御嶽海の大銀杏を結う床力 “髪ワザ”でかなえる夢とは

御嶽海(右)の大銀杏を結う床力
御嶽海(右)の大銀杏を結う床力

 大相撲力士の象徴でもある「まげ」。艶やかにまとめられた髪は、フワッとびんづけ油の甘い香りがする。関取(十両以上の力士)になれば、大銀杏と呼ばれる髪結。芸術的とも言えるこの大銀杏は、床山と呼ばれる職人によって結い上げられる。

 出羽海部屋に所属する床山、床力は、部屋の関脇・御嶽海(26)の大銀杏を結う。入門9年目の26歳。「自分のやりたいことをやれています」と、大きな二重の目尻を下げる。

 本名・梅田力也。小学5年の時、大相撲に興味を持った。「何でも見たくて、テレビにかぶりついた」。床山という仕事に初めて触れたのもテレビ。「千秋楽の支度部屋で、床山さんが髪を結ってる姿を見て、かっこいい。この仕事がしたいなって」。中学入学の頃、既に角界入りを心に決めていた。

 相撲界とは縁の無い家庭に育ったが高校2年の冬、知人の紹介で出羽海部屋を訪れた。そこで当時の部屋の床山で、後の師匠・床安と、先代の出羽海親方に「床山になりたいです」と直談判。熱意が伝わり、卒業後の2011年名古屋場所に、入門が許された。

 以降は猛練習の日々。「ほぼ毎日。部屋の力士に頼んで2時間くらい、まげを結う練習をしていました」。師匠からは、一から段階を踏んだ指導を受けた。毛の癖をとるために水を付け、もむ作業。油の付け方からくしの通し方まで一つ一つを、吸収していった。1年後には、大銀杏を結えるまでに上達。異例とも言える速さだった。

 「100点の大銀杏は今まで無い」という。御嶽海が座った姿勢の時間をなるべく減らすため、限られた時間の中できれいに仕上げなければならない。師匠からは「関取が早くしてくれと言うのだったらする。その中でうまくやるのは、俺らの技術次第」と教えられた。例えば急いで「もみ」の行程をおろそかにすると、癖が残って毛が真っすぐにまとまらない。だから急ぎながらも丁寧さを大切にする。

 床山人生で最高の瞬間が訪れたのは、御嶽海が幕内初優勝を果たした昨年の名古屋場所。支度部屋で御嶽海の大銀杏を整える自身の姿は、幼い頃にテレビで見た姿だった。「鳥肌というか、これをやりたかったんだと。自分の目標は2つ。優勝力士の大銀杏をやることと、横綱・大関をやること。その一つがかなって」。わき上がる興奮を抑えながら、髪を結った。

 実は御嶽海の優勝でかなった夢も、後悔が一つだけ。「緊張して、失敗したんですよ」。仕上がった大銀杏の形に、納得がいかなかった。「だからリベンジしたい。御嶽関には、最低でもあと一回は優勝してもらわないと」。その時まで腕を磨き続ける。

 現在9年目で、階級は4等。一つの目安としては、勤続20年以上で2等床山の資格を得て、協会内でも資格者として認められるという。最高位は特等床山と呼ばれ、勤続45年以上、60歳以上で特に優秀な床山がなれる。「まだ9年目。4等床山なので。年数が上がっていくごとに、その年数以上の仕事が出来るようになりたい」と床力。またいつか来る最高の瞬間を夢見て、今日もまげを結う。(大谷 翔太)

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