大阪弁で男女の恋描き続けた作家・田辺聖子さん、死去

文化勲章受章の喜びを語る田辺聖子さん(2008年10月)
文化勲章受章の喜びを語る田辺聖子さん(2008年10月)

 芥川賞受賞作「感傷旅行(センチメンタル・ジャーニイ)」など、人生や男女関係の機微を軽妙な筆致でつづった小説などで知られる作家で文化勲章受章者の田辺聖子(たなべ・せいこ)さんが6日午後1時28分、胆管炎のため神戸市内の病院で死去した。91歳。葬儀・告別式は近親者で行った。喪主は弟・聡(あきら)氏。後日、東京と大阪でお別れの会を開く予定。

 大阪弁を駆使した明るい文体で、男女の機微や人生の哀歓をユーモアたっぷりにすくい取り、幅広い世代から支持された田辺さんが91年の生涯を終えた。

 遺族によると、4月末に体調を崩し入院。家族にみとられて静かに息を引き取ったという。

 大阪市で写真館を営む家庭に生まれた。樟蔭女子専門学校卒業後、金物店勤務の傍ら、小説を同人誌に発表。「日本語のきれいな言葉で、かわいい恋愛小説が書きたいなあ」。その思いが作家への第一歩となった。1958年に「花狩」でデビューすると、64年には女性放送作家と共産党員の恋を描いた「感傷旅行」で芥川賞を受賞した。

 64年、友人で同い年の作家・川野彰子さんが死去。追悼文を寄せた縁で川野さんの夫だった純夫さんと結婚、2002年に死別するまでおしどり夫婦として知られ、純夫さんがモデルの「カモカのおっちゃん」が登場するエッセーシリーズは人気を呼んだ。「ジョゼと虎と魚たち」が03年に映画化(主演・妻夫木聡、池脇千鶴)。06~07年には半生がモデルになったNHK連続テレビ小説「芋たこなんきん」(主演・藤山直美)が放送された。

 広範な著作を貫く姿勢は「深いことを軽く、面白く」。その作風は一生を通じて離れなかった関西の風土から生み出されたものだ。「女の子に振られた時、大阪弁だと『くそ』でも『ちくしょう』でもない。『さよか』って別れる。こういうやりとりを、大阪弁を知らない人にも分かるように工夫することが、腕の見せどころですねえ」

 00年に文化功労者に決まった時には「純文学とエンターテインメントの境界を取っ払い、大衆が本当に面白がっているものに光を当てることが大切」と話した。08年に文化勲章を受章。「書きたいのは、人間の優しさね」と語り、「徹底的な悪人や救いのない悲劇は書けない」と話した。自らの生活にも夢と楽しみを求め、大の宝塚歌劇ファンだった。色紙を頼まれると「まいにち ばらいろ」と書いた。

 藤山直美(2006年度下半期・NHK連続テレビ小説「芋たこなんきん」で主演)「田辺先生の突然のご訃報にふれ、大変驚き、また、淋(さび)しく思っております。NHKのドラマで聖子先生のお役をさせて頂きました事は、私の中では感慨深い思い出になりました。ご冥福を心からお祈り申し上げます」

 ◆田辺 聖子(たなべ・せいこ)1928年3月27日、大阪市生まれ。55年、同人誌「航路」に参加。56年に「虹」で大阪市民文芸賞。58年に「花狩」でデビューし、64年に「感傷旅行」で芥川賞受賞。94年、菊池寛賞。2000年、文化功労者。08年、文化勲章。他の作品に「姥ざかり」「ひねくれ一茶」など。

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