山口崇「やりたいこと優先」長唄で「気分的に自由」…「クイズタイムショック」2代目司会のベテラン俳優、34年ぶり映画出演

80歳を超えてもますます意気盛んな姿を見せた山口崇
80歳を超えてもますます意気盛んな姿を見せた山口崇
2016年に長唄の会「第20回織音会」に家族で出演。(後列左から)杵屋巳貴(桂子夫人)、杵屋巳津也(長男)、杵屋巳楓(山口)、杵屋巳織(長女)
2016年に長唄の会「第20回織音会」に家族で出演。(後列左から)杵屋巳貴(桂子夫人)、杵屋巳津也(長男)、杵屋巳楓(山口)、杵屋巳織(長女)

 1970~80年代の人気番組「クイズタイムショック」(テレビ朝日系)の2代目司会者として知られ、TBS系「大岡越前」では約30年にわたり徳川吉宗を演じた俳優・山口崇(82)が、9月13日公開の映画「記憶にございません!」(三谷幸喜監督)で、実に34年ぶりにスクリーンに帰ってきた。久々に映画に出演した感想と同時に、90年代以降は俳優業よりも自身のライフワークである長唄三味線奏者や民話研究家としての活動に比重を置く現在の思いを聞いた。(高柳 哲人)

 1985年の「白い町ヒロシマ」以来となる、34年ぶりの映画出演は、中井貴一(57)演じる「史上最低の総理大臣」黒田の小学校時代の恩師・柳友一郎役。出番は数シーンと少ないが、個性的なキャラクターが多数登場する「記憶にございません!」の中でも、観賞後にすがすがしさを感じさせる役だ。

 三谷作品には、94年のフジテレビ系「警部補 古畑任三郎」にゲスト出演。当時は三谷氏が山口の代表作の一つであるNHK「天下御免」の大ファンだったことから出演を依頼したもので、今回は四半世紀ぶりのタッグとなった。

 「久しぶりでしたからね。『僕のことなんか忘れているかもしれないな』と思って『山口です』と改まってあいさつしようと思い衣装合わせに向かったら、三谷さんは『ヤアヤア』という感じで迎えてくれて。一瞬で当時に戻れた感じがして、うれしかったですね」

 とはいえ、かなりのブランクがあっての映画出演。現場に入る初日は、かなりの緊張があったという。そして、その思いはセットにあった「あるもの」で更に高まった。

 「私が映画に初めて出たのは、木下惠介監督の『歌え若人達』でした。先輩からは『セリフはしっかり覚えて行けよ』と言われたんですが、舞台の経験はあったので完璧だと思っていた。現場に行ったら(カメラを移動させる)レールがバーッと敷いてあって。それを見た後にカメラの前に立ったらカーッとしちゃって、いきなり6回NGを出しましたよ。そんな思い出を持って今回、現場に行ったら、またレールが(笑い)。『えらいこっちゃ』ということになりました」

 冗談を交えながら話したが、スクリーンでは山口の存在感をはっきりと感じ取ることができる。ただ、その芝居を目にする機会は近年、めっきり減った。「タイムショック」が終了した86年以降は、99年まで放送が続いた「大岡越前」以外は、テレビドラマでもゲスト出演の役が多い。その理由には、葛藤の末に出した答えがあったという。

 「今考えてみると、(俳優の仕事が減った)当時は、『出演の話があるから出ないといけない』という考えと、『何でも出演して、機械のようにしゃべり続けていいのか?』という考えの間で悩んでいたんでしょうね。自分がしたい表現を求めていくという思いの中で、テレビから多少離れていったということはあったと思います。俳優をやっている以上、『売れてなきゃダメだ』というのはある。でも、やりたいことを優先したいという思いがあったし、結果的にそれを貫くということになりました」

 ライフワークとして取り組んでいるのが邦楽だ。山口が生まれた淡路島は、500年以上の人形浄瑠璃の歴史を持つ。母が生田流箏曲(琴)をたしなんでいたこともあり、山口も幼い頃から邦楽が身近にあった。琴や鼓を役柄において披露したこともあるが、中でも三味線には力を入れた。

 長唄の人間国宝・7代目杵屋巳太郎(現・杵屋浄貢、81)に師事し、杵屋巳楓(みふう)の名を持つ。元女優の桂子夫人、長男、長女も共に名取で、地元・淡路島などで自らが企画した演奏会も開いているほど。長男の杵屋巳津也(51)は、歌舞伎座に出演しタテ(リーダー)を務めるなど、活躍をしている。

 「邦楽が好きになったのは、淡路島に生まれたということに尽きます。子供の頃は、娯楽といったらそれしかなかったし、文化として根付いていた。ただ、当時はそれを文化と感じることができなかった。一刻も早く地元を抜け出して、キラキラした東京に行きたかったんです。それで、高校入学のために上京したんですが、いざ来てみたら思ったほどではなかった。そこから、結果的に地元に回帰していったということですね。それも、必然だったのかもしれません」

 演奏会の際には奏者としてはもちろん、資金集めや会場の手配など、全てを自らの手で行わなければいけない。

 「大変ですよ。事務的なことで駆け回っている中で、楽器の稽古もしないといけない。私も80歳を超えましたから。徹夜とかになると、肉体的には厳しいかな…。でも、自分の人生、やりたいことをやれている。これだけは間違いない。気分的に自由。これは、ずっと俳優だけをしていたら感じることができなかったことだと思います」

 「記憶に―」では、山口演じる柳のセリフに「この国の人間は、枠にはまらない人間を排除しようとする」というものがある。このセリフを、「俳優」という枠にはまることなく生きてきた山口が語るというところに、大きな意味を感じさせる。

 「あれは、本当に大事なセリフですよね。だからこそ、演じる時は強調しちゃいけないと思って、淡々と話しました。それはともかく、作品を作るというのは本当に楽しい。今回、久々に映画に出て芝居の楽しさに目覚めたというわけではないけれど、今度は三谷さんと舞台を一緒にやりたいですね。今回、共演したのは中井さんと小池(栄子)さんだけだったけど、舞台なら出演者全員と稽古して本番があって…。みんなで“暮らせる”じゃないですか」

 今回の出演を経て、山口は現在、ある枠の更に外へ飛び出て行きたい気持ちを強くしたようだった。

 ◆山口 崇(やまぐち・たかし)本名・山口岑芳(たかよし)。1936年11月17日、兵庫県三原郡阿那賀村(現・南あわじ市)生まれ。82歳。早大在学中にNHK俳優養成所に入り、後に大学を中退。74年に芸能座を結成する。映像では、63年に映画「歌え若人達」でデビュー。70年からはTBS系「大岡越前」で30年にわたり徳川吉宗を演じる。他の代表作にNHK「天下御免」の主演・平賀源内など。78年から、田宮二郎の後を継ぎ、テレビ朝日系「クイズタイムショック」の2代目司会者を86年まで担当。民話研究家としても知られる。

80歳を超えてもますます意気盛んな姿を見せた山口崇
2016年に長唄の会「第20回織音会」に家族で出演。(後列左から)杵屋巳貴(桂子夫人)、杵屋巳津也(長男)、杵屋巳楓(山口)、杵屋巳織(長女)
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