宝塚歌劇花組・華優希(はな・ゆうき)が、25、26日に横浜アリーナで開催されるトップスター・明日海りおのコンサート「恋スルARENA」で、新トップ娘役として始動する。11月24日付で退団する“トップ・オブ・トップ”の4代目の相手役で、ラストパートナー。入団6年目で任された大役に「本当に奇跡のよう。尊敬する明日海さんがご卒業されるまで、同じ光景を見られる努力をして、お隣に存在したい」。伝統ある花組の娘役としての思いも聞いた。(筒井 政也)
ひまわりのような天真らんまんな笑顔には、京女らしい、はんなりと柔らかな雰囲気も宿る。不思議な魅力を持つ新トップ娘役が、令和時代の花組を彩る。
4月に退団した仙名彩世(せんな・あやせ)からバトンを受け継ぎ、花組配属時から頂点に君臨する明日海とコンビを組む。「人生で一番の驚きでした。明日海さんは雲の上の存在で、近づくのも恐れ多いぐらいのお方。男役でいらっしゃる最後の時に、隣に立たせていただけるなんて…。本当に幸せなことだと、落ち着いてから改めて思いました」と初々しくほほ笑む。
主演娘役決定を明日海に報告した際は「私がいる間は『頑張らなきゃ』じゃなく、のびのびと、はなちゃんらしくやってくれたら大丈夫」と激励された。「優しいお言葉に救われました。でも、甘えずに研鑽(けんさん)を積みたい」。その決意表明の場が、宝塚初進出の「横アリ」。超異例の、ど派手なプレお披露目だ。「2時間ノンストップ。普段のレビューやショーよりもポップな感じですね。しっかり走り回らなければ(笑い)」
演出の齋藤吉正氏が横浜出身とあって横浜のご当地曲が用意されたり、「恋」にちなんだナンバーも。「ヒロインデビューということで、私がメインキャラクターになる場面もつくってくださって。そのお心がうれしかった。振り付けの先生にも『アイドルになれ!』と言われています(笑い)。でも一番、重きを置くのは、明日海さんのコンサートとして組の皆さんと一緒に盛り上げていくことですね」。娘役としての心得は決して忘れない。
宝塚ファンだった祖母、母の影響で物心つく頃から歌劇の存在は知っていたが、2011年の雪組公演「ロミオとジュリエット」(主演・音月桂)で初観劇して衝撃を受けた。「ヴェローナの場面の群舞の美しさに感動して。『見る側じゃなく、夢を作る向こう側に行きたい!』と第1幕の途中で思った(笑い)。進路に悩むもやもやが晴れました」。母親には「普通に結婚してほしい」と反対されたが「今は一番、応援してくれています」とニッコリ。
ファン時代、娘役に向けたまなざしが原点だ。「見ていると心にお花が咲いて、幸せな気持ちになれるような」。芸名「華」に込めた意味でもあり、組の名称とも重なった。「花娘(花組の娘役)になれたことが、すごくうれしくて。技術面など未熟なところはありますが、男役さんをステキに引き立てられる、タカラヅカらしい娘役でありたい」。その学びは今後も続く。
新人公演で2度師事した仙名からは「自分の心を信じて舞台に立ったらいいから。見えない場所に対して不安に思うかもしれないけど、怖がらず、その場所に行ってみたらいい」とアドバイスされた。「私なりにやってみたらいいのかなという勇気を頂きました」。劇団初の横アリのステージもまた、未知なる場所。大劇場とはまた違うファンの熱気を浴びて、鮮やかな花を咲かせる。
◆華 優希(はな・ゆうき)11月13日生まれ。京都府京都市出身。2014年3月「宝塚をどり」で初舞台。第100期生。組回りを経て、15年に花組配属。17年「邪馬台国の風」と19年「CASANOVA」で新人公演ヒロイン。17年「はいからさんが通る」で外部劇場初ヒロインを務めた。8~11月上演の「A Fairy Tale―青い薔薇(ばら)の精―」「シャルム!」がトップ娘役大劇場お披露目となる。身長162センチ。愛称「はなちゃん」「のぞみ」。