繰り返される松本人志の問題発言…「不良品」という言葉は果たしてカットできたのか?

1月の指原莉乃への「体を使って」発言に続き「不良品」発言で大いに物議を醸している松本人志
1月の指原莉乃への「体を使って」発言に続き「不良品」発言で大いに物議を醸している松本人志
繰り返される松本人志の「ワイドナショー」での問題発言に揺れるフジテレビ
繰り返される松本人志の「ワイドナショー」での問題発言に揺れるフジテレビ

 またも「ダウンタウン」松本人志(55)の問題発言が世間を騒がせている。

 2日放送のフジテレビ系「ワイドナショー」(日曜・前10時)で、松本は川崎市の登戸駅近くで発生した無差別襲撃事件の容疑者(51)に関して、「不良品」という言葉を使用。「人間が生まれてくるなかで、どうしても不良品って何万個に1個(生まれる)。これはしょうがないと思うんですよね」とし、さらに「もうその人たち(=不良品)同士でやりあってほしいですけどね」とまで踏み込んだ。

 この発言には放送直後からネット中心に批判が殺到。「人間を生まれついての不良品と見なす人間観。そうした見方が歴史上どれだけの不幸を起こしてきたかを少しでも知っていれば、口に出せるものではない」「確かに犯人がやったことは最悪だが、人間には生まれながらの絶対的な『不良品』なんていない」という意見から「松本さんの言葉は、まともではない人は排除すべきという優生思想そのものでは?」という声まで出た。

 7日、東京・台場の本社で行われたフジテレビの定例社長会見でも当然、松本の「不良品」発言に対する局トップの見解が問われた。

 26日の株主総会で会長兼CEO(最高経営責任者)に就任する予定で、これが最後の定例会見となった宮内正喜社長(75)は「番組制作のことですので…。石原取締役」と、制作・編成担当の石原隆取締役(58)に答えを託した。

 「生放送ではない収録番組で、こうした内容が放送されたが…」と強調した質問に対して、石原氏は「ご指摘のとおり、そうした発言が放送されました。さらにご指摘のとおり、事前に収録している番組でございまして、生放送ではございません」と潔く認めた。

 その上で「事前に収録した際に我々としては、その発言の中に差別的な意味合いは含まれていないという判断で(放送した)―。いろいろな意見を戦わす、議論する番組でございますので、そう言った差別的意図はないということが伝わるだろうと思って放送したつもりですが、放送後にそうした批判が出ていることも認識しております」と続け、「今後は我々がそう言った意図でなくても、そうしたご批判として受け取られる可能性があることに関しては、きちんと我々も受け止めて、今後の番組ではそう言ったご批判を番組作りに生かしていきたいと思っています」と答えた。

 私には、このやり取りに大いに既視感があった。

 1月25日、東京・帝国ホテルで行われた同局の定例社長会見でも同様の問答があった。同月13日放送の「ワイドナショー」でも松本は共演の指原莉乃(26)に対し、「お得意の体を使って」などと発言した。

 番組では、NGT48(当時)の山口真帆(23)が昨年12月、男性ファン2人に自宅に押しかけられる被害を受けた事件について、松本中心にトークを展開。指原が「誰がトップなのか、誰が仕切っているのか本当に私ですら分からない状態」と同グループの現状を訴える流れの中、松本の「それはお得意の体を使って何とかするとか」という発言が飛び出したのだ。

 明らかに女性蔑視である以上に、そもそも松本自身が女性という存在をどう見ているのかまで疑われるような暴言。それだけに放送直後から「ひど過ぎるセクハラ発言」「芸人だから何を口にしてもいいわけではない」などなど、数多くの批判の声が上がった。

 松本自身、翌週20日の同番組で「今日をもって無口なコメンテーター。新しいジャンルで。ギャラ泥棒になっていこうかなと思ってますけど」と、まず笑わせ、番組が収録放送だったため集まった「問題の発言をカットして放送すべきだった」などの意見に対して「なんでカットせぇへんねん(という声)もあったが、基本的にこの番組は、ボクの言うことをできるだけカットせずに使っていきたいという暗黙の了解というか、決めてはないですけど、そういう番組なんですよ」と説明。その上で「体を使って」発言をカットしなかった理由を「鬼のようにスベっていたから。鬼のようにスベったら逆に恥ずかしくて言えないですよね。あんだけスベっていたら恥ずかしくて早く家に帰りたい」と明かしていた。

 SNS上などでの炎上についても「炎上はこの先もしていくと思うんです。それはしようがない。炎上で得られるものもあるし。なるほどなって、こんな大火事になるんや。その大火事になった時に本当に大切なものが見えてくるし。持ち出して逃げなアカンものが何なのかもわかるし」とし、最後に「(相手と)親しくても、テレビに出たら堅苦しくしゃべらなアカン世の中になってきたのかな」と疑問も投げかけた。

 その直後の定例会見だっただけに「松本さんの発言を社長として、どう捉えているのか?」という質問が当然、出た。宮内社長は「放送責任は局にある。出演者同士の(親しい)関係性から来る言葉だったが、視聴者の受け止め方は多様化している。そのバランスを測ることもテレビの大切な仕事だと思うし、我々は時代の変化に敏感でなければならない。今後は今回の反響を参考にして、常に視聴者の思いに敏感でなければならない。そうした姿勢で番組制作に努めるよう、現場に指導しているところです」と反省の弁を述べた。

 重ねて、怒りをあらわにした女性記者から「事前収録の番組だっただけに制作サイドが(カットするなど)編集もできたのでは?」と聞かれた石原氏は「事前収録でございます。当然、(松本の発言の是非がスタッフ間で)議論になった結果、あの放送になった。番組自体が松本さんたちの発言をそのまま生かす形を取ってきた。なるべく出演者の意見を生かす形で構成されることを原則としてきたが、今後はますます慎重に考えて放送していかないといけない。そうした話を制作現場としている最中です」と制作の総責任者として現場の改善に乗り出していることを明かした。

 その上で「番組の編集権、放送責任はフジテレビが持っている」と、あくまでも自局の責任であることを強調。「今までのやり方は通用しないと思っていますし、今後、あらゆる角度から、こういった受け取られ方をするかも知れないということとか、これまでと違った今までは考えてこなかった角度からの検討も必要であると考えています。ウチのスタッフ間でまず方針を決め、現在、出演者の方々と話し合っております」と明かしていた。

 このやりとりを受け、私は「フジテレビ社長も猛省の松本人志『体を使って』発言…残された大きな課題とは」と題したコラムを報知webにアップ。「松本の自由自在のフリートークを制限してしまっては『角を矯めて牛を殺す』の例えもあるように、番組自体のストロングポイントが消失してしまう危険性まではらんでいるのは確かだ。表現の自由は最も守らなければならない権利であり、行き過ぎた自粛の動きが“言葉狩り”につながる危険性もあるだろう」とも書いた。

 しかし、この考えは甘かったようだ。5か月を経て、またも松本の“暴言”は繰り返された。1月と同じ質問を投げかけられた石原氏は、この日も「指原さんのことについてもそうした話が出ました」と5か月前の騒動を振り返った上で「出演者のある種の鋭い切れ味のせりふ回しと言いますか、言葉の選び方が一つの売りにもなっていると思うのですが、同時に傷つく人がいたり、今回のような批判を受けるということに対して、改めて我々が認識しなければいけないなと思っています」と反省の弁を述べた。

 その上で「番組自体が意見を言えない番組になってしまうのはナンセンスなので、非常に難しい舵取りではありますけれども、そこの所を作り手として収録の際、慎重に見極めていくということしかないかなと思っています」と話した。

 私の意見も石原氏と全く同じだ。松本の「不良品」発言は決して許されるものではない。今回、傷つけられた人の多さを思うと、きちんとした本人の謝罪が必要だとも思う。言いっ放しで済ませていいとは決して思わない。

 問題はもう一つ。「生放送ではなく、収録なのにそのまま流されてしまった」という点にもある。立て続けの「体を使って」発言、「不良品」発言と自身の根本的な物の考え方を見直す必要があるのは確かな松本だが、「基本的にこの番組は、ボクの言うことをできるだけカットせずに使っていきたいという暗黙の了解がある」という1月の発言とは裏腹に「あまりにヤバければ、局側がカットするやろ」と言う甘えのようなものもあるのではないか。二つ目の言葉は全く私の想像の産物だが、そうとも考えないと、もはや炎上しての売名など全く必要のないお笑い界の大物が、ここまでの過激発言を繰り返す理由が見あたらないのだ。

 松本がナチュラルに言いたいことを言い、「炎上で得られるものもある」とまで開き直るなら、問題発言をストップする、オンエアしないための最後のカギは、フジの制作陣にこそ委ねられていることになる。

 「この発言はひどい」「常識的にあり得ない」「傷つく人がいる」―。そんな言葉とともに勇気を持って松本の発言をカットする。編集時に収録部分のチェックを行う作り手たちにこそ最後の壁になってもらうしかない。

 この日の石原氏の真剣そのものの表情での「作り手として収録の際、慎重に見極めていくということしかない」という発言を聞いた瞬間、私は心の底からフジの制作陣にエールを送る気持ちになった。(記者コラム・中村 健吾)

1月の指原莉乃への「体を使って」発言に続き「不良品」発言で大いに物議を醸している松本人志
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