非常事態宣言から2年…大物作家2世・遠藤龍之介新社長はフジを完全復活に導けるのか

7日の新社長発表会見で「視聴者の皆さんに愛されるテレビ局になりたい」と語ったフジテレビの遠藤龍之介新社長
7日の新社長発表会見で「視聴者の皆さんに愛されるテレビ局になりたい」と語ったフジテレビの遠藤龍之介新社長
7日の会見でがっちりと握手するフジテレビ社長に就任する遠藤龍之介氏(左)とフジ・メディア・ホールディングス社長に就任する金光修氏
7日の会見でがっちりと握手するフジテレビ社長に就任する遠藤龍之介氏(左)とフジ・メディア・ホールディングス社長に就任する金光修氏

 父親譲りのユーモアたっぷりの新社長が誕生する。

 7日、東京・台場のフジテレビで行われたフジ・メディア・ホールディングス(HD)とフジテレビの新社長発表会見。26日の株主総会及び取締役会でフジテレビの社長兼COO(最高執行責任者)に就任する遠藤龍之介専務(63)が183センチの大柄な体に照れ笑いを浮かべ、約100人の記者の前に現れた。

 遠藤氏の父は「沈黙」「海と毒薬」などで知られる芥川賞作家・遠藤周作氏。私自身の記憶としては「沈黙」などの名作を読みふけるはるか前、72年の「ネスカフェゴールドブレンド」のテレビCM、「ダバダ~」という音楽とともに「違いのわかる男」として登場する映像の方が、くっきりと記憶に残っている。

 「狐狸庵(こりあん)先生」としてユーモアたっぷりのエッセーでも知られた父上同様、遠藤新社長の周囲には笑いが絶えない。この日の会見でも、「好きな本は?」と聞かれ、「著者は忘れちゃったんですが、『沈黙』という小説です」と周作氏の代表作の名前を挙げ、記者たちを爆笑させ、さらにその理由を聞かれると「マーティン・スコセッシ監督の映画が素晴らしかったです」と、畳みかけて見せた。

 その口調のなめらかさから想像するに人生で何度も「遠藤周作の息子」として、この種の質問を受け続けてきたことがうかがえる一幕。さらに角落ち対決で佐藤康光九段に勝ったという逸話を持つ趣味の将棋について聞かれても、「自分で言うのもなんですが、かなり強いです。三手の読みは仕事でも生きると思います。7歳くらいから始めて棋力はアマチュア6段くらいだと思います」と、ニヤリと笑って見せた。

 一見、エリート街道を突っ走ってきたかに見える自身の経歴についても「40年以上働いてきて、10回以上、人事異動を経験してきました。たくさんの職場から求められたのか、たくさんの職場から求められなかったのか…」と、ここでも笑わせ「多くの職場でたくさんの方と触れ合ったことは私の大切な財産であります。社長という仕事の責任の重さは理解しておりますが、気を引き締めて新しい仕事に臨みたいと思います」と決意表明した。

 そう、2017年6月の宮内正喜社長(75)=26日の株主総会で会長兼CEO(最高経営責任者)に就任=の社長就任時にも次期社長の有力候補として名前の挙がった遠藤氏。その巨体の双肩にかかる責任はずっしりと重い。

 「楽しくなければテレビじゃない」のキャッチフレーズのもと、82年から93年まで12年連続で視聴率「三冠王」に輝いた栄華も今は昔。すっかり民放キー局中4位が定位置の業績不振にあえぐ苦境に宮内社長は就任早々、「非常事態宣言」を全社員に発した。組織再編成などの社内改革に踏み切った上で「17年の10月改編、18の4月改編、10月改編と3つのセット改編で勝負していく」と宣言。異例の“3セット改編”を断行した。

 中でも世間を驚かせたのが、昨年4月の全日(午前6時~深夜0時)改編率28・2%、ゴールデン(午後7時から10時)同29・8%、プライム(午後7時~11時)同29・5%という「史上最大の改編」。長寿バラエティー番組だった「めちゃ×2イケてるッ!」「とんねるずのみなさんのおかげでした」などもバッサリと終了させた。

 そして、「非常事態宣言」効果は、はっきりと出た。何作も続けて1ケタ視聴率にあえいでいた看板ドラマ枠「月9」も徐々に復活。5月27日に放送された俳優・窪田正孝(30)主演の「ラジエーションハウス」第8話は番組最高となる平均視聴率13・3%(数字はビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録。昨年も人気ドラマの映画化作品「劇場版コード・ブルー ドクターヘリ緊急救命」が興収92億円を突破するなど、個々のコンテンツは、すっかり元気を取り戻した。

 この2年間、宮内社長の右腕として、社内NO2として、社内改革の先頭に立ってきた遠藤氏は「『変化は進化』という考えが社員の間にも浸透してきていると思います。今回は、その第2フェーズとして何をどう変えていくのかを具体化させることが、私の任務です」と言い切り、ここ数年のフジの低迷についても「かつて、時代の心みたいなものをきちんとつかんでいた我々が段々と時代についていけなくなっていた。ここ数年で数々の長寿番組を打ち切らざるを得なかったのも、その現れ。しかし、昨年後半からトライ・アンド・エラーを繰り返しながら挑戦が始まっている。昨年後半から数字が上向きになっているのも、その兆しです」と冷静に分析した。

 そして迎えつつある復活の時。この日が最後の定例会見となった宮内社長も今年度の決算について、「7年ぶりの増収となりました。営業利益も2年連続の大幅増益です」と胸を張った。

 もともと常に明るい雰囲気、悪く言えばのんきなムードが漂っていたフジ。最近、取材で接する社員らの表情が、さらに明るくなったことを私は感じる。その中心には、いつも悠々迫らない大人の雰囲気を漂わせ、ジョークを口にしては周囲を笑わせている遠藤氏の存在がある。これまで定例会見でのユーモアにあふれた返答ぶりや懇親会で場を盛り上げるスピーチに接するたびに、そう感じてきた。

 しかし、熾烈なライバル局との視聴率競争に、若者がスマホ片手に「いつでも、どこでも」動画配信サービスで好きな番組が視聴できるNetflix(ネットフリックス)やアマゾンプライムなどの新たなライバルとの戦い。さらに難敵・NHKが2019年度中にテレビ放送のインターネットへの常時同時配信をスタートさせる状況もある。

 生き残りをかけたサバイバルは今、始まったばかり。会見の最後に温厚な表情を引き締めた新社長は、こう言った。「私のミッションはシンプルでたった一つです。フジテレビの視聴率を上げ、さらに業績をアップさせること。それのみです。視聴者の皆さんに愛されるテレビ局になりたいと思っています」―。

 「違いのわかる男」2世が日々、厳しさが増すばかりのテレビ業界で、いかに「大きな違い」を生み出し、フジを完全復活に導けるのか―。じっくりと見届けたいと、私は思っている。(記者コラム・中村 健吾)

 ◆遠藤 龍之介(えんどう・りゅうのすけ)1956年6月3日、東京都生まれ。63歳。作家・遠藤周作氏の長男として生まれる。周作氏が55年に芥川賞を受賞した翌年に生まれたことから芥川龍之介にちなんで命名された。81年、慶大文学部卒業後、フジテレビ入社。編成制作部長、広報局長、常務などを歴任し、13年に専務に。広報部長時代の05年には堀江貴文氏率いるライブドアによるニッポン放送株買い占め騒動に対応した。

 ◆遠藤 周作(えんどう・しゅうさく) 1923年3月27日、東京都生まれ。慶大文学部卒。フランスへの留学後、文筆業に入り、55年「白い人」で芥川賞受賞。50年代に安岡章太郎、吉行淳之介ら同世代の新鋭小説家たちと「第三の新人」として注目を集める。代表作に「海と毒薬」「わたしが・棄てた・女」「沈黙」など。「狐狸庵(こりあん)先生」として、ユーモアたっぷりのエッセーやコーヒーのCM出演でも人気に。95年、文化勲章受章。96年9月29日、肺炎による呼吸不全のため死去。

7日の新社長発表会見で「視聴者の皆さんに愛されるテレビ局になりたい」と語ったフジテレビの遠藤龍之介新社長
7日の会見でがっちりと握手するフジテレビ社長に就任する遠藤龍之介氏(左)とフジ・メディア・ホールディングス社長に就任する金光修氏
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