萩野が大坂が苦しんだ 完璧な自分との闘い

大坂なおみ(ロイター)
大坂なおみ(ロイター)
萩野公介
萩野公介

 山は登るより下りる方が実は大変と言うけれど、頂上に居続けるのはもっと難しかったりもする。登った後は国旗を立ててパシャリとやったら、一刻も早く無事に下りなくては。過酷な山の頂上でのんびりしている人ってそんなに多くないだろうし、そもそも長くいられない。いる理由もない。

 世界一や金メダルへの道は登山に例えられるが、取材者の立場からも、王座を奪うより維持する方がずっと難しいことをしばしば実感する。

 例えばそれは競泳の萩野公介であり、テニスの大坂なおみのことだ。

 萩野はリオ五輪の400メートル個人メドレーの金メダルの後は国際大会で目立った成績を残せず、今年に入って長期休養という道を選んだ。理由は「モチベーションの低下」だった。大坂は昨年の全米オープンで勝ち、世界ランクもNo.1に上り詰めた。その後にもがく姿は周知の事実である。

 「私は自分が完璧であるように、たくさんのプレッシャーをかけてしまっていた」

 大坂は、全米オープン2回戦で彼女らしい強いテニスで勝った後に、しみじみと語った。萩野も“本来出せるはずのタイム”と現実のギャップに追いつめられてきた。苦しくとも疲れ切っていても、パーフェクトな姿を見せなくては。ある種の強迫観念とも戦う王や女王は、うらやましくもツラい。

 萩野は下山を選択した。「水泳が好きだし、もっと泳ぎたい」。ふもとから見た山は思ったよりずっと魅力的だった。大坂は依然として頂上にいるが、こうあるべき、という呪縛から少し解放されつつある。「今このトーナメントに勝つことさえ考えていない。私はいいテニスをしたいだけ」。“そこに山があるから”。原点に立ち返った2人が手にしたものは尊い。

 ◆太田 倫(おおた・りん)1977年10月6日、青森県生まれ。41歳。横浜市立大から2000年入社。18年から五輪、主に水泳競技、スケートボードなどを担当。

大坂なおみ(ロイター)
萩野公介
すべての写真を見る 2枚

スポーツ

NEWS読売・報知 モバイルGIANTS ショップ報知 マガジン報知 個人向け写真販売 ボーイズリーグ写真販売 法人向け紙面・写真使用申請