自由を愛する楢崎智亜は特別な被写体…カメラマンが見た最強クライマーの強さの秘密

スポーツクライミング世界選手権男子複合決勝のボルダリングで第3課題を完登してガッツポーズする楢崎智亜
スポーツクライミング世界選手権男子複合決勝のボルダリングで第3課題を完登してガッツポーズする楢崎智亜

 進撃の巨人の主人公、エレン・イェーガーは言った。

「俺たちは皆、生まれた時から自由だ。それを拒むものがどれだけ強くても関係ない」。

 心からそう思える人が、どれだけいるだろう。何かにつけて空気を読むことが求められる現代社会では、言いたいことを言うことすら難しい。相手を気遣い、空気を読むこと自体は悪いことじゃない。でも、周りの目を気にして、軋轢を嫌い、うまく立ち回ることを大事にするあまり、言うべき事や本当にやりたい事が置き去りにされてしまうのは寂しい。そんな息苦しいご時世だからだろうか。「誰よりも自由になりたい」と目の前の壁に向き合うクライマー・楢崎智亜(23)はカメラマンの僕にとって、特別な被写体として映った。

 スポーツクライミングは3つの競技に分かれる。高さ5メートル以下の壁に設定された複数の課題をいくつ登りきれたかを競う「ボルダリング」。高さ12メートル以上の課題を制限時間内にどこまで高く登れたかを競う「リード」。高さ15メートルの隣り合う同一ルート(世界共通)の壁をどちらが早く登れたかを競う「スピード」。新種目として採用される東京五輪は、その3つの総合力を競う「複合」によって争われる。いずれの競技も、登り方やルートはクライマーの自由。だから、楢崎は言う。「強くなればなるほど壁の中でできることが増える。強くなるほど自由になれる」。

 幼少の頃、器械体操で培った抜群の身体能力を誇る。素質だけではない。人一倍、壁を登り込んできた。そのため、指の指紋は摩擦で常に薄くなっている。海外の空港では入国時に指紋登録ができないこともある。クライミングは日常生活にまで染みつき、今ではソファの手すりなど、つかめるものには無意識に手が伸びるようになった。そして五輪1年前となった今季、3年ぶりにボルダリングW杯年間王者に返り咲いた。

 自国開催となった8月の世界選手権(東京・八王子)で、その強さを見せつけた。五輪代表が決まる男子複合に先んじて行われた男子ボルダリング決勝。第3課題を終えて楢崎が2完登、その他の5選手は0完登。残すは1課題のため、この時点で楢崎の優勝は決定した。競技の公平性を保つため、選手は他の競技者の登り方や結果を見ることができないように隔離されるが、観客の反応や課題の難易度などから状況を推察することができる。会場の雰囲気を察した楢崎もそうだった。「これで決まったな」。確信をもって思った。

スポーツクライミング世界選手権男子複合決勝のボルダリングで第3課題を完登してガッツポーズする楢崎智亜
男子ボルダリング決勝で課題を真剣な表情で見つめる楢崎智亜
男子ボルダリング決勝で第1課題に挑む楢崎智亜
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