テレ東社長も「必ず実現したい」と続編制作宣言…大ヒット「きのう何食べた?」の魅力とは

「きのう何食べた?」でゲイ・カップルを演じた内野聖陽(左)と西島秀俊。絶妙のキャスティングが大ヒットを生んだ
「きのう何食べた?」でゲイ・カップルを演じた内野聖陽(左)と西島秀俊。絶妙のキャスティングが大ヒットを生んだ
深夜ドラマの域を超えた話題作「きのう何食べた?」で復活を狙うテレビ東京
深夜ドラマの域を超えた話題作「きのう何食べた?」で復活を狙うテレビ東京

 6月28日に最終回を迎えた令和最初の「バズった」(口コミで人気が広く拡散した)ドラマの勢いが、ますます加速している。

 西島秀俊(48)と内野聖陽(50)のW主演ドラマ「きのう何食べた?」(金曜・深夜0時20分)が最終回で同ドラマ最高タイの平均視聴率3・7%で有終の美を飾った。

 「大奥」などで知られるよしながふみさんの累計500万部突破の人気コミックが原作。2LDKのマンションで月2万5000円の食費で暮らす弁護士のシロさんこと筧史郎(西島)と美容師のケンジこと矢吹賢二(内野)というアラフォーのゲイ・カップルの日常を淡々と描く作品は深夜帯では異例の全話平均視聴率3%台を記録した。

 北海道地区では6%超も記録するヒット(数字はビデオリサーチ調べ)となり、TVerやGYAO!などの広告付き動画配信の再生回数では4月クールの民放全テレビ番組の中で堂々トップに。同局史上初めて1~11話(最終回の12話は未集計)までの再生回数が全て100万回超え。11話までの総計で再生回数1360万回という、こちらも同局のドラマ史上最高の数字をたたき出した。

 4日、東京・六本木の同局で行われた小孫茂社長(67)の定例会見でも「何食べ」関連の質疑がヒートアップした。何よりファンが切望する「社長が以前から口にしていた続編制作の実現性は?」という質問が当然のように出た。

 「私は実現性のないことは記者会見で言わない主義です。実現性があると思って、口にしております」と言い切った小孫社長。続けて「視聴者の皆さんの声は私にも届いております。もちろん関係者にも届いていると思っております。どこの時期になるかは分かりませんが、必ず実現したいと思っています」と続編制作宣言まで飛び出した。

 「必ず実現」という言葉は原作からの大ファンだった家族と全12話中10話をリアルタイム視聴。「あの名ゼリフがカットされていた」「あの場面は原作より良かった」などなど感想を言い合いながら、充実の家族だんらんタイムを過ごした私の胸にもズドンと届いた。

 だが、同時に疑問も沸いた。「何食べ」ヒットの一因として誰もが上げるのが「ドラマ史上最高のキャスティング」とされる西島、内野のそろい踏み。特に「かわいくて、乙女チックな中年ゲイ」ケンジに完璧になりきった内野には「内野、凄過ぎ!」と、その演技力を絶賛する声があふれた。さらにゲイ友・小日向さん役の山本耕史(42)らNHK大河も真っ青の豪華キャストを集められたことも大きかった。原作者のよしながさんも大満足とされる1人1人が超多忙な、このキャストを再び集められるのか。そう思ったから、そのまま聞いた。

 「社長がそこまで言うからには続編制作は実現すると思います。ただ、西島さん、内野さんらのスケジュールを押さえられるのか? 何年越しのオファーが必要な俳優たちに対して、すでに出演オファーなどの動きは開始されているのか」―

 私の前のめり気味の質問にニヤリと笑った小孫社長は「されていなければ、社長ごときが願望を記者会見で言うわけには行きませんので…。その辺も踏まえて、私は発言しているつもりでございます」と、こちらを見つめてきっぱり答えた。

 以前からドラマ化前からの原作ファンだったことを明かしていた同社長。この日も「私自身が全国で5本の指に入る視聴者側のファンだと思っています」とほほ笑んだ上で「ちょっと願望が行き過ぎている面は差し引いて受け止めていただけるとありがたいのですが、やるべき行動は担当の方で取っていると聞いております。ただ、先方さんのご希望もありますので」と具体的に制作に乗り出していることまで明かした。

 さらに舞台セットの再現や使用された小道具、名シーンの場面写真や原作コミックの複製原画などを展示した「きのう何食べた?」展(7日まで)が30分入れ替え制での開催にも関わらず、大人気だったことに触れ、「私の想定をはるかに超えた人気になって一部の商品が一時的に品切れになって、ご迷惑をかけたかと思います。この後、東京だけでなく他でもやろうと言う発想は持っています」と同展の地方開催構想まで明言。

 「今度はBSテレ東で7日に放送を開始します。見逃した方はBSテレ東で」と一宣伝マンと化して話した。ついには「こういう形で視聴者の心に届いた番組に関しては、いろいろな形で露出を増やしていくという基本方針にしております」と今後、「何食べ」で勝負していく考えまで表明した。

 思えば熱い3か月だった。4月の第1話放送直後には「きのう何食べた?」がツイッターの世界トレンド1位になった。第5話でケンジが袋ラーメン「サッポロ一番」を加工、絶品メニューに昇華させたエピソードの放送直後にはドラマに登場した「サッポロ一番みそ味」が売り切れとなる社会現象まで起きた。

 第8話の最後に「来週の放送はテニス全仏オープン放送のため休止します」というテロップが流れたとたん、番組ツイッターには「来週休止…。この世の絶望を見た」「マジか…。来週1週間、何を楽しみに働いたらいいのか」という視聴者からの悲嘆の声があふれたこともあった。

 私も定例会見で何度も「何食べ」について小孫社長に質問し、それこそ「おいしい」返答をもらうたびにコラムを書いた。それらは私の他の文章より明らかに多く読まれ、明らかに熱いコメントが殺到した。ドラマ史に確実に残る名作と伴走しているようで個人的にうれしかった。

 だから、最終回のオンエア直後にネットにあふれた「あ~あ、金曜夜最大の楽しみがなくなってしまった」「来週から何を楽しみに1週間生きていけばいいのか」などの“何食べロス”の声も心の底から理解できた。

 4月クールの平均視聴率で全日(午前6時~深夜0時)2・5%、ゴールデン帯(午後7時~同10時)6・0%、プライム帯(午後7時~同11時)5・5%と、全て民放最下位にあえぐテレ東にとって、まさに救世主的存在となったのが、「何食べ」だ。

 「夢よ、もう一度」とばかりに早くも続編制作の意思を明らかにした小孫社長は4月の会見でも、こう口にしていた。「こういうセンスがテレビ東京を支えていくんだな」―。そう、西島、内野の絶妙のキャスティングに、誰もが幸せな気分になるオープニングとエンディングの音楽。「飯テロ」とまで言われた主人公2人がつくるおいしそうな料理の数々。さらに偏見の目で見られるゲイ・カップルの日常を美化するでもなく、へりくだるわけでもなく、淡々と描いた脚本の力。「何食べ」には、ヒットするための数々の魅力が確かにあふれていた。

 作り手が本気で作ったセンスあふれる1本のドラマが一つのテレビ局を救うだけでなく、この世の中を幸せにすることだってある。「何食べ」との3か月を過ごした私は今、そんなことを思っている。(記者コラム・中村 健吾)

「きのう何食べた?」でゲイ・カップルを演じた内野聖陽(左)と西島秀俊。絶妙のキャスティングが大ヒットを生んだ
深夜ドラマの域を超えた話題作「きのう何食べた?」で復活を狙うテレビ東京
すべての写真を見る 2枚

コラムでHo!とは?
 スポーツ報知のwebサイト限定コラムです。最前線で取材する記者が、紙面では書き切れなかった裏話や、今話題となっている旬な出来事を深く掘り下げてお届けします。皆さんを「ほーっ!」とうならせるようなコラムを目指して日々配信しますので、どうぞお楽しみください。

芸能

宝塚歌劇特集
NEWS読売・報知 モバイルGIANTS ショップ報知 マガジン報知 個人向け写真販売 ボーイズリーグ写真販売 法人向け紙面・写真使用申請