が、それぞれセットされた。

 「若年層のターゲットを取れる番組を用意して、それぞれの番組で新たな視聴者獲得を狙いたいと思っています」と榊原氏。「家族で楽しんでもらえることが大事です」とも続けた。

 一方で土曜の夕方に新設されたのが「アニメタイム」。午後4時半から「しんちゃん」、「ドラえもん」の順番で放送されることになった。「この引っ越しに合わせて内容もパワーアップして、土曜のこの時間帯はアニメを存分に楽しんでいただきたい」と榊原氏は話した。

 ここまで聞いた時、私の頭にはいくつかの疑問が浮かんだ。長年、この2作品を見続けてきたファンの「視聴習慣」は今回の移行にあたって、十分考慮されたのだろうか。そもそも家族で出かけることも多く、外出率が高い土曜夕方への移行に勝算はあるのか。「家族での視聴」を狙うなら、金曜の夜の方が子供も、その親も在宅している確率はより高くないか―。

 いくつも浮かんだ疑問解消のため挙手しようとした瞬間、明らかに私より年下かつ「しんちゃん」世代の子供がいそうな男性記者がさっそく聞いた。

 「金曜夜の視聴習慣がついている『ドラえもん』と『しんちゃん』の枠移動の理由は?」―。そう、その場にいた約50人の記者みんなが、それに近い疑問を持っていたと私は見る。

 改めてマイクを握り直した榊原氏は「(現在の金曜日放送では)リアルタイム視聴率が6~7%という厳しい結果が出ています。決してアニメというコンテンツが厳しいと言うのではなく、視聴習慣の多様化の中で今までの時間で見ていただくのが厳しくなったのかなと」と、2作品の置かれた現状を率直に明かした上で「週末の夕方の方が今の時代にしっかりとマッチし、視聴週間も持っていただけると思う。金曜19時はなかなか毎週見ていただくのは厳しいのかなと。家族で見ていただける土曜で新たな視聴習慣を持っていただけたらと思います」と狙いを明かした。

 さらに続いた「土曜に移っても、夕方より夜の方が家にいる視聴者が多いのでは?」という問いかけにも榊原氏は「土曜の夜より夕方帯の方がゆっくり見ていただけると判断しました」と答えた。

 さっそく、このやり取りを「『しんちゃん』&『ドラえもん』金曜から土曜への“お引っ越し”は『厳しい結果が出たから』」と題した速報記事として報知WEBにアップした。

 すると、さすがは国民的アニメ。読者からの賛否両論の声が殺到した。

 「人気アニメもまた商品。この数字(視聴率)ではしようがないのでは―」

 「土曜のその時間、子供はまだ外で遊んでいるのではないか? もしくは塾や習い事の時間では?」

 「夕食時の家族団らんは午後6時くらいからでは?」

 「日曜の午前中に放送してくれたら家族で見られるのに」

 「金曜のあの時間にゆったり見るのが良かったのに」

 中には「日曜ゴールデンのNHK大河ドラマの視聴率も6~7%。そんなに悲観する数字かな」という辛辣な意見もあった。

 社内でも幼い子供を持つ女性記者に聞いた。「ウチの子も『ドラえもん』が大好きだから、移るのはちょっと…。そもそも土曜のその時間はまだ出かけている時間では」と話した上で「『おかあさんといっしょ』と放送時間がカブるのも気になりますね」と答えてくれた。そう、NHK Eテレのこちらも国民的子供番組「おかあさんといっしょ」(再放送)の放送時間も月~金曜は午後4時20分からと放送時間が重なるのだ。

 進む少子化と録画視聴の増加の中、リアルタイムでアニメ番組を楽しむ層が日々、減少しているのは事実。子供が大人へと成長していくにつれ、あれほどのめり込んで見ていた「ドラえもん」「しんちゃん」から“卒業”し、視聴者が入れ替わっていくのも、寂しいが、また現実だ。

 だからこそ今、2つの国民的アニメでさえ、「リアルタイム視聴率が6~7%という厳しい結果」になっている。それは、この日の榊原氏の率直な言葉で痛いほど理解できた。

 それでも、「仮面ライダー」や「ウルトラマン」シリーズや数々のアニメの名作の放送をブラウン管テレビの前でじっと待っていた私自身の思い出は決して色あせない。今でも、「ドラえもん」や「しんちゃん」が始まるのを、じっと待っている子供たちは絶対いる。

 ビデオリサーチ社が日々調査する視聴率と、それを根拠にしたCM収入で民放テレビ局の経営が成り立っているのは心の底から理解している。テレ朝にとって、鉄板ドラマをそろえて臨むこの10月クールこそが絶対王者・日テレを上回り、視聴率三冠王を狙うビッグチャンスなのも日々の取材を通じて、肌身に感じている。

 それでも、「ドラえもん」や「しんちゃん」は、どこか視聴率という取り留めのない数字に左右されていい存在ではないのではないか。子供たちにとっては、もっと“神聖不可侵”な存在なのではないか―。そんなことを、もうすっかり成長してしまった子供たちが小さかった頃、この名作アニメを一緒にたっぷり楽しんだ一人の父親として思う。

 だからこそ今回の視聴率を理由にしての“お引っ越し”には賛成できないかも―。元アニメ少年でもあるおじさん記者は、ふと、遠い目になって言ってみたくなった。(記者コラム・中村 健吾)

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