初めての夏を取材して分かった高知の“怪物1年生”森木大智の魅力

決勝の明徳義塾戦の6回無死、左越えにソロ本塁打を放ち、天を指さす高知・森木大智(カメラ・谷口 健二)
決勝の明徳義塾戦の6回無死、左越えにソロ本塁打を放ち、天を指さす高知・森木大智(カメラ・谷口 健二)
決勝の明徳義塾戦で3回から登板した高知・森木大智(カメラ・谷口 健二)
決勝の明徳義塾戦で3回から登板した高知・森木大智(カメラ・谷口 健二)
悔しそうに校歌を聞く森木大智(中央)ら高知ナイン(カメラ・谷口 健二) 
悔しそうに校歌を聞く森木大智(中央)ら高知ナイン(カメラ・谷口 健二) 

 いよいよ6日から令和最初の夏の甲子園が開幕する。全国から集まった49代表校による真剣勝負の幕が上がる一方で、多くの学校、多くの球児たちが聖地にたどり着けず涙をのんできた。私がこの夏、地方大会の全4試合でその姿を追ってきた高知の“怪物1年生”森木大智投手もその一人だ。

 「ほんとに1年生…?」。初めて森木の囲み取材に加わった時の率直な感想だ。何も悪い意味ではない、堂々としたたたずまいや、しっかりとした話し方、そして醸し出すオーラはとても高校に入学したての16歳には思えなかった。「夏の雰囲気にのまれて空回りすると、ダメだということが分かって良かったです」。背番号「1」を背負って迎えた高校最初の夏は、安芸との2回戦で代打としてデビュー。その後は本業の投手ではなく左翼を守り、2打数無安打に終わった。空回りしすぎて打ち損じてしまった、と言った後に残した言葉だ。試合直後にもかかわらず、なんて冷静に自分を分析できているのだろう。少し驚いた。

 また今夏から背負ったエースナンバーについても「付けたときは重みを感じましたが、先輩に『自信を持って投げろ』と言っていただいて、気持ちが楽になりました」と笑顔を見せ「目標は優勝ですが、先を見ずに一個一個勝っていくことが大事だと思っています。自分も気負わずに、全員で勝つということを意識しています」と自分のことだけでなく、チームのことを考えたコメントを残した。どんな質問に対しても迷うことなく的確に、そして真っすぐ前を向いて答える姿が印象的だった。

 次の高知東との準々決勝では、先発として初球でいきなり公式戦自己最速の148キロをマークした。中学時代に軟式で150キロを叩き出した実力をいきなり発揮したが、制球が安定せずボールが先行。試合が進むにつれて、徐々に落ち着きを取り戻したことについては「球が高めに浮いていたので、途中で右膝の折れ方を深くしました。そうしたらボールの高さがちょうどになりました。(投球前に行うスクワットは)下半身を意識して、こうやって投げるよって言い聞かせています」と振り返り、修正能力の高さを感じさせた。

 森木の修正能力については女房役の平尾暁大(3年)も「例えばカーブを投げてめっちゃ引っかかっていても、次の1球でカーブをしっかり決めてくる。1年とは思えないですね。どの球でも三振を取れるし、リードしやすいです」と証言。ちなみにサインについては「首を振りますね。ほしいボールが来るまでガンガン(笑い)。初めの方は特に振られていました」と笑ったが、代名詞とも言えるスピードボールだけじゃない、森木のすごさが分かった気がした。

 チームメートからは「大智」と呼ばれており、その素顔について平尾は「チームの中心的存在。僕たちに積極的に関わってきてくれたので、すぐになじみましたよ」と明かした。また大敷ののかマネジャー(2年)も「テンションが高くてみんなを笑わせてくれます。1年の中心的存在。野球になったら真剣で一生懸命ですね。空気が悪い時も人一倍声を出して盛り上げています」と教えてくれた。

 そういえば試合に出ていない時も、森木はいつもベンチの最前列で大きな声を飛ばしていた。この夏、試合が終わるごとに言っていた「みんなで勝つ」という言葉を自ら体現していたのではないだろうかと思う。

 自分で自分の悪いところを瞬時に分析できる修正能力の高さや、取材時のしっかりとした受け答えからも垣間見えるように、学校では成績優秀だという。中高一貫の高知中時代には、学年5クラス中2クラスしかない特進コースに在籍。中学1年時にはクラスに貼り出される成績ランキングの上位にも入っていたそうで、今も休み時間には野球の本を読む勉強家な一面も併せ持つ。

 高知大会では惜しくも決勝で明徳義塾に敗れた。中学時代から森木を指導する浜口佳久監督(44)は、当初森木を連投させないつもりだったが、雨の影響で日程がずれたため準決勝と決勝で連投せざるを得なくなった。もちろん連投を想定した練習も行ってはきていたそうだが、いかんせん金の卵であり、まだ硬式球を握って間もない1年生でもある。大船渡の佐々木朗希投手(3年)の例もあったように、今後の起用法に注目が集まるのは間違いないだろう。

 加えて高知大会では注目度の上昇とともに報道陣の数が増えた。決勝戦では22社約100人が高知・春野球場に集まり、内野スタンドも満員に埋まった。これには高野連側も、取材協力へのお願いを書いた紙を貼り出すなどの異例の策を取った。

 しかし「森木を伝えたい」報道関係者と「森木を守りたい」高野連の関係者が、報道方法について激しく意見を交わす場面もあり、現場には少しピリついた空気もあった。この大会では森木の取材については時間が決められ、高知高側が全て管理していたが、今後はさらに注目度が増すと予想される。どういった形を取るのが最も適切なのか、考えていく必要があると感じた。

 それでも帽子のつばに書いてある「強気」の文字のように、プロのスカウトに「悪いところがない」と言わしめたきれいなフォームから、150キロ近い直球を連発し、相手にぶつかっていく姿には多くのファンが酔いしれた。そして私も近い将来、甲子園のマウンドに立って活躍する姿を見てみたいと思った。決勝に敗れた後、口にした「この大会は3年生が与えてくれたプレゼント。野球をもっと楽しめるようレベルアップして、次の春は絶対甲子園に行きたい」という言葉を、ぜひ有言実行してくれることを楽しみにしている。(記者コラム・筒井 琴美)

決勝の明徳義塾戦の6回無死、左越えにソロ本塁打を放ち、天を指さす高知・森木大智(カメラ・谷口 健二)
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