甲斐智美女流五段「将棋は苦手でした」 謎に包まれた実力者の清く麗しき素顔

「音楽は…バッハが好きですね。一度、佐藤会長(佐藤康光九段)が演奏されたバイオリンでも、すっかり引き込まれました」とも語った甲斐智美女流五段
「音楽は…バッハが好きですね。一度、佐藤会長(佐藤康光九段)が演奏されたバイオリンでも、すっかり引き込まれました」とも語った甲斐智美女流五段
2015年度の倉敷藤花戦で里見(左)と対戦した甲斐。4年ぶり13度目のタイトル戦となる
2015年度の倉敷藤花戦で里見(左)と対戦した甲斐。4年ぶり13度目のタイトル戦となる

 新女流棋戦「ヒューリック杯第1期清麗戦」の初めての5番勝負が8月3日、東京都港区で開幕する。史上初の女流6冠を目指す里見香奈女流名人(27)=女流王座、女流王位、女流王将、倉敷藤花=と激突するのは、タイトル通算7期を誇る甲斐智美女流五段(36)。メディアに登場する機会が少なく、どこか謎に包まれている実力者の素顔に迫った。

 夏の日差しの下で、日傘と遮光手袋姿の甲斐は言った。写真撮影のため、地元にある川沿いの舗道を歩いている時だった。「春になると、とっても奇麗な桜でいっぱいになる場所なんですよ。隣の駅までずーっと」。草花によって季節の移ろいを感じ、食材は旬にこだわる。「確かに…五感を大切にしている、というところはあるのかもしれません」。独特のエレガンスを持つ女流棋士は涼やかな表情を浮かべた。

 音楽はバッハ、美術はフェルメールを愛する人は、ファッションにも独自のこだわりがある。女流棋界には「本当にオシャレなのは甲斐さん」との定説がある。本人に問うと「いえいえ…そんな…」と恐縮されたが、返ってきた答えになるほどとうなった。「生地が好きなんです。良い生地を見つけたら、仕立て屋さんでデザインを相談するのが楽しくて」。オーダーメイドでしつらえるだけではない。「化学繊維は着心地が良くないので天然素材しか着ません。今、デザインはかわいくても品質の悪い洋服が多いんです。嫌なことはしないで、好きなことは追求するタイプなのかもしれないです」

 今期、7つめの女流タイトル戦として新設された清麗戦。女流棋界の第一人者の里見と歴代6位のタイトル通算7期を誇る甲斐が相まみえる。里見は過去42度のタイトル戦で6度しか負けていないが、唯一2度下したのが甲斐。本棋戦予選でも勝っている。「里見さんは駒が手足のように、一体になった将棋を指す。研究が深くて決断力もある。厳しさが全く違うので、とても勉強になりますし、引っ張られます」。里見は格闘技観戦に心を躍らせる闘士。正反対の両者による最高の舞台となる。

 羽生善治九段(48)らを輩出した名門道場「八王子将棋クラブ」で男子と競い合って鍛錬を積み、唯一の出身女流棋士になった。「才能も自信もなくて、ずっと将棋は苦手でした。苦手だから、もうちょっと頑張ろう、もうちょっと、もうちょっと…って克服しようとしてきて、気づいたら今になっていたような感覚なんです」

 変化を実感するのは、なんと最近になってから。「将棋を指していて、みんなってこんなことを考えてたんだ~、へ~みたいな瞬間があるんです。人ってさまざまで面白いですよね。今は、自分のイメージを指し手に表す将棋を指せたら、もうちょっと楽しいかもしれないなって思います」

 最近はどんな芸術に興味があるのか、と問うとクスッと笑った。「今は…ちょっと将棋で忙しいかなあ」。穏やかな人による激しい勝負の時が近づいている。(北野 新太)

 ◆格闘好き里見女流名人

 史上初の女流6冠を目指す里見は「注目していただけるのは光栄なことなので力を出し切りたいです」と抱負を語る。甲斐について「ゆったりとした棋風でありながらスキを見つけると一気に攻める将棋を指されます」と警戒しながら、人柄を「気さくで優しい先輩です。美術館が好きと以前おっしゃっていたので私とは正反対ですよね…」。今月12日には、ボクシングWBA世界ミドル級タイトルマッチで村田諒太(33)の王座奪還を生観戦。「見て感じたことを自分の将棋にもつなげられるようにしたいです」。ファイティングスピリットを胸に偉業達成を目指す。

 ◆甲斐 智美(かい・ともみ) 1983年5月30日、石川県七尾市生まれ。36歳。中原誠十六世名人門下。将棋観戦記者の父・栄次さんの影響で小学5年の頃、将棋を始める。97年、女流棋士に。98年、女流棋士を休場して奨励会へ。1級まで昇級して2003年に退会。10年、初タイトルの女王を獲得。13年の王位戦予選では当時順位戦A級の深浦康市九段に勝利して話題に。15年、神奈川文化賞受賞。本紙主催・女流名人リーグ在籍中。居飛車も指しこなす振り飛車党。

 ◆清麗戦(せいれいせん) 

 新しい女流棋戦として今期誕生した。タイトル保持者は「清麗」を名乗る。予選は6勝通過、2敗失格の変則方式。甲斐は予選で里見、伊藤沙恵女流三段、香川愛生女流三段ら強豪を連破し、本戦で中村真梨花女流三段を破って5番勝負出場を決めた。5番勝負の持ち時間は各4時間。

「音楽は…バッハが好きですね。一度、佐藤会長(佐藤康光九段)が演奏されたバイオリンでも、すっかり引き込まれました」とも語った甲斐智美女流五段
2015年度の倉敷藤花戦で里見(左)と対戦した甲斐。4年ぶり13度目のタイトル戦となる
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