話題のドラマ「あなたの番です」視聴率1ケタ発進…日テレ「リスク覚悟」の勝負の行方は

日本テレビ系ドラマ「あなたの番です」主演の原田知世と田中圭
日本テレビ系ドラマ「あなたの番です」主演の原田知世と田中圭
東京・汐留の日本テレビ本社
東京・汐留の日本テレビ本社

 この春、スタート直後からテレビ業界の注目を集め続ける連続ドラマがある。

 原田知世(51)と田中圭(34)主演の日本テレビ系「あなたの番です」(日曜・後10時半)。14日放送の初回の平均視聴率は8・3%。第2話では6・5%と初回から1・8ポイントのダウン。連続1ケタという滑り出しになった(数字は関東地区、ビデオリサーチ調べ)。

 22日、まさに第2話の数字が出た5時間後に東京・汐留の同局で行われた大久保好男社長(68)の定例会見に出席した。

 同局は、4月15日から21日の週間平均視聴率のプライム帯(午後7時~午後11時)の数字で10・6%を記録したテレビ朝日に敗れる10・4%。全日帯(午前6時~午前0時)、プライム帯、ゴールデン帯(午後7時~10時)の3部門で1位となる週間三冠王を逃した。

 冒頭、三冠王を逸したことについて「先週の視聴率は全日とゴールデンの二冠に終わりました。各社とも番組の内容を強化しているので、我々にとって厳しい戦いが続いていると認識しています」と厳しい表情で話した大久保社長。5年連続で年度三冠王を続けている“常勝”日テレにとって、例え二冠であっても「厳しい戦い」なのだと、再認識させられた発言だった。

 続けて飛び出したのが、「『あなたの番です』の視聴率が前作と比べて、低いようですが」という作品名名指しの質問だった。

 確かに前クール放送の菅田将暉(25)主演「3年A組―今から皆さんは、人質です―」は最終回で日曜午後10時半枠史上最高の平均視聴率15・4%を記録する大ヒット。その数字と比較すると、「あなたの番です」の低調ぶりは目立つものだった。

 いきなりの質問にマイクを持った福田博之編成局長は「スタート2回、前の『3年A組』が最終回でかなり(視聴率が)行きましたので、そのままのレベルで推移できれば良かったんですけれども、残念ながら…」と正直に答えた上で「今回、全く新しい企画として2クール(連続で)走らせますので、もう1回、ゼロからのスタートという覚悟でスタートさせております」と淡々と話した。

 その上で「現状の視聴率という数字のみで言うと決して満足できるものではありませんが、当初から決めておりますことをこれからも続けてやっていく。日曜ドラマの枠のコンセプトは話題性と中毒性を持つエッジの効いたエンターテインメントですから、その通りのものができてきていると思います。前作とはタイプが違いますけど、今回は『あなたの番です』で勝負することを決めています」と決意表明。「ぜひ、応援をしていただきたいと思います」と集まった約30人の記者に頭を下げた。

 このやり取りに私は「まだ始まったばかりだし、視聴率うんぬんはまだ早いか」と思う反面、「やはり、リスクはあったか…」とも感じていた。

 思い出されたのは、先月14日に行われた同局の4月番組改編説明会の一場面だった。席上、4月クール最大の目玉として紹介されたのが、「あなたの番です」だった。

 企画・原案はAKB48や坂道グループでおなじみの超大物プロデューサー・秋元康氏(60)。94年放送の「静かなるドン」以来の同局史上25年ぶりの2クール連続、半年間に渡って放送される話題作について、鈴間広枝プロデューサー(P)は「海外ドラマのように来週、どうなっちゃうのかという展開が毎回たたみかけるように起こる。早く見たいと思わせる作品にしたい」と意欲満々に語った。

 中級マンションに引っ越してきた原田演じる菜奈と田中演じる翔太という新婚夫婦が主人公。新生活に胸を膨らませていた2人だったが、住民会出席後に謎の殺人事件が発生。マンション住人による緊迫の“殺人ゲーム”に巻き込まれていくというストーリーを聞いた瞬間、私の頭には2つの疑問が浮かんだ。

 日曜のこの時間、2クール連続で学園もので勝負してきた日テレ。昨年10月クールの「今日から俺は!!」、そして「3年A組」の連続ヒットは、各局がノドから手が出るほど欲しい若者層の支持を得たからこそ。編成会見冒頭での岡部智洋編成部長の「新しい視聴者の開拓、今、見ている方にもっと好きになっていただくことを追求していきたい。日本テレビの特性、13~49歳のコアターゲットをしっかりつかんだ上で次世代の若い視聴者の掘り起こしを狙いたい」と言う気合のコメントも心に響いていたから、思わず聞いてしまった。

 「この時間帯、2作続けての学園ものでティーン層の支持を得た。それなのにマンションを舞台にした夫婦主役のミステリーは『次世代の若い視聴者の掘り起こし』という狙いとズレるのではないか?」―。

 意気込んで聞いた私の方を見つめた岡部部長は「彼女(鈴間P)が一番、プレッシャーを感じていると思う」と苦笑した上で「確かに話題性、中毒性のあるエッジの効いたドラマ作りを目指した枠で、ここ2クールはティーン層に刺さって好評を呼んできました。ただ、学園ものということより、ドラマの内容こそがティーンの心に刺さったと思う。さらに今回はティーンの気持ちをつかんでいらっしゃる秋元さんの企画ということで信頼しています」と冷静に続けた。

 私の疑問はもう一つ。「飽きやすい」のもまた若者の特性。常に人気の水谷豊(66)主演のテレビ朝日系「相棒」にしろ、1話完結形式だからこそ半年間の視聴続行が可能なのではないか。直前に鈴間Pの「半年間(の放送は)長いのでございますけれども、面白い物を作ってやろうぜと、スタッフ、キャスト一丸で燃えております」というコメントも聞いていたから、そのまま質問した。

 「マンションでの交換殺人という一つのストーリーで半年間、視聴者は見続けるのか。途中で脱落する危惧はないのか?」―。

 この時も、こちらをじっと見つめた岡部部長は「編成上のリスクはあります」―。そう率直に答えた上で「カメラ、衣装までスタッフ一丸となって、きちんと作品を作れば、1話完結形式でなくても、しっかりやっていけると『3年A組』の成功が勇気をくれました。今回も制作陣に全幅の信頼を置いております」と続けていた。

 菅田演じる美術教師・柊一颯(ひいらぎ・いぶき)が自ら命を絶った女生徒の死の真相を暴くため、卒業式10日前に生徒29人を人質に取り、“最後の授業”を行うという物語が「3年A組」。設定はシンプルながら、毎回驚きの展開が待つ“ジェットコースター的展開”でティーン層の人気を集め、大ヒットとなった。

 同作の「スタッフ一丸となって、きちんと作品を作れば、やっていける」という“成功例”こそが王者・日テレの制作陣に、さらなる勇気を与えたのは確かだ。

 岡部部長が昨年10月の改編会見で口にしたのが、「まったく持って日テレが盤石とは思っていない。2つの危機感を持っています。一つは他局とのシェア(視聴率)争い。そして、もう一つが地上波として、デジタルメディアという部分での生活者の動画コンテンツへの接点の部分での危機感。他のメディアを含めた(戦いの中)地上波テレビとして、どういうプレゼンス(存在感)を持っていくか。そこに危機感を持っています」という言葉だった。

 その視線の先には、若者がスマホ片手に「いつでも、どこでも」動画配信サービスで好きな番組が視聴できるNetflix(ネットフリックス)やアマゾンプライムなどの新たなライバルがいる。

 民放各局の戦いのステージは、すでに「他局と争って、いかにリアルタイムで番組を見てもらい、視聴率を稼ぐか」から「いかに若者を魅了する動画配信サービスより魅力的な番組を生み出すか」へ移っている。

 現状維持ではなく、魅力的な番組を生み出し続けなければ生き残れない―。だからこそ、岡部部長は「リスク覚悟」という言葉を繰り返し、福田編成局長も社長会見の席で「今回は(前作の成功に捕らわれず)『あなたの番です』で勝負すると決めています」と言い放ったのだ。

 「あなたの番です」を2話続けて視聴した私個人の感想も書いておく。「あなたの番です」には確かに「今日から―」や「3年A組」で若い視聴者を惹きつけた青春の甘酸っぱい香りはない。代わりにあるのは、例えば宮部みゆきさんが高層マンションを舞台にした直木賞受賞作「理由」で描いた現代社会の冷たさや救いの無さだ。

 さらに言えば、「告白」などの湊かなえさん、「殺人鬼フジコの衝動」などの真梨幸子さんらの「イヤミス(読後感が悪く、イヤな気持ちになるミステリー小説をさす)」と共通する人間のいやらしさ、隠し切れない腐臭などを正面から描こうとする作り手側の狙いも感じ取った。

 中流マンションでの生活と、その裏側を淡々と描く画面からにじみ出てくるのは、そんな人間社会のマイナス面をきっちりと捉えようとする挑戦的な姿勢だ。

 そう、「中毒性を持つエッジの効いた」部分こそが「あなたの番です」最大の魅力。“勝ちパターン”を捨て、あえてニッチな部分で勝負する常勝・日テレの挑戦は吉と出るのか、あるいは…。答えは半年後に出る。(記者コラム・中村 健吾)

日本テレビ系ドラマ「あなたの番です」主演の原田知世と田中圭
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