◆明治安田生命J2リーグ第30節 甲府1―0大宮(31日・中銀スタ)
ヴァンフォーレ甲府が後半ロスタイム3分、FW横谷繁(32)の決勝PKでJ1昇格を争う大宮との激戦を制し、2連勝した。昨季大宮から放出されたベテラン横谷の“恩返し弾”で、上位対決3連戦の初戦をものにし、8試合ぶりに昇格プレーオフ圏内の暫定6位に浮上した。
後半ロスタイム。FWドゥドゥ(29)がペナルティーエリア内で倒されると、主審は迷わずペナルティースポットを指さしてホイッスルを吹いた。勝ち点3がかかる一蹴りを託されたのは、PKを獲得したFWドゥドゥでも、今季13点のチーム得点王FWウタカ(35)でもなく、横谷だった。一瞬、助走でちゅうちょしたものの、冷静に相手GKの逆をついてゴール左に決めた。爆発的な歓声が中銀スタジアムから上がった。
今季3度目となる1万を超える1万83人の観客が詰めかけ、ホーム通算観客350万人に到達した。横谷は「なかなかホームで勝てない中、これだけのサポーターのみなさんに集まってもらえて、後押しになりました」とヒーローインタビューを笑顔で話し、観客席に手を振った。
前日練習後、FWウタカが「WE NEED HELP(助けが必要だ)」とサポーターへ結束を呼びかけていた。この日の“小瀬劇場”の主役は甲府イレブンだったが“助演賞”は間違いなくサポーターの声であり、拍手であった。伊藤彰監督(46)も「1万人を超えるサポーターに後押しをしてもらった。ファン、サポーターのおかげで勝った試合だと思う」と会見冒頭で感謝した。
3―4―3の同システムを採用する大宮との一戦は、小さな隙をうかがいつづける90分となった。引き分けも許されず、伊藤監督はMFアラーノ(24)、曽根田穣(25)と攻撃的選手を立て続けに投入した。勝ち点3へ燃やした執念が、後半ロスタイム、FWドゥドゥのPK奪取と、横谷の決勝PKにつながった。
上位対決3連戦の初戦を制し、次は敵地で、この日暫定ながら自動昇格圏の2位に浮上した横浜C戦。甲府は勝ち点差3で追う。「(大宮戦を含め)残り13でのライバルチームとの試合は勝ち点6の重みがある。昇格に向けた第一歩を踏み出せたと思う」と伊藤監督は表情を緩めることなく、次なる決戦を見据えていた。(西村 國継)