エリートじゃなかった “挫折”を経て成長を続ける巨人・山下航  

巨人・山下航汰
巨人・山下航汰

 育成から支配下登録を勝ち取った巨人のルーキー、山下航汰外野手(18)。プロに入るまでの実績を見ると「THE エリート」だ。柏原小3年から野球を始めると、めきめきと上達。柏原中では「羽曳野ボーイズ」に所属し、3年時にジャイアンツカップ優勝。高崎健康福祉大高崎高では1年春からベンチ入りし、同年夏から4番の大役を担い、高校で描いたアーチは75本。強打でチームを幾度となく勝利へと導いてきた。

 それでも現実は厳しかった。名実ともに高校球界を代表する選手だったが、ドラフトではまさかの育成指名。一塁と左翼を守るが、その守備が発展途上ということもあり、支配下契約には至らなかった。「(育成での契約に)悔しさしかなかった。周りは喜んでくれたんですけれど、自分としてはこのままでは絶対にいけないと思った」と語るように、プロ入り後も慢心は一切なかった。

 順風満帆にプロの扉を開いていたと勝手に思っていた。だが実は、高校時代も苦しさを味わっていた。「2年のセンバツ後に関東大会でベンチ外になったんです。けがとかでもないのに、初めてベンチから外れました。打撃の調子が悪いのもあったんですけど、監督から『打てないだけでは落とさない。何で落とされたか考えろ』って言われて」。その時のセンバツと言えば2年生では史上初となる1大会2発の満塁弾を放ち、強烈なインパクトを残した大会。その直後にBチーム降格を味わったという。

 答えはすぐ分かった。メンタル面の弱さ。「気持ちの面で負けてるというか。打てなかったら態度に出ちゃうとか、そういうのがあった。自覚はあったんです。そういうとこかなと思って」。すぐさま監督に思ったことを報告。それでもすぐAチームに戻れるほど甘くはなかった。「報告に行っても『おまえの力で這い上がってこい』って言われて。その期間はBチームのキャプテンやったんですよ。何をやっても違う、違うって言われて。泣きそうでした」。

 野球人生で初めてと言っていい“挫折”。どん底に沈んでいた時、周りの仲間の励ましが何よりうれしかった。「『おまえはできるから』って、当時同学年だった2年生のベンチ外の子がいろいろ励ましてくれて。(1学年上で現巨人の)湯浅さんも『なにしてんねん、早く上がってこいよ』って言ってくれて。すごくうれしかったし、Bチームにいてはダメだなと思ったんです」。その後Aチームに戻り、「控えの選手の分までもっとやらないと」と白球を追い続けた。

 プロ入り後の春季キャンプも3軍スタート。同じ育成選手やルーキーとともに汗を流した。それでも打撃能力は群を抜いていた。2軍に昇格すると、代打で出場する機会が増えたが「これまで代打での出場はほぼなかった。ほとんどスタメンで使っていただいていたので。戸惑いとかではないですけど、1打席しかない難しさは感じます」と漏らしていた。堂上ファーム打撃兼外野守備コーチに「初球から積極的に振ることが大事。状況にもよるけど、それは忘れちゃいけない」と説かれた山下航。「当たり前のことではあるんですけど、それで少しいろいろ考えてたものが吹っ切れた気がします」とスタメンで打席に立つ今でもこの心得を忘れない。

 それからは2軍でスタメンに定着。クリーンアップを担うまでになった。24日現在、イースタンで64試合に出場し、打率3割1分6厘、4本塁打、21打点と1年目とは思えぬ成績を残す。高田誠2軍監督も「2軍で一番バッティングがいい」と最大級の賛辞を惜しみなく贈るほど。だが、どれだけ成績を残そうと、「そんな、自分なんてまだまだですから」と謙遜する。このセリフをすでに何回聞いたことだろうか。

 入社1年目の夏、高校野球研修で3年生だった山下航を取材したことがある。目の前で、群馬県大会最多本塁打記録だった2000年の前橋工・狩野恵輔(元阪神)の4本を更新する5戦連発を目の前でかっ飛ばした。スタンドを駆け回り、関係者へ話を聞き、人物像に迫った。そのときの仲間も、プロ入り後の仲間も、口をそろえて「航汰は真面目」と語る。どんな時でも決して満足はしない。この謙虚な性格こそ山下航の強みの一つなのだろう。

 支配下登録の会見後、G球場で「支配下登録おめでとう」と声をかけた。その際に「まだまだこれからですから。スタート地点に立っただけです。これからもよろしくお願いします」と頭を下げられた。山下航のサクセスストーリーを、今後もこの目で追っていきたい。(巨人ファーム担当・河原崎 功治)

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