武藤敬司と初代タイガーマスクのムーンサルトの違い…金曜8時のプロレスコラム

武藤敬司のムーンサルトプレス(2007年3月30日、後楽園ホールでの川田利明戦)
武藤敬司のムーンサルトプレス(2007年3月30日、後楽園ホールでの川田利明戦)

 今月30日に東京・後楽園ホールで開催される武藤敬司(56)プロデュースの「PRO-WRESTLEING MASTERS」で、昨年3月30日に両膝の人工関節設置手術を受けた武藤がマスターズのリングに復帰する。

 武藤はメインイベントで、馳浩(58)、獣神サンダー・ライガーと組んで、永田裕志(51)、中西学(52)、西村修(47)組と対戦することが決まった。昨年2月大会以来1年半ぶりのマスターズ参戦となるが、必殺技のムーンサルトプレスはもう見ることができない。

 医師から術後のムーンサルトプレスの封印を宣告され、手術前の昨年3月14日のWRESTLE―1後楽園大会で舞ったムーンサルトプレスが最後になった。今年6月26日の後楽園ホールで行われた長州力(67)の引退興行「POWER HALL2019~New Journey Begins」で1年3か月ぶりに復帰したが、低空ドロップキックでマットに落ちるだけでも痛々しく、ムーンサルトプレスが不可能であることを実感させられた。

 この現実を見越していたのが、5月10日に発売された「さよならムーンサルトプレス」(福留崇広著、イースト・プレス刊)だ。武藤の35年に渡るレスラー人生を振り返るノンフィクションで、手前ミソだが、著者の福留崇広記者(51)はスポーツ報知のプロレス担当。同書は昨年4月にスポーツ報知のホームページで34回にわたって連載した同名作を加筆して書籍化したものだ。

 新日本プロレス入門から公私にわたって慕ってきた坂口征二氏、闘魂三銃士の蝶野正洋、元UWFの前田日明氏、幻のSWS移籍に関わった若松市政氏、全日本への移籍を知る馳浩氏とケンドー・カシン、全日本時代の和田京平レフェリー、故マサ斎藤さん夫人の斎藤倫子さんら武藤のプロレス人生に深く関わった関係者およそ30人を取材し、昭和末期から平成のプロレスで必殺技「ムーンサルトプレス」を武器に日米のマット界でトップを走った武藤敬司の「真実」を浮き彫りにしている。

 連載時から一番目の読者(デスク)として読んだが、一気に引き込まれた。書店に並んでから28日目で3刷になるなど、売れている。「これ暴露本じゃないか」という面白い評価も聞こえてくるほど、書き切っている。グレート・ムタVSアントニオ猪木(1994年5月1日・福岡ドーム)、武藤敬司VS高田延彦(1995年10月9日・東京ドーム)などの名勝負やnWo、全日本プロレス社長としての苦悩まで武藤の35年は深い。

 マニアックな視点でうならされたのが、初代タイガーマスク(佐山サトル)のムーンサルトプレスとの比較だ。初代タイガーのムーンサルトプレスを旋回式と呼び、武藤のそれをバック転(縦回転)式としている。

 1982年5月26日のブラックタイガー戦(大阪府立体育会館)で初代タイガーは、ラウンディング・ボディプレスを初披露。そして武藤は凱旋帰国の1986年10月13日の藤波辰己(現辰爾)戦(後楽園ホール)でムーンサルトプレスをテレビ初公開した。

 バック転にあこがれた少年にとっては、旋回式で振り向きながらななめに回転する初代タイガーよりも、きれいに縦回転する武藤の方が、思い切りよく見えた。この違いは、見栄えや運動神経という理屈ではなかった。[両]膝への負担の違いだったのだ。

 「旋回式にした理由は、簡単です。バック転だと膝を痛めるなと思ったんです。マットに落ちた時の衝撃がモロに膝に来るんですね」初代タイガーの佐山氏から福留記者はこの証言を引き出して、しっかり裏付けを取っている。武藤が「オレに何も言わないで勝手に(取材に)行っているんだもん」とあきれるぐらい周辺取材を重ねている。

 3日の午後5時からは、東京・巣鴨のプロレスショップ「闘道館」で福留記者と元週刊プロレス編集長のターザン山本氏(73)が「武藤敬司とは何か?」と題したトークイベントを開催する。武藤がエースだった時代の新日本プロレスから取材拒否を受けたことがあるターザン氏からの評価もぜひ聞いてみたい。(酒井 隆之)

 ◆「PRO-WRESTLEING MASTERS」(8月30日、東京・後楽園ホール)

 ▼メインイベント スペシャル6人タッグマッチ

 武藤敬司、馳浩、獣神サンダー・ライガーVS永田裕志、中西学、西村修

 ▼スペシャル8人タッグマッチ

 スコット・ノートン、天山広吉、小島聡、ヒロ斎藤with蝶野正洋VS越中詩郎、AKIRA、青柳政司、斎藤彰俊withザ・グレート・カブキ

 ▼スペシャル6人タッグマッチ

 ドクトル・ワグナーJr.、ヒート、獅龍VS NOSAWA論外、MAZADA、FUJITA

 ▼スペシャルタッグマッチ

 グレート小鹿、タイガー戸口VS藤原喜明、大矢剛功

 ▼スペシャルシングルマッチ 

 佐野巧真VS高岩竜一

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