女流将棋の“トップ・オブ・トップ”里見香奈が見た初めてのタカラヅカ「一体、どれだけの努力を…」

異業種からも様々な刺激を受けている、将棋の里見香奈女流名人(写真は7月12日のボクシング・村田諒太の世界タイトル戦会場で)
異業種からも様々な刺激を受けている、将棋の里見香奈女流名人(写真は7月12日のボクシング・村田諒太の世界タイトル戦会場で)

 今年2月、岡山・湯原温泉。将棋の女流名人戦で10連覇を達成した里見香奈女流名人(27)=女流王座、女流王位、女流王将、倉敷藤花=の祝勝会の席で、無敵の女王が「宝塚、見てみたいです!」と目を輝かせた。記者は宝塚歌劇担当で、時に将棋の取材もしている。V10のお祝いも兼ね、勝負の世界に生きる棋士を非日常空間にいざなうべく、頭を働かせた。

 宝塚ファンのみなさん、初心者の友人の“歌劇デビュー”をアシストするとしたら、どの組のどんな演目を勧めますか? やはり、ごひいきのスターの公演でしょうか。

 記者は長考の末、大事な棋戦と重ならないようにとの条件を加え、雪組の2本立てを選択した。1本ものだと、第1幕で世界観に入り込めないと少々厳しい。2本立てなら芝居とショーの両方の魅力を味わってもらえるし、雪組トップコンビ・望海風斗&真彩希帆の歌唱力で、宝塚のレベルの高さを知ってもらえるはず。

 かくして里見女流名人は、友人と一緒に6月下旬、兵庫・宝塚大劇場で「壬生義士伝」「Music Revolution!」を観劇。運よく、対局日に重ならなかった。宝塚はもちろん「舞台を見ること自体が初めて」。いつ、どこで対局が入るか分からないので、前売りチケットを買うことすらままならないのだ。いろんな意味で厳しい世界ですね。

 「壬生義士伝」は新選組隊士・吉村貫一郎が主人公のヒューマンドラマ。初心者に日本物は地味かな? と心配もしたが「坂本竜馬の漫画を読んでいたことがあって、時代背景としてはすごく好きでしたし、引き込まれるような感覚を味わわせていただきました」と報告してくれた。

 吉村は貧しい家族を救うために新選組に入り、命がけで金を稼ぐ。「当時って、生きていくのに精いっぱいの時代。今は当たり前に生活ができて、私も自分のしたいことができている。それがどれだけ幸せなのかも考えさせられました」と里見女流名人。望海もインタビューで「自分が生きていることのありがたみを感じ、今やれることをやりたいと思いました」と作品について語っていたが、さすが“トップ”同士、コメントも似ている。

 歌劇団は女性オンリーが最大の特色だが「(望海は)本当に男性のようでした」と感嘆。歌劇団屈指の美声にも「本当に実際に歌ってるんですよね? そう思うぐらいきれいで美しかった」と、乱れのなさに驚いた。ショーの「Music―」も「目まぐるしくてアッという間。時が経つのを忘れるぐらい魅了されました。最高の息抜きになりました」と笑顔。おススメしてよかった…と、記者もほっとした。

 タカラジェンヌは毎年、倍率20倍以上の狭き門を潜り抜けて音楽学校に入り、入団後も日々鍛錬を続けている。

 里見女流名人は、こちらも超難関の四段昇段(プロ入り)を目指して奨励会で奮闘した。昨年3月、26歳の年齢制限を迎えて奨励会を退会。夢は破れたが、最近は男性棋士を次々に撃破するなど研究の成果を発揮している。

 それだけに、観劇した際も“勝負師”の視線が混じった。「舞台を作るのに、どれぐらい練習期間があるのだろうということに興味がわき、気になりました。見て楽しかったのはもちろんですが、この日のために、どれだけの努力をされているのか。それを勝手に想像してしまうぐらい、素晴らしいものを見ました」。表現の形は違うが、見る者の心を震わせる“アーティスト”として、タカラジェンヌから刺激を受けたようだ。

 里見女流名人は7月には、ボクシング・村田諒太(33)の世界タイトル挑戦も生観戦。「日頃の練習の成果を本番で発揮できる精神力がすごい」と、こちらも感動していた。8月3日に始まる新設タイトル「清麗戦」5番勝負を制して史上初の6冠、そして女王を奪還しての7冠全制覇へ。異業種の“夢追い人”のエネルギーを注入し、さらに強さを増していきそうだ。

(記者コラム・筒井 政也)

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