入院、外出許可で試合…何度も見てきた登坂絵莉の涙と苦労と強さ

16日の全日本選抜選手権決勝、須崎優衣に敗れた登坂絵莉
16日の全日本選抜選手権決勝、須崎優衣に敗れた登坂絵莉

 登坂絵莉の涙は何度も見てきた。16日の全日本選抜選手権決勝で須崎優衣に敗れ、東京五輪につながる世界選手権代表入りが消えた。「本当に自分の人生の中で一番つらい3年間だった。もうやめたいと思うことばかりだった」。体を震わせ嗚咽(おえつ)を漏らす姿に、これまでの苦悩が重なった。

 金メダリストになったリオデジャネイロ五輪以降は、けがとの闘いだった。左足の指の付け根、膝、足首。復帰ロードの途中で何度もつまずき、2度体にメスを入れた。代名詞は片足タックル。「昔は行けた。今は行こうとしても、足が痛みを覚えていているから遅れる」。頭と体がうまく連動しない。足の痛みが消えることもなかった。

 昨年12月の全日本選手権は準決勝で入江ゆきに敗れた。翌日の3位決定戦後には、気持ちは次戦に向いていた。雑談中にいつもの笑顔で、さらりと衝撃の事実を口にした。試合3日前に体調を崩し入院。外泊許可を得て試合に臨んでいた。入院中は名言集を読み「気持ちを上げていた」という。印象に残った言葉を尋ねると「『物事は過程が大事』と言っているやつは、たいがい負ける」。笑い合ったのを覚えている。その日のうちに名古屋の病院に戻った。減量に苦労することも多かった。25歳の体は悲鳴を上げていた。

 高校でレスリングをやめるつもりでいたが、豊富な練習量を支えに大学進学後に花を咲かせた。リオ五輪後は、支えてくれた周囲へ「もう一度勝つ姿を見せたい」という一心でマットに上がり続けた。敗れては「この負けがあったから、と思えるように」と言い聞かせてきた。「今回の負けを良かったと思える日は来ないと思う。それでもこれが現実。前向きに生きたい」。真っ赤な目で絞り出した言葉に、登坂の強さを知った。(記者コラム・高木 恵)

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