女子プロ野球存続へ、必要なのは「わかさファースト」から脱却する覚悟

26日の会見で女子プロ野球の窮状を訴えた太田幸司氏(カメラ・軍司 敦史)
26日の会見で女子プロ野球の窮状を訴えた太田幸司氏(カメラ・軍司 敦史)

 10年目の女子プロ野球が存続の危機に直面している。今季日程の3分の2を消化した現在の動員数は4万781人と、昨年同時期に比べて約2万人減少。1球団当たり年間2億以上の経費に対し売り上げは5000万円前後(昨年実績)と赤字が続いており、26日に行われた会見では、元三沢高エースで日本女子プロ野球機構のスーパーバイザーを務める太田幸司氏(67)が「厳しいけれど、死にものぐるいで何とか来シーズンも続けたい」と新たな企業の参加を呼びかけた。

 「女子プロ野球」と称しているが、実態はサプリメント販売のわかさ生活(京都)が10年から始めた、同社と契約した約70人の選手が京都、愛知、埼玉の4チームに分かれて争う“事業所対抗戦”。シーズン中には移籍(人事異動)の名のシャッフルも行われる。日本野球連盟(JABA)や日本野球機構(NPB)とは無関係の独立リーグだからできる“ローカルルール”の是非を問うつもりはないが、これだけははっきりしている。女子プロ野球が歩んだこの10年間に日本の女子野球界は大きく飛躍したことだ。

 女子硬式野球部を持つ全国の高校は5校から37校(準備校含む)へ、アマ中心に編成される日本代表「マドンナジャパン」は女子W杯6連覇と世界最強。いまや豪州やアジア各国から野球留学してくる選手もいる、世界一の女子野球先進国となった。もちろん女子プロ野球だけのおかげではないが、女子野球の発展を願ってこれまで100億円を投じてきた、わかさ生活が果たした功績も大きいだろう。

 日本女子プロ野球機構では、現在4チームの“わかさ資本”チームを減らし、空いたチームのオーナーとなってくれる企業を募集するという。彦惣(ひこそう)高広代表理事は会見で「公益性、社会性を上げて何とかリーグを存続させたい。そのために協力いただきたい。一緒に女子野球発展の理念を目指していきたい企業なら方法は問わない」と呼びかけた。一方で社会人チームなどが選手ごと参加することは想定しておらず、リーグのレベルを保つために現在いる各チームの選手を再編、「わかさ生活でやらせていただいているので、配慮しながら、ある程度(有力選手を)プロテクトして、その選手以外でうまく分配していく」と語った。

 機構は14年に一般社団法人化しているが、彦惣代表理事も元わかさ生活の従業員。1社だけで運用してきたので「わかさファースト」になるのは自然な流れなのかもしれないが、先の言葉も「リーグを助けてください。でも優勝は“わかさチーム”でさせていただきます」に聞こえる。一方のアマ女子野球界ではここ数年、警備や介護業界などの実業団チームが相次いで参入し、働きながら野球を続ける環境がますます充実。皮肉にも女子プロ野球を退団しアマチームに活躍の場を移す例が後を絶たない。

 「(発足当時の)2チームに縮小しても存続したい」と太田氏は切実な思いを明かすが、現段階で具体的に動いている話はないという。アマ女子野球界の良い流れがある中で、あえて女子プロ野球に出資する企業や地域が出てくる見通しは厳しいと言わざるを得ず、その上で「わかさファースト」が貫かれるのならなおさらだ。

 わかさ生活の長年の貢献が女子野球発展の一因になったのは間違いない。しかし女子プロ野球リーグが今後も存続するためには、「わかさファースト」から脱却できるか、その覚悟が問われている。(記者コラム・軍司 敦史)

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