武藤敬司「さよならムーンサルトプレス」を取材して感じたプロレスラーの本気

武藤敬司
武藤敬司
「さよならムーンサルトプレス」
「さよならムーンサルトプレス」

 令和となって初めての本場所を迎えた大相撲夏場所。横綱・白鵬、新大関・貴景勝の休場と残念なニュースが続いた土俵を盛り上げているのが、新入幕で身長168センチ、体重99キロの幕内最小兵の炎鵬だ。

 自分より遥かに大きな関取へ小さな体を存分に生かし土俵狭しと動き回り6日目を終えて5勝1敗。新時代に相応しい新鮮な風を連日、館内に吹き込んでいる。

 明らかに対戦力士と比べるとハンデと感じる小さな体が炎鵬の個性だ。他の関取とは、目で見て違いが一瞬で分かる自分だけの個性がファンの感情移入を呼び起こしているのだろう。

 「自分だけの個性」を存分に発揮している炎鵬の奮闘を見た時、プロレスラーの葛藤を思い出した。

 私は、昨年4月に「WEB報知」で「武藤敬司さよならムーンサルトプレス」を連載した。これは、昨年3月30日に両膝の人工関節設置手術でデビュー間もないころから必殺技だった「ムーンサルトプレス」の封印を余儀なくされたプロレスラー武藤敬司のプロレス人生を振り返る内容で、様々な方々の支えを頂き、書籍化が実現しこの5月10日にイースト・プレスから出版した。

 書籍化に向け、改めて武藤本人をインタビューし、さらに関係者およそ30人を取材した。目的は様々なシーンでの武藤についての印象を聞くことだったが、自然に話は、それぞれの「プロレス哲学」に話は膨らんでいった。そして一つの共通項があった。

 それが「プロレスラーは究極の個人事業主」という考えだった。

 坂口征二氏、前田日明氏、蝶野正洋、獣神サンダー・ライガー、ケンドー・カシン、そして何よりも武藤自身が繰り返し「自分だけの個性」を探すことへの葛藤を明かしてくれた。いかに観客を引き付け、ライバルたちを上回るか。人と同じ、あるいは誰かのマネでは、それは叶わない。誰も助けてはくれない。日々、「自分だけの個性」を追求するマインドが「究極の個人事業主」という言葉になって表れていた。

 昭和から平成と一時代を築いたトップレスラーの話を聞いて私が思ったことは、「個性」を求め、作り上げる時に最も大切なことは「本気」ということだった。それは自分との戦いでもあった。誰もが真剣に自らと向き合いライバルたちと自分を冷静かつ残酷に比べ、他にはない独自の個性を築いていた。そして、その本気が誰よりも際立っていたのが、両膝を人工関節になるまでムーンサルトプレスを舞い続けた武藤敬司だった。

 武藤は6月26日に後楽園ホールで行う長州力引退興行で復活する。昭和、平成とトップを走り続けた武藤が令和でどんな本気をリングに叩きつけるのか。新緑の土俵で個性を発揮する炎鵬を見て、そんなことを考えた。(記者コラム・福留 崇広)

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