井上尚弥、ドネアの前で余裕の259秒殺「思い出深い一日になりました」

TKO勝ちに雄たけびをあげる井上(ロイター)
TKO勝ちに雄たけびをあげる井上(ロイター)

◆プロボクシング 世界戦▽ワールド・ボクシング・スーパーシリーズ バンタム級準決勝 ○WBA王者・井上尚弥(2回TKO)IBF王者・エマヌエル・ロドリゲス●(18日、英スコットランド・グラスゴー、SSEハイドロ)

 【グラスゴー(英国)18日=飯塚康博】英国に襲来したモンスターが無敗王者を259秒殺だ! WBA世界バンタム級王者・井上尚弥(26)=大橋=が、19戦全勝のIBF王者エマヌエル・ロドリゲス(26)=プエルトリコ=との王者対決で3度のダウンを奪い、2回1分19秒TKO勝ち。IBF王座奪取とWBA王座の2度目の防衛に成功し、ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)優勝に王手をかけた。決勝の相手、WBAスーパー王者で世界5階級制覇ノニト・ドネア(36)=フィリピン=に破壊力を見せつけた。

 身も心も砕いた。2回だ。左フックでダウンしながら立ち上がったロドリゲスの右脇腹に、井上尚の左ボディーアッパーがめり込んだ。「相手も上に意識が行っているので下を狙った」。四つんばいに倒れた無敗王者は弱気な顔でセコンドを見て首を横に振る。それでも立った相手にまたも左ボディーで3度目のダウン。戦意喪失したロドリゲスをレフェリーが抱きかかえた。

 IBF王座奪取で「令和初王者」もやはりこの男。初回KOは2戦で止まるも、259秒KOは堂々のスピード防衛だ。「グラスゴーは思い出深い一日になりました」と無傷の顔で数百人の日本人と歓声で迎えてくれた地元のファンに応えた。WBA王座はかからなかったが、事実上の統一戦は緊迫感に満ちていた。開始から攻勢をかけたロドリゲスとカウンター合戦を展開。何度もロープを背負った。さすがに苦戦か、という空気の中、実は「負けはしないだろうと思った」と180秒で相手の力量を見切った。

 1回後のインターバルで父・真吾トレーナー(47)から「リラックスして柔らかくいこう」と力みを取るため、まずどっしり構えて圧力に対抗。距離が近くなったところで左フックで先制ダウンを奪った。勝負あり。井上尚は「長引けば互いの良さが出て面白い展開になるのでは、と1回が終わって考えていた」と気持ちの余裕もあった。

 その圧勝劇に今秋に予定されるWBSS決勝で対戦するドネアが熱視線を送った。リングに上がり、「これは運命。待っていた瞬間だ」と決意を口にした。14年12月、井上尚がスーパーフライ級王座挑戦前に、かつて自身が対戦した井上尚の相手のナルバエス(アルゼンチン)対策を来日して伝授。そこから互いに敬意を払う仲になった。世界5階級制覇した36歳は友好ムードを漂わせるも「持っている全てを出せば勝てると信じている」と10歳下の怪物への対抗心を見せた。

 主要4団体制覇の快挙も遂げた井上尚だが、「ベルトは関係ない。誰とやるかが重要。ドネアとやることに意味がある」と言い切った。決勝で立ちはだかる難敵に「戦いにくいが、そこは勝負の世界。やるしかない」。私情を捨て、世代交代を告げる結果を示せれば、世界に「イノウエ」の名がさらに広まることだろう。

 ◆WBA王座がかけられなかった経緯 井上尚―ロドリゲス戦は当初、WBAとIBFの2団体王座統一戦で行う方向だった。だがIBFは井上が持つWBA正規王者より格上扱いのスーパー王者(現在はドネア)としか統一戦を許可しなかったため、IBF王座のみがかかったタイトルマッチに変更され、井上尚は挑戦者扱いで臨んだ。ただ、WBAは特例で井上尚の勝利を王座防衛回数に含めることを認めた。

 ◆WBSS(ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ) 世界王者らトップ級8選手で争い、欧米を中心に開催される賞金争奪トーナメント。優勝者には伝説の世界ヘビー級王者の名を冠した「ムハマド・アリ」トロフィーが授与される。昨秋に始まった第1回は、賞金総額55億円(優勝11億円)に設定され、スーパーミドル級とクルーザー級で開催。第2回はバンタム、スーパーライト、クルーザー級の3階級で実施。賞金総額は数億円規模で、バンタム級優勝者は軽量級では破格の1億円超とみられる。

 ◆井上 尚弥(いのうえ・なおや)1993年4月10日、神奈川・座間市生まれ。26歳。相模原青陵高でアマ7冠など通算75勝(48KO・RSC)6敗。2012年10月にプロデビュー。14年4月にデビュー6戦目でWBC世界ライトフライ級王座、同12月にWBO世界スーパーフライ級王座を獲得。18年5月にWBA世界バンタム級王座を獲得し、世界3階級制覇を達成。プロ通算18戦全勝(16KO)。身長165センチの右ボクサーファイター。弟はWBC世界バンタム級暫定王者の拓真(23)。家族は妻と1男。

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