◆明治安田生命J1リーグ第25節 湘南1―1浦和(1日・BMWス)
浦和は敵地で湘南と1―1で引き分けた。FW興梠慎三(33)が前半3分に今季10点目で先制し、J1史上初の8年連続2ケタ得点を達成。プロ15年目ですごみを増す得点能力の進化を星野浩司記者が「読み解く」。
開始3分、FW武藤の左クロスに興梠は一度ファーサイドに走るフェイントをかけてDFを振り切り、ニアサイドへ。右つま先でわずかにコースを変え、GK秋元の股下をオシャレに抜いた。「ゴール前で相手をおちょくるくらいの遊び心が必要」という持論を体現し、4戦ぶりの得点。「2ケタ達成!」と言わんばかりに左手でピースした。
鹿島時代の12年からJ1で8年連続の10得点。7年連続で並んでいた佐藤寿人、エジミウソンを抜いての金字塔に「歴史に名を刻めて非常にうれしい」。終盤の失点で6試合ぶりの勝利を逃したが、今季は得点すれば7勝3分けと不敗を10試合に伸ばした。
7月で33歳になり「若い頃と違って筋肉痛が2日後に来るようになった」と、一般男性と同じように加齢による回復力の鈍りを認識している。突出した筋力を持つわけではないが、体格で劣るDFに当たられても倒れずに点を取り続けられるのは、経験で積み重ねた対人スキルの進化にある。
石栗建コーチは「空間認知能力が高い」と評価。パスが来た時にボールと相手の位置を瞬時に把握し、相手が力を入れるタイミングとずらし、体を当てて競り合いを制する技術はピカイチ。武藤も「先に体をぶつけたり、相手の懐に入るのが素晴らしい」と脱帽する。“脱力”と“注力”のバランスはけが予防にもなる。「脂ものも気にせず食べる」とストレスをためない食生活を続け、J1で400戦出場を超えた。
口癖は「常に1試合1点は決めたい」。意外にも得点王の経験はないが「個人タイトルを取りたいけど、浦和で取ってないリーグ(優勝)を取りたい」。後半戦の巻き返しへ、淡々とゴールを奪い続ける。