高梨沙羅が知る五輪の魔物「今度こそ金メダルを取って恩返し」

高梨沙羅
高梨沙羅

 2018年平昌五輪のスキージャンプ女子個人ノーマルヒル銅メダルの高梨沙羅(22)=クラレ=が、このほどスポーツ報知の単独インタビューに応じ、自身の“五輪観”を明かした。

 金メダル有力候補ながら4位に終わった14年ソチ五輪、そして同種目の日本勢初表彰台に立った平昌は、何が結果を分けたのか。悲願の22年北京五輪金メダルに挑む沙羅が、自国開催の夏季五輪へ抱く思いとは―。(取材・構成=細野 友司)

 心の底から喜んだ18年2月12日夜の平昌から、もう1年以上がたった。日本女子ジャンプ界初の五輪表彰台となった銅メダル。期待に結果で応えた沙羅に、日本中が歓喜した。

 「五輪で金メダルを取ることを目標にやってきたので、銅メダルに終わってしまったんですけどホッとした気持ちもあり、悔しさも半分あり。ただ、前向きに次に向かうことができたのもメダルのお陰だと思います。たくさんの方々、チームの方に支えていただけて取れたので、今度こそ金メダルを取って恩返ししたい、という気持ちにさせてくれたメダルでした」

 初出場の14年ソチ五輪は4位。期待を裏切った責任を背負い込み続けた4年間だった。願った色ではなくても、手にした銅メダルは尊い。月日とともに、その重みは増している。

 「メダルを持ってみると、自分だけのメダルの重さじゃなくて、いろいろな人たちの気持ちも込められた重さだと感じますね。改めてメダルの価値というもの、人の気持ちの重さを感じます。取った当初よりも、メダルの重さというものは、日に日に増していっている感じがします」

 同時に、なぜこんなにも五輪は人を引きつけるのか、とも思う。4年に一度。一生の間、そう何度も見られないからなのか。

 「いまだによく分からないんですけど、4年に一度だから注目が集まるわけではないと感じていて。例えば(学生世界一を決める)ユニバーシアードや、アジア大会も4年に一度じゃないですか。でも、五輪が一番注目が集まる。何か、見ている人の心を打つものがある。五輪に懸ける選手や監督、チームの熱量が伝わるからこそ、応援してくださる方に注目されるのかもと思います。五輪は、人々の熱量で作り上げられている。自分も子供の頃、こういうふうに活躍したい、と思って見ていたのが五輪なので。懸けられている気持ちは大きいなと思います」

 熱量の集合体は、ともすれば選手の平常心を失わせる。五輪が醸し出す独特の雰囲気もまた、人が作り出すものだと感じる。ソチと平昌、成否を分けたのは、このことを理解して平常心を保てたかどうかだった。

 「(五輪の魔物も)人が生むものだと思います。ソチの時は、会場や雰囲気にのまれていた自分がいた。飛んでいるのが、自分じゃなかったような感覚。ベストを尽くせず、申し訳ない気持ちでいっぱいだった。ソチの教訓があったから平昌では気持ちの持っていき方はうまくできました。日々を平常心で過ごし、一つ一つ目前のやるべきことに集中できたのが成長できた部分だと思う」

 1年後。自国開催という、さらなる熱量の中で迎える五輪に挑む夏季選手たちがいる。冬季のトップアスリートとして、どう見ているか。まず気になるのが、同じ平昌銅メダリストの挑戦だ。

 「モーグルの原(大智)くんが競輪に行ったんですよね。代表選手になるために頑張っていると思うんですけど、すごいですよね。競技を転向するのって、かなり勇気がいる。同じ競技者として尊敬します」

 他競技では、欧州遠征中になじみ深いサッカー。競技性が似通っている陸上短距離にも、思いを巡らせた。

 「欧州に行くとユーロスポーツという番組をずっと見ているので、サッカーはよく見ますね。(陸上短距離は)すごく繊細なスポーツ。ちょっとしたミスで大きな失敗につながってしまうから、繊細な部分を突き詰めるという意味で何となく似ている競技なのかなとは思います。スキージャンプは精神面、気持ちも大きく結果に作用する。短距離がどうかは分からないですけど、同じ気持ちなのかな、と思うとまた違った目線でも見られますね」

 22年北京五輪は、自身が再び世界の頂点に挑む場。まだ試行錯誤の途中にいる。

 「平昌でたくさんの方々の力で取れた銅メダル。今度は金メダルで恩返しをするために、トップを狙うには平昌のままではダメなんですよね。もう一度、技術面を見直すために0からスタートしたのが昨年でしたけど、なかなか自分のスタイルを見つけられなかった。今は10か、20くらい。自分のスタイルを見つけて、つなげていくことで北京へのスタイルもできると思う。レベルがすごく上がっている女子ジャンプで、戦える技術をしっかり持っていたいと思います」

 キャリアの先、33歳で迎える30年大会。招致が成功すれば、地元・札幌での開催が実現する可能性もある。

「(札幌五輪は)地元でW杯が行われるのと同じ感覚なのかな? ずっと育ててくださって支えられて今の自分があるので、いいジャンプを見せられるようにはしていきたいなと思います」

 東京五輪が開幕する来年7月24日は、北京五輪プレシーズンの20―21年季へ欧州合宿をしている頃だ。生で見られなくても、同じ五輪に立ち向かう競技者として心は一つ―。

 「生で見るのはどうかな、厳しいかもしれません。夏季と冬季では違う中でも、スポーツとしては一緒だと思うので、それが東京で行われるということで、地元・日本で盛り上がって頑張ってほしいと思うし、自分も競技者としてではないですけど、応援する身として全力で応援したいと思います。自分が競技をやるわけではないんですけど、その刺激をいただいて。冬に向けて頑張る活力をいただけるとありがたいですね」

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