今始まる新生「いだてん」の挑戦…視聴率低迷の中、阿部サダヲ主人公で第2部スタート

11日に行われた「いだてん」主役リレー会見で中村勘九郎(左)からタスキを受け取った阿部サダヲ
11日に行われた「いだてん」主役リレー会見で中村勘九郎(左)からタスキを受け取った阿部サダヲ
30日からの「いだてん」第2部に名物ママ・マリー役で大河初出演を飾る薬師丸ひろ子
30日からの「いだてん」第2部に名物ママ・マリー役で大河初出演を飾る薬師丸ひろ子

 またか…。その質問が出た瞬間、長机に並んだNHK幹部たちが明らかにそんな表情を浮かべた。

 19日、東京・渋谷の同局で行われた木田幸紀放送総局長の定例会見。最終盤に1人の記者が「『いだてん』の視聴率が低迷していますが。その原因の分析やテコ入れ策は?」と聞いた。

 放送中の大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺~」(日曜・後8時)が9日の平均視聴率6・7%、16日は同6・9%と低迷。6・7%は1963年から58作品が放送されてきた大河ドラマ史上、2012年11月18日放送の「平清盛」第45回の7・3%のワースト記録を大きく下回る数字。これで18週連続1ケタを記録したとあって、当然、問われる質問だった。

 毎月、上田良一会長と木田総局長が日をずらして定例会見を開くNHK。私も3年前から毎回出席し、取材を続けてきた。「いだてん」不振に関する質問は2月10日に平均視聴率9・9%となり、大河史上最短での1ケタを記録してしまった2月から5か月連続で延々と続いてきた。

 2月の会見でも「物語の山場に合わせてプロモーション番組なども増やしたい」と異例の“テコ入れ宣言”を口にした木田氏はこの日も「(その質問には)2月ぐらいの会見から毎回お答えしていますが」と、いつもの穏やかな笑みを絶やさず話し始めた。

 「6・7になった、6・9になったと言っても15%が6・7%になったわけではないので…。残念なことではあるけれども、作品の作り方で何か大きな要因が発生して、こうなったとは思っていません。『いだてん』というドラマは今までにもない、これからあるどうかかも分からない、見たこともない大河ドラマの作りをしてますので、その作り方にたくさんの人がついてきてただければ、それはそれでありがたいのですが…」と淡々と話した上で「視聴率が全てということではないので、やはり、レベルの高い大河ドラマの作り方を最後まで貫いて欲しいと思ってます」と続けた。

 録画視聴、自分の好きな時間にタブレット端末などで見るオンデマンド視聴も増えている今、ビデオリサーチ社が調査するリアルタイムの世帯別調査を基準とする数字に対して飛び出した「視聴率が全てということではない」という発言。その言葉にはうなづける部分がある反面、受信料で番組制作をしている同局のトップとしては、やや波紋を呼ぶコメントとも感じた。

 焦りがあるのも確かだろう。木田氏は同局編成・制作の総責任者。1977年の入局後、90年の大河「翔ぶが如く」演出、97年の同「毛利元就」制作統括など一環して制作畑を歩んだ“NHK放送全体の顔”と言っていい存在だ。数々の大型作品の総指揮を執ってきただけに、「いだてん」の不振を歯がゆく感じていることは、約2メートル離れた記者席の私にもダイレクトに伝わってきた。

 「今度、第2部になります。第2部については新たな登場人物、ストーリーラインについての、いろいろプロモーションやミニ番組での紹介など、少しでも知っていただくような策はいろいろと打っていこうと思っています。知られていない人物であり、近代から現代に近いところであるとか、多彩な人物が出てくるとか、とっつきにくい要素はいろいろあると思いますけれども、それを含めて『いだてん』という大河ドラマの魅力でもあるので、そこはしっかりと最初の思いを形にしていっていただきたいと、出演者、スタッフに考えていただきたいと思っています」と熱く話した木田氏。

 その言葉通り、23日放送の第24話で中村勘九郎(37)演じる金栗四三を主人公とした物語は終了。30日の第25話からは阿部サダヲ(49)演じる東京に五輪を招致するために尽力した新聞記者で後の日本水泳連盟会長・田畑政治(まさじ)が主役に。1964年の東京五輪招致に奔走し、組織委員会事務総長として成功に導く姿を描いていく。

 新聞記者のかたわら指導者として日本水泳の未来を切り開いていった田畑の物語が熱いものになるのは間違いないが、大きな危惧が一つある。「田畑って誰?」―。こう思う視聴者がほとんどなのではないかという点だ。

 オリジナル脚本を手掛けた13年の連続テレビ小説「あまちゃん」を大ヒットさせた宮藤官九郎氏(48)の脚本のもと、東京高等師範学校の嘉納治五郎校長の元に五輪の招待状が届いた1909年から64年の東京五輪開催までの激動の55年間を描く物語が「いだてん」。

 しかし、視聴率低迷の大きな要因となったのが、主人公が無名過ぎることだった。過去の大河が豊臣秀吉、坂本龍馬といった誰もが知る歴史上のスターの生涯を描いてきたのに対し、知る人ぞ知る金栗、さらに多くの視聴者が初めて名前を聞く田畑という人選が大きな足かせとなったのは確か。だからこそ木田氏も「少しでも知っていただくような策はいろいろと打っていこう」と口にしたのだと思う。

 日曜午後8時の裏番組は強力そのものだ。常に平均視聴率15%以上の日本テレビ系「世界の果てまでイッテQ!」に加え、6月9日の放送で20・3%の大台をたたき出したテレビ朝日系「ポツンと一軒家」もニューカマーとして難敵だ。

 日曜の最激戦区に「第2部」として新たな船出に踏み切る「いだてん」。5月9日の上田会長の定例会見では、同席した制作幹部の口から「(視聴率を上げる)特効薬的なものがあれば、逆にお聞きしたいと思っております」という逆質問まで飛び出して話題となった。

 しかし、同幹部はこうも口にしていた。「『いだてん』はこれまでの大河ドラマと違って、近代をほぼ無名の人物を主人公に据えて描くというもの。日本人がオリンピックに挑戦して半世紀の話を描いていくという我々としても挑戦的な大河ドラマとして今、作っております」―。

 そう、「挑戦」という言葉こそキーワード。木田氏が口にした「今までにもない、これからあるどうかかも分からない、見たこともない大河ドラマ」という言葉こそ、この作品の真実だ。

 ここからは私見で皆さんに押しつけるつもりは全くないが、少しだけ耳を傾けて欲しい。金栗編の最終盤、菅原小春(27)が演じた伝説の女性アスリート・人見絹枝が登場した第22話や関東大震災を真正面から描いた第23話の脚本、演出にうならされ、手に汗を握りながら視聴した私は、はっきりとこう言える。「『いだてん』、やるじゃん」と―。

 そこにあるのは、テレビ離れが叫ばれる中、従来の大河の視聴者層である中・高年層だけに頼るのではなく、必死で新しい顧客を開拓しようという意欲的なドラマ作りの数々。数字だけでは計れない魅力が「いだてん」にはあふれている。私はそう思う。(記者コラム・中村 健吾)

 ◆「いだてん」の視聴率推移(関東地区、ビデオリサーチ調べ)

 ▽第1話 15・5%

 ▽第2話 12・0%

 ▽第3話 13・2%

 ▽第4話 11・6%

 ▽第5話 10・2%

 ▽第6話 9・9%

 ▽第7話 9・5%

 ▽第8話 9・3%

 ▽第9話 9・7%

 ▽第10話 8・7%

 ▽第11話 8・7%

 ▽第12話 9・3%

 ▽第13話 8・5%

 ▽第14話 9・6%

 ▽第15話 8・7%

 ▽第16話 7・1%

 ▽第17話 7・7%

 ▽第18話 7・7%

 ▽第19話 7・7%

 ▽第20話 7・7%

 ▽第21話 7・7%

 ▽第22話 6・7%

 ▽第23話 6・9%

11日に行われた「いだてん」主役リレー会見で中村勘九郎(左)からタスキを受け取った阿部サダヲ
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