ルーキー記者が見た甲子園…「野球の神様」は存在する 花咲徳栄・菅原のフェアプレーにふるえた夏

8月11日の花咲徳栄・明石商戦、7回1死、花咲徳栄・菅原が同点の左越えソロを放った(カメラ・渡辺 了文)
8月11日の花咲徳栄・明石商戦、7回1死、花咲徳栄・菅原が同点の左越えソロを放った(カメラ・渡辺 了文)

 やはり「野球の神様」は正直者にほほ笑む。

 11日の明石商との2回戦、花咲徳栄・菅原謙伸捕手(3年)の最初で最後の公式戦アーチが、初めてプレーする甲子園の大舞台で飛び出した。この一発を生んだ漫画のような展開に、胸を打たれた。

 「デッドボールじゃないんです」

 2―3で迎えた7回1死の第3打席、相手先発の中森俊介投手(2年)の2球目が、右打席に立つ菅原の左肩を直撃すると、死球を宣告しようとした球審にそう申し出た。菅原の意思を確認するかのように球審がうなずき、判定はボールに。すると、彼は予期せぬ行動に出た。「体が出てしまい、自分が悪い」と相手バッテリー、ベンチにも頭を下げて謝罪したのだ。ここまで気を配れる高校生がいるのか。温かい気持ちに浸る間もなく、直後に同点弾が左翼に飛び込み、私は胸を熱くした。

 埼玉大会の準々決勝前、父・良一郎さん(57)を取材する機会があった。菅原は岩手出身の軟式野球育ちで「大学でも通用する選手になりたい」と名だたるシニア(硬式)出身者が集う同校に飛び込んだ。「周りはレベルが違いすぎる」と苦悩した時期もあった。比較するのはおこがましいが、同じく軟式からの高校球児だった私は、厳しい環境に身をおく菅原に心ひかれた。

 埼玉大会では、投手以外のスタメン選手で最低打率の2割6分1厘。あの日も、第1打席は注目右腕・中森の直球に3球三振。9番打者の菅原にとって、出塁できる“死球”はこの上ないものだったはずだが、迷いは見えなかった。

 試合に敗れたが「神様が打たせてくれたのかも」と話す、すがすがしく穏やかな表情が印象深かった。

 初の甲子園取材で見た奇跡。夏が来る度に、菅原が見せてくれた謙虚な姿勢を思い出すことだろう。(記者コラム・竹内 夏紀)

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