江戸時代を代表する浮世絵師・葛飾北斎の生涯が、俳優の柳楽優弥(29)、田中泯(みん、74)のダブル主演で映画化されることが6日、分かった。映画「HOKUSAI」(橋本一監督)として、生誕260周年を迎える来年初夏公開。海外映画祭への参加、海外配給を目指していく。
北斎は、90歳で生涯を閉じるまで3万点以上の作品を発表。晩年は「画狂老人卍」と名乗り、画業に捧(ささ)げた。来春に導入される新パスポートの査証欄に代表作「富嶽三十六景」が印刷され、24年度発行の新千円札の裏面には「富嶽三十六景 神奈川沖浪裏」が採用されるなど人気は根強い。
今作は構想3年。数少ない史実をもとに、独自の視点と解釈によるオリジナル脚本で描く。青年期から壮年期までの北斎を演じる柳楽は、さまざまな資料に目を通し、監督と話し合いを重ねて役作りした。「知られていないからこそ、僕たちで『北斎像』を作り上げていこうと臨めたのは、楽しくやりがいを感じた。壁にぶち当たりながらも、徹底的に追求する『好きこそものの上手なれ』という、ことわざを体現した世界的スター。売れない時期、苦しい時代があったことも知れてうれしかったし、夢を感じた」と話した。
老年期以降の田中は「私自身が差し掛かっている年齢でもあり、とんでもないタイミングでお話がきたな、とご縁を感じた」と感無量。「彼のような才能をこれっぽっちも持っていない人間ですが、世の中に対する、耐えられないものを持ち続けて生きていることには共感した。北斎のいくつもの重要な言葉が分かると、単に絵だけで評価されているわけではないと分かると思う」とコメントした。
◆阿部寛に瑛太、玉木宏も共演
阿部寛(55)が北斎を見いだした版元の蔦屋重三郎役、瑛太(36)が老年期の北斎とタッグを組む戯作者の柳亭種彦役、玉木宏(39)が、北斎がライバル視する美人画の大家・喜多川歌麿役を務める。阿部は「今でいうプロデューサー。北斎や歌麿など、さまざまな才能を集め、自身の手で育てる先見の明を持ち、新しいことを作り出した人物。面白い役でした」。玉木も「ちょっとしたエロチシズム、ちょっと危うい感じになればと思った」と話した。
◆葛飾 北斎(かつしか・ほくさい)1760年(宝暦10年)に江戸の本所割下水(現・墨田区亀沢)生まれ。江戸時代後期の浮世絵師で、化政文化を代表する1人。90歳で亡くなるまで3万点以上を発表。代表作に「富嶽三十六景」「東海道五十三次」「北斎漫画」。大自然の絶景や大胆な構図の風景画、世相、四季折々の花鳥風月などの作品を残す。一つの場所に居を構えず、90回以上引っ越しを繰り返したとされる。モネやドガ、ゴッホらに影響を与え、西洋近代絵画の源流になった人物とされる。米雑誌「LIFE」の「この1000年で最も重要な功績を残した世界の人物100人」(99年)で日本人として唯一選ばれた。