鹿島アントラーズとメルカリの融合で考えさせられた、日本におけるスポーツビジネスの今後

1985年1月15日のラグビー日本選手権、新日鉄釜石が同志社大を破り7連覇を達成。主将兼監督の松尾雄治は優勝で引退を飾った
1985年1月15日のラグビー日本選手権、新日鉄釜石が同志社大を破り7連覇を達成。主将兼監督の松尾雄治は優勝で引退を飾った
7月30日、メルカリが鹿島の経営権を獲得し会見
7月30日、メルカリが鹿島の経営権を獲得し会見

 今でも鮮明に記憶に残っているシーンがある。

 1985年1月15日、ラグビー・日本選手権(旧国立競技場で開催)。新日鉄釜石は平尾誠二さんを擁する同志社大を31―17で退け、7連覇を達成した。左足首の負傷を抱え、強行出場した新日鉄釜石の松尾雄治さんの姿に、多くのファンが拍手を送った。

 1991年1月8日、秩父宮ラグビー場で行われた社会人ラグビーの決勝、神戸製鋼対三洋電機。神鋼のイアン・ウィリアムスさんが後半ロスタイムに50メートル独走の同点トライを決め、その後のコンバージョンも成功。神戸製鋼は3連覇を達成した。

 その瞬間を「ブラウン管」テレビの前で見ていたことを今も覚えている。国内では、大企業が野球、サッカー、ラグビー、バスケ、バレーボール、陸上などのスポーツを支えてきた歴史がある。企業経営者から「スポーツは福利厚生の一つ」という話はよく聞かれるが、選手たちが作り出したドラマは多くのファンや地域を巻き込み、「福利厚生」以上の夢を感じることができた。

 IT企業のスポーツ界への参入が続いている。最近、大きなニュースとなったのがメルカリによる鹿島アントラーズの運営権取得だ。日本製鉄、メルカリ、鹿島と三者で約1年半をかけて慎重に協議を進めてきた。業界関係者を取材してみると、「クラブ運営の長期的な展望が見えない」と否定的な意見もあったが、反応はおおむね好意的だった。機動性と斬新なアイデアを武器に、メルカリが鹿島とともにさらに大きく成長していく姿を描けるのか、期待したい。

 鹿島を巡る動きは2012年10月に大きな転機が訪れている。住友金属工業は業界最大手の新日本製鉄(現・日本製鉄)と合併。先に触れたように新日鉄はこれまで、社会人野球部やラグビーの新日鉄釜石などを所有し、スポーツ振興にも積極的だった。だが、1990年代後半の鉄鋼不況を受け、これまでの方針を大きく転換。2000年代に入ると国際競争は一層、激化しスポーツ関係事業の縮小や見直しを進めた。

 業界再編や企業合併などの際、「時代の流れ」という言葉はよく聞かれるが、こんなことも同時に思った。グローバルブランドである日本製鉄がスポーツビジネスに本腰を入れ、「Nippon Steel」のロゴを入れたユニホームで世界の舞台で鹿島とともに、戦うという選択肢はなかったのか。鹿島をより主体的に、戦略的に運営していくことで、スポーツという世界市場で大きな存在感を示すことができたのではないか。

 驚きと同時に、日本のスポーツビジネスの今後について、多くのことを考えさせられたニュースだった。(記者コラム・久保 阿礼)

1985年1月15日のラグビー日本選手権、新日鉄釜石が同志社大を破り7連覇を達成。主将兼監督の松尾雄治は優勝で引退を飾った
7月30日、メルカリが鹿島の経営権を獲得し会見
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