山口茜、不滅のバド愛「五輪出られませんより、一生プレーできませんと言われる方が嫌」

スマッシュを放つ山口茜。東京五輪での活躍が期待される
スマッシュを放つ山口茜。東京五輪での活躍が期待される

 20年東京五輪でメダル量産が期待されるバドミントンは、出場権争いの中で最重要となる世界選手権が19日からスイス・バーゼルで開幕する。女子シングルス世界ランク1位の山口茜(再春館製薬所)がスポーツ報知の単独インタビューに応じ、自身の五輪観や競技観を明かした。7月のインドネシア・オープン(OP)とジャパンOPで連続優勝を飾り、初の世界選手権制覇へ期待が膨らむ22歳の素顔に迫った。(取材・構成=細野 友司)

 山口は1年後に東京五輪の本番会場となる武蔵野の森総合スポーツプラザで行われたジャパン・オープンで6年ぶりに優勝。奥原希望(24)=太陽ホールディングス=との日本勢決勝を制し、上昇気流に乗って世界選手権へ乗り込む。昨年の銅メダルを上回る結果が使命だ。

 「過去の自分に負けたくない、という気持ちがある。去年は4(強)だったので、とりあえず決勝ですかね。去年(銅)メダルを取れたにしては、納得できていない部分があるので、まずは納得いく終わり方をしたいですね。“消化不良”じゃないけど、メダルを取れたのに、自分の中で思ったようなプレーができなかったイメージがあるので、それを超えたいですね」

 7月30日付の世界ランクで約1年3か月ぶりに1位に返り咲き、自身初の世界王座も視野に入っている。大舞台で一球一球を全力で追い続けるスタイルには、信念が込められている。

 「自分の100(%)が出せて負けたら、それもそれでいいや、と思っている。そこまで出せれば、試合中に『やりきったな』と思う時も結構あって。ここまでできたから、あとはもう勝っても負けてもいいや、というような時は、正直言って試合中にもあるんです」

 相手の厳しい返球にスライディングしながらレシーブを試み、疲れて大の字に寝そべってしまうまで足を動かす時も多々ある。必死なプレーが観客へ訴えかけ、勝負強さにもつながる。

 「いい試合って、負けた人が頑張ったからいい試合になった、みたいなのがあるじゃないですか。もちろん勝ったらたたえられるけど、負けても褒めてもらえるかな、って。そういう感じになった時の方が、最後に勝っていることも多いですしね」

 3年前、19歳で初出場したリオ五輪では準々決勝で奥原との日本勢対決に敗れた。試合後は涙もあふれたが、素直に次へと生かせる気持ちも湧いていた。

 「全力を出せたと思っているし、ベスト8も結果としては悪くないと思っていた。試合直後のインタビューは泣いてしまったけど、個人的には満足感もあったし、全力出して負けたからしょうがない、という気持ちもあった。悔しいという気持ちも次に生かせたのかなと思う。リオはリオで良かったのかな、という感じです。日本人対決とかは関係なく、全力を出し切った感じがあったので」

 3学年上の奥原とは、代表で切磋琢磨(せっさたくま)する良いライバル関係を築いている。国際大会では通算8勝11敗。試合だけでなく、年間約250日にも及ぶ代表合宿期間中に刺激をもらえるのは、貴重な成長の糧になっている。

 「普段の練習や合宿中とか結構、妥協しやすいタイプで…。奥原さんは自分に対して厳しいので、自分が『あ~(キツい)』となった時に、引っ張られて助けられている部分があります。自分は性格的に引っ張るタイプの人間ではない。そういう(奥原のような)存在が上にいるのは助かっている部分がすごくあると思います。遠征中は一緒にご飯に行ったりしますし、練習を離れると結構フランクで楽しくやってくれています」

 兄の影響で、5歳で本格的にバドミントンを始めた。小学生時代から全国大会優勝を重ね、福井・勝山高2年時に全日本総合選手権も制した。“天才”の名をほしいままにした少女は、目前の小さな目標をクリアし続けて成長してきた。

 「目標が『五輪で金メダル』ではなかったんですよね。高校生の時までは『あのコーチに勝ちたい』とかで、目に見える結果を目指したことがなかった。だから(大きな大会で負けて)これじゃダメだ、となることもなくて、大きい挫折がない順風満帆なバドミントン人生を歩んでいると思っています。ただ、小さな悔しさは常にたくさんあった。それを大切にできたから、続けてこられたのかなと思っています」

 純粋に羽根を追うのが好きで、ここまできた。世界ランク1位を極め、絶好調の今だからこそ一番怖いのは、けが。好事魔多し―。そんな言葉もある。

 「調子がいい時ほど、いつけがをするんだろう、と思って気をつけてやっています。中学生や高校生の頃に比べたら、急にコートに入らず体幹や肩回りに刺激を入れたりするようになりました。今まであまり大きなけががないのは、才能というか遺伝というか、両親に感謝ですね(笑い)」

 残り1年を切った東京五輪も、まずは全力で楽しむことが最優先にある。バドミントン愛は、五輪観にさえ影響を与えるほど熱い。コートで体現する姿は必ず観客を引きつけ、そして結果につながるはずだ。

 「東京は特別だと思う。良いプレーもしたいし、メダルも取れるものなら取りたい。見てもらう人により楽しんでほしいし、自分も楽しみたい。出て空気を味わって、自分が納得する形で終わったらいいかなという感じです。今、何かが起きて『東京五輪出られません』と言われるより、今けがして『一生バドミントンできません』と言われる方が嫌かなと思う。まだ22歳なんですけど、人生を終わってみれば、東京五輪さえも『あぁ、そんなことあったなぁ~』って思うんだろうなとすごく感じるので。まずは自分が楽しまないとな、とは思っています」

 ◆バドミントン女子シングルスの東京五輪への道 全体の出場枠は38。19年4月29日から20年4月26日までの国際大会で得たポイントによるランキング上位に出場枠が与えられる。国・地域別の最大枠は2だが、同一の国・地域から2人が出るためには、両者ともにランキング16位以内に入っていることが必要。

 ◆山口 茜(やまぐち・あかね)1997年6月6日、福井・勝山市生まれ。22歳。兄の影響で5歳から競技を始める。福井・勝山高時代の2013年ジャパンOP日本人初優勝、14年全日本総合で史上4人目の高校生優勝。16年リオ五輪は8強。18年4月に女子シングルスで日本勢初の世界ランク1位。同年世界選手権銅メダル。156センチ、55キロ。

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