競輪世界女王・小林優香、東京五輪で金メダル「絶対に取る」

モスクワGPケイリンで優勝した小林優香
モスクワGPケイリンで優勝した小林優香

 ガールズケイリンのトップレーサーで、2020年の東京五輪自転車競技(トラック)出場、メダル獲得を夢見る小林優香(25)=福岡=の、19―20年シーズンが始まった。初戦はロシアで行われた3大会。トゥーラGPでは準決勝(3着入線)でまさかの走行違反で降格したが、モスクワGPケイリンでは昨年に続き、見事に金メダルを獲得。スプリントでも銀メダルに輝き、世界との差を縮めた。東京五輪にかける熱き思いを直撃した。(斉藤 宏治)

 優香がロシアの地に立った。ガールズケイリントップレーサーとして、ナショナルチームとして、小林優香の五輪への19―20年シーズンが始まった。「ケイリン」は世界共通。日本のお家芸であるが、女子プロレーサーが五輪に出場したことはいまだない。ホスト国として、悲願の出場を果たすとともに、夢であるメダル獲得へ加速させる。

 ロシアでの戦いは3大会。第1戦はトゥーラGP、第2戦はモスクワGP、3戦はサンクトペテルブルクGP。バンクの傾斜、直線の長さの違いや屋内外と、さらに中2日というタフな戦いだ。17年世界選手権チームスプリントで金メダリストのボイノワ(ロシア)、18年金メダリストのグラボシュ(ドイツ)、同年500メートルタイムトライアルの世界チャンピオン・シュメレワ(ロシア)ら、そうそうたる強豪が参加した。敵を知り、己を知る格好の機会でもある。「今、自分のレベルがどのくらいの地位、位置にあるか確かめる意味でも重要な大会でしたね」

 初戦のトゥーラ大会で“朋友”太田りゆが、いきなり名を売った。ケイリン、スプリントで2つの銅メダル。その勢いに押されたのか、皮肉にもスプリント3、4位決定戦で、小林は太田に敗れてしまった。「初戦は屋外の33バンクで、ガタガタしていたし、暑く40度くらいあって、気合も入っていなかった」

 しかし、すぐに修正。順応できるのが小林の真骨頂。「初戦の敗退があったからこそ」モスクワ大会は、らしさを爆発させた。昨年優勝したケイリンで2連覇を達成させたのだ。それも国内のレースで見せたことがないパフォーマンスを披露。直線で優勝を確信、ゴール前でガッツポーズをした。スプリントでも銀メダル。予選のタイムトライアルで前田佳代乃が13年記録したタイムを0秒2縮める、10秒814の日本新を更新した。

 「(ケイリンは)スピードも乗っていたので勝てたと思った。(モスクワは)メンバー的も世界選手権で活躍しているワールドクラスの選手ばかりなので、しっかりメダル、優勝が取れたのはうれしい。スプリントでもしっかり戦えることができた。(優勝した)シュメルワに勝てば、スプリントでも常連になれる。勝てない相手ではないと思ったことが、今大会を通じての収穫だと思う」。ロシアでの3大会は、大きな自信へとつながった。五輪に向け、世界との差を縮めた実感がある。

 だが、シーズンは始まったばかり。今後やらなければならないもの、足りない部分も多くあることは、小林が一番知っている。

 「よく足りないものとか聞かれるのですが、ネガティブなマイナス面を見るわけではない。今回はトゥーラから中2日でのモスクワでメダルを取れたことを重点的に見ていきたい」

 高校時代はバレーボールで五輪を夢見る毎日だった。でも、164センチの身長は、決定的に足りない。「運動には自信があったので」競輪選手になることを決心した。そんな時、運命も感じた。競輪学校卒業時に東京五輪が決定したのだ。「実はガールズケイリンに入ったのも、ロンドン五輪の男子のチームスプリントを見たからなんです。ケイリンなら自分も五輪に行ける」。優香の心に、再び出たい思いが高鳴った。絶対、手にしたいチャンスだと。

 ナショナルチームのブノワ代表コーチとは、密接な信頼関係を築いている。そして、指導は上から目線ではなく、フレンドリーさもあり、意見交換が多い。

 「そうですね。ブノワには一番、怒られていますね(笑い)。これをやれとかではなく、(優香は)どう思う、どうやる、というような聞き方をされる。私に向いている指導法だと思います」

 ロシア大会後は精力的にブノワ・コーチと英国にも飛んだ。「風洞実験っていうんですか。風速70キロくらいの中での練習も体験してきました」。1年後を喜ぶため、自転車の先進国である英国で、科学的な、さまざまなトレーニング方法を学び、経験を積んだ。

メイクに目覚めた ナショナルチームの面々は静岡・伊豆に拠点を置く。以前、毎日80グラムの肉を食せと栄養士から指示があった。甘い物はダメとか、食生活もストイックに自分を追い込む。栄養バランスにも気を使う。加えて国内でのレースは参加してないのだから、生活費もままならない。

 「フランス人の栄養士がついてくれて、1日の摂取量が決まっている。初めブノワから体重を落としなさいと指示もあり、マックス83キロあったのが、今は63キロくらい。ただ、増量期、減量期とあるので、一概にどのくらい食べるとか、食べないとは言えませんね。でも海外のときは主に、グルテンフリー(小麦などグルテンを含まない食品)のものだけです」

 毎日が練習漬け。以前、雑誌の取材で好きなブランドを聞かれ、「つい、スポーツ用品のメーカーを」言ってしまった。聞いた記者はあ然としたそうだ。

 「メイクしても汗だくなので意味がないですね(笑い)。でも、最近は(太田)りゆちゃんのおかげで目覚めましたよ。遠征に行くときとか、競走に参加するときにはメイクやネイルもします。縁起を担いでネイルは赤系が多いですね」。時間が許せばテレビ出演もある。発信することによって途中で妥協しない、投げ出さない気持ちを高める。そして、ケイリンを広めたい気持ちが強いからだ。

 18―19年シーズンが終わったとき、五輪王者になる前に、世界王者として五輪を迎えろ!と言われた。小林の気持ちも「取りたい」から「絶対に取る」という意識に変わったという。ナショナルチームとして主要大会は、8月のジャパンカップまでない。「国内のレース出場は未定ですね。2か月間、ハードな練習を積む。ジャパンカップは五輪に向けての前哨戦だと思っているし、ここの結果がある意味すべてです」

 今後も険しい道が続く。五輪出場、そして夢であるメダル獲得へ。「絶対に取る」優香のその思いだけは揺るぎない。

 ◆五輪へ枠争い(トラック) 

 全6種目、男女189人が出場できる。男女とも18―20年W杯、19―20年アジア選手権、19―20年世界選手権で付与されるUCIポイントの上位国に出場権が与えられる。ケイリン、スプリントはチームスプリントの上位8か国からそれぞれ2人が出場でき、さらに2種目それぞれ上位7か国(チームスプリントで出場枠を得た国を除く)に1人ずつの出場枠が与えられる。上位7か国としてケイリンで枠を得た選手はスプリントに、スプリントで出場枠を得た選手はケイリンにも出場できる。現在女子のランキングはチームスプリントは参加しておらず圏外。ケイリン5位、スプリント17位。男子はチームスプリント10位、ケイリン1位、スプリント10位。開催国枠はない。

太もも63センチ 

 ◆小林 優香(こばやし・ゆうか)1994年1月18日、佐賀・鳥栖市生まれ。25歳。日本競輪学校(現日本競輪養成所)106期(女子3期生)として2014年5月岸和田でデビュー(〈1〉〈1〉《1》)。「ガールズコレクション」制覇は6回。15年「ガールズGP」優勝。14、15年ガールズMVPに輝く。209戦189勝、2着9回。通算61V。自転車競技では18年12月のW杯(ドイツ)ケイリンで銅メダル、今年1月のアジア選手権(インドネシア)で優勝。164センチ、64・7キロ。太もも63・0センチ、血液型A。

スポーツ

報知ブログ(最新更新分)

一覧へ
NEWS読売・報知 モバイルGIANTS ショップ報知 マガジン報知 個人向け写真販売 ボーイズリーグ写真販売 法人向け紙面・写真使用申請